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シルバー・デモクラシー

地政学上の変化で支えられるアベノミクスの実相:『シルバー・デモクラシー』から(12)

シルバー・デモクラシー――戦後世代の覚悟と責任』(寺島実郎氏著・2017/1/20刊)。
筆者とほぼ同世代で前期高齢者のシルバー・デモクラシー世代に属する私が、本書を紹介し
共に考えながら思うところをメモしていくシリーズです。

「第1章 戦後民主主義の総括と新たな地平 -「与えられた民主主義」を超えて」
第1回:2017年3月11日に思う昭和、平成、そして来る次の時代
第2回:与えられた戦後民主主義の理解とその後の懸念、そして今
第3回:70年安保・全共闘世代、団塊の世代の責任とは?
第4回:かち得た民主主義ではなく、与えられた民主主義的国家日本
第5回:思想と現実の統合を構想できなかった全共闘・団塊世代とその後
第6回:団塊の世代責任と体たらく民主党責任は同根?
第7回:課題・問題を抱える民主主義の改善を可能にする仕組み作りの責任
第8回:劣化した代議制民主主義、復活のシナリオ作りを期待したい人たち
第9回:未だ実現されていない普遍的民主主義を追求すべき日本の使命

「第4章 2016年参議院選挙におけるシルバー・デモクラシーの現実
- なぜ高齢者はアベノミクスを支持するのか」
第10回:2016年参院選以降の日本の政治と2017年グローバル社会の政治の季節を重ねる
第11回:対極としての若者世代デモクラシーとポピュリズムを韓国事情で考える

今回は、第4章の第3回(通算第12回)です。

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 政権の政策の行き詰まりと代替案なき野党の悲劇
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選挙戦の最終局面で国民の迷いが交錯したとはいえ、大勢としては国民はアベノミクスの継続を
選んだ。正気の議論をするならば、アベノミクスの論理などとっくに破綻しており、「道半ば」と
か、「この道しかない」などといえるものではない。2020年に名目GDPで600兆円を実現して、
その果実を国民が享受することなど虚構にすぎないと気づきながら、それでも国民の多くが「株高
誘導の景気刺激」という共同幻想に乗っているのである。何故か。それが都合がよいと思う人たち
がいるからである。

 「アベノミクス4年の総括」(下データ)を凝視したい。
 経世済民、経済の根幹である国民生活、そして実体経済はまったく動かない。米国が2008年の
リーマンショック後の緊急避難対策とした異次元金融緩和を見習って「第一の矢」とし、日銀のマ
ネタリーベースをほぼ400兆円の水準にまで肥大化させ、金利も「マイナス金利」などという異常
事態に踏み込んだ。ご本尊の米国が実体経済の堅調を背景に、量的緩和を終え、政策金利の引き上
げ局面を迎えているのに、日本は「出口なき金融緩和」に埋没している。

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【アベノミクス4年の総括】
「異次元金融緩和」    2010年平均   2012年平均   2016年11月平均
◆マネタリーベース     98兆円     121兆円      418兆円
◆貸出残高(銀行計)    396兆円     397兆円      439兆円

「財政出動」       2010年度     2012年度    2016年度
(政府債務:10年度末)(同:12年度末)(同:15年度末)
◆政府予算
(一般会計+特別会計)  464.7兆円     487.5兆円    503.9兆円
◆政府債務        924兆円      992兆円    1,049兆円

「動かぬ実体経済」    2010年平均     2012年平均     2015年平均
◆勤労者世帯可処分所得
(2人以上の世帯)     43.0 万円/月    42.5 万円/月  42.7 万円/月
◆家計消費支出       29.1 万円/月    28.6 万円/月  28.7 万円/月

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 また、財政出動を「第二の矢」とし、消費税引き上げもできぬまま、さらなる財政出動を模索し
続けている。「金利の低い時だから、赤字国債を出しても利払いが少ない」という誘惑に駆られ、
「市場はさらなる景気刺激策を求めている」などという無責任な経済メディアの甘言に乗って、「
ヘリコプターマネー」と称する無利子の日銀からの借金で、財政出動を加速させるべきだとの議論
さえ生まれ始めている。既に1000兆円を超す負債を抱える国だという事実を忘れてはならない。
 自分が生きている時代だけは景気刺激策を、という考え方は、「後代負担」、つまり後の世代に
負担を先送りする自堕落な思考である。

 問題に気づきながら、日本は「慢性金融緩和症候群」に陥り、「リフレ経済学」なる金融政策に
依存して「脱デフレ」を図る呪術経済学に引き込まれている。野党民進党の経済政策もリフレ経済
学を許容する中での「格差批判」程度のもので、アベノミクスを否定できるものではない。「新自
由主義」と「リフレ経済学」の複雑骨折の中を迷走し、産業の現場に軸足を置いた経済政策に踏み
込めていない。

また政権与党が「戦後レジーム」からの脱却に腹を置き、戦後民主主義を否定して国権主義、国
家主義への回帰を図ろうという意思を明らかにしつつある中で、野党は本気でその流れと対峙する
政策軸を見せていない。そのことは民進党の外交安全保障政策の空疎な中身を見れば明らかである。
 たとえば、沖縄・普天間基地移設問題に関して、「辺野古しか移転先はない」とする点において、
民進党は疑似政党でしかなく、翁長健志知事の下、オール沖縄で辺野古を拒否する沖縄において一
切の存在感がないことがそれを象徴している。
 憲法と沖縄は相関して、戦後日本を次のステージでどこに持っていくのかという課題でもあり、
ごまかしのきかない課題なのである。

6

※次回、<進む日本の貧困化と世代間格差 -高齢者がアベノミクスに幻惑される理由> に続きます。

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それにしても文中のデータから読み取れる、実体経済の変化のなさ、というか、アベノミク
スの実相というか化けの皮というべきか、ひどいですね。
このところの株価の上昇も、結局、円安効果、原油安効果と、アベノミクスとは無縁・無関
係に、地政学の影響を受け続けて変動する、金融市場等限定領域経済上のこと。
一般的な消費経済への波及効果は、見えていません。

民進党の体たらくについては、もうだれも真剣に民進党を支持しようとしなくなった現状をみれば
どう批判しても無意味。
自民党に対抗する政党勢力が皆無となった現状は、結局、国民自身の責任でもある。
そう考えるところから始めるしかないのでは・・・。
寂しい話ですが、寺島氏や大前氏は、そうした現状から脱却するための政治マーケティング論を
提起し、実践の矢面に立ってもらえないものかと・・・、ほとんど現実的には無理とは思いつつ
・・・。

唐突に大前(研一)氏を持ちだしたのは、このブログで、同氏著の
「老後不安不況」を吹き飛ばせ! 「失われた25年」の正体と具体的処方箋
を紹介しつつ考える、[『「老後不安不況」を吹き飛ばせ!』<第1章>から]シリーズ
を4月から始めており、アベノミクス批判を行っているからです。
以下で、見て頂けます。
情緒的・願望型アベノミクスとスローガン型安倍政治の実相 (2017/4/1)
的も矢も、まともでなかったアベノミクスは、評価基準も緩和・弛緩 (2017/4/2)
夢と希望に満ちたアベノミクスの現状とこれから。誰も責任を取らない (2017/4/3)

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【『シルバー・デモクラシー――戦後世代の覚悟と責任』構成】
はじめに - 戦後日本のタイムカプセルを開くような考察の試みとして
第1章 戦後民主主義の総括と新たな地平 - 「与えられた民主主義」を超えて
第2章 戦後世代としての原点回帰 - 1980年という時点での自画像
第3章 それからの団塊の世代を見つめて - 21世紀に入っての2つの論稿
第4章 2016年参議院選挙におけるシルバー・デモクラシーの現実
      - なぜ高齢者はアベノミクスを支持するのか
第5章 2016年の米国大統領選挙の深層 - 民主主義は資本主義を制御できるのか
第6章 シルバー・デモクラシーの地平 - 結論はまだ見えない、参加型高齢社会への構想力 おわりに 

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【寺島実郎氏プロフィール】
◆1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、
三井物産入社。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産常務執行役員、
三井物産戦略研究所会長等を経て、現在は(一財)日本総合研究所会長、
多摩大学学長。
◆国交省・社会資本整備審議会計画推進部委員、経産省・
資源エネルギー庁
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員、農水省・「食と農の景勝地」
審査委員会委員長を務める。
◆著書:『脳力のレッスンⅠ~Ⅳ』『中東・エネルギー・地政学』『世界を知る力』他

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