エネルギー問題

6/3 「燃える氷」採掘 期待熱く 海底のメタン 4年ぶり産出試験 天然ガス10年分 埋蔵

2019/5/19
「燃える氷」採掘 期待熱く  海底のメタン 4年ぶり産出試験 天然ガス10年分 埋蔵

日本周辺の海底に眠る天然ガス資源、メタンハイドレートに、国産の次世代エネルギーとして期待が高まっている。愛知・三重県沖で始まった2回目の産出試験では、4年ぶりに掘り出すことに成功した。試験海域の埋蔵量は日本で使う天然ガスの約10年分ともいわれる。政府は2020年代に民間企業が主導するプロジェクトが始められるよう技術開発を進めるが、課題も多い。

愛知・三重県沖の試験でメタンガスが産出し点火=メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム提供
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愛知・三重県沖の試験でメタンガスが産出し点火=メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム提供

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 今月4日、愛知・三重県沖。海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」後部に取り付けられたバーナー部から赤々とした炎が勢いよくあがった。燃えているのは水深約1000メートルの海底をさらに300メートル以上掘り進めた地層のメタンハイドレートから採れたメタンガスだ。

 メタンハイドレートとは天然ガスの主成分であるメタン分子を水分子が囲み、低温・高圧の状態で氷のようになった物質で、「燃える氷」と呼ばれる。温度が上がったり、圧力が下がったりするとメタンガスと水に分解する。深海の海底面下や永久凍土地帯の地下に存在する。

 海底のメタンハイドレートには、2つのタイプがある。今回、採掘試験が進むのは海底から数百メートルの地下にある砂の層に含まれる「砂層型」とよばれるタイプ。水深数百~1000メートルの太平洋側の海底に多い。もうひとつの「表層型」は海底から数十メートルの表面付近に塊の状態で存在する。このタイプは日本海側に多い。

石油探査を応用

 砂層型は、1990年代前半から開発に向けた基礎研究が始まった。天然ガスや石油の探査や採掘技術を応用しやすい利点がある。

 メタンハイドレートには存在しやすい温度と圧力があるため、「地震探査を使うと、たまっている地層が海底面に並行した状態ではっきりと現れる」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の佐伯龍男さん)。試験を行っている愛知・三重県沖の南海トラフの東側にはメタンハイドレートが多く含まれる地層があり、埋蔵量は1兆立方メートル超と国内の天然ガス消費量の約10年分に相当すると見込まれている。

 採掘は、海底に井戸を掘って砂の地層から水をくみあげることで圧力を下げ、メタンハイドレートが分解してできたメタンガスを取り出す。2013年に今回と同じ海域で実施した初回の試験では、世界で初めて海底からガスの産出に成功した。ただ、井戸に砂が流入し、6日間しか生産できなかった。

 今回の試験では、井戸に形状記憶材料を使った装置を置くなどの対策で砂の流入を抑え、連続して生産するのが目標だ。ただ、当初3~4週間程度の生産を計画していた井戸は大量の砂が流入したため12日間で試験を中断、生産量は3.5万立方メートルにとどまった。「砂が流入した原因は特定できていない」(佐伯さん)。もう一つの井戸に切り替えて、5月下旬から6月上旬にかけて試験を行う予定だ。

 米国・アラスカでも17年度から、陸上からの産出試験を行う。コストや天候などの制約がある海上での試験に比べて長期間にわたって実施できる利点があり、得られたノウハウを国内の海底からの生産に生かす。

1000所超分布も

 海底で井戸を1本掘る場合、用船費なども含めると数十億円かかる。1本の井戸からガスが採れる寿命も8年程度と石油などの20年程度に比べて短い。安定的に生産できる技術の開発だけでなく、生産コストの削減や周辺環境への影響の低減なども課題となる。

 一方の表層型はガスが地中深くから「ガスチムニー」と呼ばれる円柱状の裂け目を通って海底に到達してできる。政府は13年度から3年間かけて資源量の把握を進めてきた。

 日本周辺の海域で、表層型の分布が見込まれるガスチムニー構造は1742カ所あることがわかった。調査が最も進み、塊状のメタンハイドレートの存在がすでに確認されていた上越沖の海鷹海脚(うみたかかいきゃく)中西部の同構造では約6億立方メートルのガスが存在するとみられている。

 ただ、ガスチムニー構造はそれぞれ異なり、メタンハイドレートの分布の特徴も不均一なこともわかった。産業技術総合研究所の天満則夫さんは「表層型はようやく構造がわかってきた段階。回収技術の検討はこれからだ」と話す。政府は16年度から回収技術の研究に入った。

 政府が4月に開いた総合海洋政策本部では「メタンハイドレートなどの海洋資源開発の商業化に向けて取り組む」との方針を示した。だが、シェール革命を受けて天然ガスの価格が低位で安定する見通しなどから、メタンハイドレートの商業化の条件は開発当初に比べて厳しくなっている。資源エネルギー庁石油・天然ガス課長の定光裕樹さんは「今回の試験が目標に達していないのは事実。商業化の時期は見直しもありうる」と話している。

(浅沼直樹)

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