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日本遺産(17)対馬市・壱岐市・五島市・新上五島町(長崎県):国境の島 壱岐・対馬・五島 ~古代からの架け橋 ~

文化庁が、地域の有形、無形の文化財をストーリー化してパッケージで認定。
観光振興などで地域の活性化に活かす新しい事業として設定した「日本遺産」

2015年4月24日に初認定された24府県の18件を、1件ずつ紹介してきました。
この年も残すところ3日のみとなり、残る2件の紹介を年内に終了します。

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 古代日本の「西の都」~東アジアとの交流拠点~
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その第17回は、長崎県(対馬市,壱岐市,五島市,新上五島町)
《  国境の島  壱岐・対馬・五島 ~ 古代からの架け橋 ~  》

そのストーリーの概要は・・・

日本本土と大陸の中間に位置することから、長崎県の島は、古代より
これらを結ぶ海上交通の要衝であり、交易・交流の拠点であった。
特に朝鮮との関わりは深く、壱岐は弥生時代、海上交易で王都を築き、
対馬は中世以降,朝鮮との貿易と外交実務を独占し、中継貿易の拠点
や迎賓地として栄えた。
その後、中継地の役割は希薄になったが、古代住居跡や城跡、庭園等
は当時の興隆を物語り、焼酎や麺類等の特産品、民俗行事等にも交流
の痕跡が窺える。
国境の島ならではの融和と衝突を繰り返しながらも、連綿と交流が続
くこれらの島は、国と国民と民の深い絆が感じられる稀有な地域であ
る。
【金石城跡(対馬アリラン祭)】

MAP

【対馬市】
韓国・釜山から49.5km に位置し、南北82km、東西18km の細長い島。
島の89%が山林で、中央部にリアス式海岸の浅茅湾を有する。
島内を国道382 号が縦断し、長崎とは空路、壱岐とは海路、福岡とは
空路と海路、釜山とも海路で結ばれている。

【壱岐市】
九州本土と対馬の中間に位置し、南北17km、東西15km の丘陵性で平
坦な壱岐島の周囲に、小離島が点在する。
壱岐島内を国道382 号が走り、長崎とは空路、対馬・福岡・佐賀とは
海路で結ばれている。

【五島市】
長崎港から西へ約100 km、五島列島の南西部、九州の最西端に位置し、
福江島の周囲に10 の有人島と52 の無人島がある。複雑な海岸線を有す
る福江島内をほぼ一周するように、国道384 号が走り、長崎・福岡とは
空路と海路で結ばれている。

【新上五島町】
五島列島の北部に位置し、中通島・若松島を主な町域とし、その周辺に
5の有人島と60の無人島がある。
中通島と若松島間、中通島と頭ヶ島間は橋が整備され、中通島内の奈良
尾港から有川港までを国道384 号が縦断し、長崎・佐世保・福岡とは海
路で結ばれている。

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詳細なストーリーは・・・

日本は大小6,852 の島から成り、長崎県には日本最多の971 の島がある。
朝鮮半島との間に飛び石のように浮かぶ壱岐と対馬、大陸との間の東シ
ナ海に鎖状に浮かぶ五島列島は、いにしえより、日本と大陸を結ぶ
「海の道」の要衝であり、大陸との交流のインターフェースでもあった。
とりわけ、朝鮮半島と指呼の間にある国境の島、壱岐と対馬は、その
最前線であった。

<邪馬台国へと続く「海の道」に浮かぶ国際交流の都>

日本がまだ「倭」の国とよばれていた時代、中国の使節は、朝鮮半島か
ら対馬、壱岐を経由して、倭の国の女王がいる邪馬台国を目指した。

対馬、壱岐を旅した中国の使節の足跡を辿るとき、『魏志倭人伝』に
記されたとおりの原風景が目の前に広がる。

中国の使節が訪れた「一支国(いきこく)」の「原の辻」は、海上交易

で王都を築いた国際交流都市の先駆けであった。
倭の国のどこよりも早く海外の情報をキャッチできる原の辻には、日本
人だけでなく、朝鮮半島から移り住んだ人もいて、活気に満ちあふれて
いた。

朝鮮半島系土器、ムンクの『叫び』のような人面石など多様な遺物が出

土しているこの地は、まさに弥生時代のデパートであった。
なかでも、きらきらと青色に輝く中国製トンボ玉は、女性や子どもたち
の心を捉えたに違いない。

県内有数の穀倉地帯でもある遺跡の周辺は、古代米が栽培されており、

復元された遺跡と青田や稲穂が広がる眺めは、訪れた人を弥生時代へタ
イムスリップさせてくれる。

stori2
<朝鮮半島との関係に左右される日本最果ての島>

最先端の文化の導入と交流が行われる一方、国境の島は異国へとつなが
る海の道の最終中継地、国防の最前線としての顔を持つ。
壱岐は、大和政権が朝鮮半島へ進出する際の兵站基地としての役割を担
っていた。

壱岐古墳群は、当時としては日本有数の墳丘・石室の規模を誇っており、

ひんやりと涼しい石室の中に身を置くと、古墳に眠った人物の権勢が静
かに伝わってくる。

663 年、白村江の戦い以降、日本と新羅との外交関係が悪化すると、
遣唐使は、壱岐、対馬を経て中国に渡るルートから、五島列島を経て
東シナ海を渡る危険なルートをとらざるをえなくなった。
当時の船の構造、航海技術では、ほとんど無事には帰ってこられなかっ
た時代、万葉の都人にとって五島は、日本の最果ての地であり、亡くな
った人に会える「みみらくのしま」と称された。

千年以上も昔と変わらぬ東シナ海の大海原を目の前にすると、この地を
最後に異国へと旅だった人々と送り出す家族の覚悟や想い、空海の
「辞本涯」(本涯=日本の果て)の言葉が、時代を超えてこだまする。

一方、壱岐と対馬でも、白村江の戦い後、国防のために防人と烽火(と

ぶひ)が置かれ、対馬には亡命百済人の技術による朝鮮式の山城「金田
城(かねだじょう)」も築かれた。
複雑に入り込んだ海岸に囲まれた浅芽(あそう)湾と天然の絶壁を利用
して築かれた金田城跡に立ち、国境の海を見下ろすと、はるか東国から
送られてきた防人たちの望郷の念に胸がつまる。

 

stori3
<国交断絶から復活へ ~朝鮮通信使がつないだ日朝交流の架け橋~>

室町時代の対馬は、島主・宗氏を中心に日本と朝鮮との間で外交の実務
と貿易を独占してきたが、豊臣秀吉の朝鮮出兵により一変し、国交は断
絶した。

長年、朝鮮との貿易に島の経済を頼ってきた対馬にとって、朝鮮との国

交回復、貿易復活は死活問題であった。
対馬藩は、朝鮮との国交回復交渉を行い、その間、日朝双方の国書を偽
造するなど危ない橋を渡りながら、ようやく江戸時代最初の朝鮮通信使
来日に成功する。

その後、朝鮮貿易の復活も果たし、対馬藩の繁栄ぶりは万松院に古色蒼

然と並ぶ歴代対馬藩主墓所の中でも、ひときわ目を引く当時の藩主の墓
所の巨大さからも偲ばれる。

以来、約200 年に渡り、合計12 回の日朝修好の象徴である朝鮮通信使の

来日が続いた。
朝鮮通信使を丁重に出迎えるため、立派な庭園を持つ金石城を整備した
対馬藩。
異国の華やかな衣装をまとった行列は、遠方からも見に来る人も多く、
沿道に並ぶ人々を魅了した。
隣国同士が200 年以上の長きに渡り、平和的関係を築いたことは世界史
的にみても稀有なことである。

時に反目し合うこともあったが、日朝関係の根底には「誠信の交わり

があった。
享保の通信使の江戸往復道中、対馬藩の儒者・雨森芳洲と通信使の製述
官・申維翰は互いの主張を譲らず衝突してきたが、旅の終わりには涙を
流して別れを惜しんだ。
「互いに欺かず、争わず、真実をもって交わる」の精神は、今日の国際
交流にも通じる。

時代とともに、壱岐と対馬の中継地としての役割は希薄になっていった
が、島の特産品や民俗行事には、交流の痕跡が残っている。
壱岐の特産品「壱岐焼酎」は、大陸から伝わったとされる蒸留法を取り
入れ、今では世界に誇れる産地ブランドとなっており、対馬の「対州そば
は大陸から伝わったそばの原種に近い。

また、稲作伝来の地といわれている対馬の豆酘(つつ)地区は、宮中祭祀

「新嘗祭」にも奉納したことがある古代米の一種、赤米を神田で栽培し、
その赤米を御神体とする神事が行われており、亀の甲を焼いて吉凶をみる
古代の占い「亀卜(きぼく)」もこの地区で受け継がれている。

民間では、朝鮮通信使行列の再現をはじめ、音楽祭、国境マラソンなど
様々な日韓交流イベントが行われている。

対馬高校ではハングルや韓国文化を学ぶコースが設置され、壱岐高校にお
いても、原の辻遺跡を学び、中国語・中国文化を学ぶコースがあり、未来
の日本を担う高校生が国際交流の基礎を習得している。
壱岐と対馬は、国境の島であるために融和と衝突の最前線の歴史を刻んで
きたが、今もなお連綿と交流が続くこの島は、国と国、民と民の深い絆が
感じられる稀有な地域である。

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【ストーリーの構成文化財一覧表】とその画像

対馬構成
対馬画
対馬画2

壱岐構成

壱岐画
壱岐画2

五島構成

五島画

五島画2

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偶然か、ちょうど昨日、慰安婦問題が日韓両政府間で決着合意したことが
報じられました。
対馬・壱岐・五島の皆さんも、ほっとしているのではと思います。

今回紹介した日本遺産としての、日朝関係をめぐ島々の土地と歴史、文化
は、その原点というべきものであり、決して覆すことはできないものです。

年の瀬も押し迫る時期にもたらされたこの合意が、すべてのわだかまりを
払しょくすることは不可能でしょうが、新しい年、新しい関係創りに踏み
出すことができることを多としたいと思います。

今回のストーリーを読みながら、ふと数年前に、日本経済新聞の小説に
辻原登氏による『韃靼の馬』が連載されたことを思い起こしました。
文中にある対馬藩の雨森芳洲も登場する、対馬と朝鮮とを舞台にしたその
骨太の筆致とストーリーを、毎日読むことを楽しみにしていたものです。

時間と健康が許せば、一度訪れたい島々です。


韃靼の馬 (上) (集英社文庫)』『韃靼の馬 (下) (集英社文庫)

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日本遺産ロゴ
日本遺産認定発表後、順次1件ずつブログ化。
あまり知られていない文化の側面もこの日本遺産シリーズで知ることができます。
投稿済みのものを以下にリスト化しました。
ご関心をお持ち頂いた遺産をチェックしてみてください。

⇒ 日本遺産、初認定18件一覧:文化庁認定のストーリー型文化財、2020年迄に100件へ
⇒ 日本遺産(1) 水戸市・足利市・備前市・日田市:近世日本の教育遺産群-学ぶ心・礼節の本源-
⇒ 日本遺産(2) 群馬 桐生市・甘楽町・中之条町・片品村:「かかあ天下 ー ぐんまの絹物語 ー」が富岡製糸場と紡ぐストーリー
⇒ 日本遺産(3) 高岡市(富山県):「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡-人、技、心-」
⇒ 日本遺産(4)七尾市・輪島市・珠洲市、志賀町・穴水町・能登町(石川県):灯り舞う半島 能登 ー 熱狂のキリコ祭り ー
⇒ 日本遺産(5)小浜市、若狭町(福井):海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国若狭と鯖
⇒ 日本遺産(6)岐阜市:「信長公のおもてなし」が息づく戦国城下町・岐阜
⇒ 日本遺産(7)明和町(三重県):祈る皇女斎王のみやこ斎宮
⇒ 日本遺産(8)大津・彦根・近江八幡・高島・東近江・米原市(滋賀県):琵琶湖とその水辺景観ー祈りと暮らしの水遺産
⇒ 日本遺産(9)宇治・城陽・八幡・京田辺・木津川市、宇治田原町(京都府):日本茶800 年の歴史散歩
⇒ 日本遺産(10)篠山市(兵庫県):丹波篠山デカンショ節-民謡に乗せて歌い継ぐふるさとの記憶
⇒ 日本遺産(11)明日香村・橿原市・高取町(奈良県):日本国創成のとき―飛鳥を翔(かけ)た女性たち―
⇒ 日本遺産(12)三朝町(鳥取県):六根清浄と六感治癒の地-日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉-
⇒ 日本遺産(13)津和野町(島根県):津和野今昔~百景図を歩く~ (前編)
⇒    同   後編:百景画像残り
⇒ 日本遺産(14)尾道市(広島県):尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市
⇒ 日本遺産(15)愛媛県・高知県・徳島県・香川県(57 市町村):「四国遍路」~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~
⇒ 日本遺産(16)太宰府市(福岡県):古代日本の「西の都」~東アジアとの交流拠点~

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