農家田んぼ

地方

「地域づくり」の内発性、総合性・多様性、革新性:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(4)

 

人口減少問題を『地方消滅』と結びつけてセンセーショナルに喧伝した
増田レポート(群)への反論書として
農山村は消滅しない (岩波新書)』(2014/12/19刊・地方消滅著)。
が好著です。

これからの日本の農業と農業に取り組む世代への期待とエールを込めて、
この書をお借りしながら考えています。
これまでは
第Ⅰ章 農山村の実態 - 空洞化と消滅性】
1 「進む農山村の空洞化」 から
第1回:農山村3つの空洞化①「人の空洞化」:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(1)
第2回:農山村3つの空洞化②「土地の空洞化」:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(2)
第3回:農山村3つの空洞化③「むらの空洞化」と空洞化の広がり:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(3)

当初、上記の3回を受けて、第Ⅰ章の2「強靭な農山村集落」同3「農山村の展望」
と順に見ていくつもりでしたが、データ(表)を用いた記述が軸でしたので割愛し
分かりやすい、第Ⅱ章の実例レポートに入ることにしました。

今回は、第4回です。
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第Ⅱ章 地域づくりの歴史と実践】
1 「地域活性化」から「地域づくり」へ
---------------------------
<言葉で見る地域>(省略)

<リゾート開発と「地域活性化」>
「地域活性化」が多用される1980年代後半から90年代前半は、端的に言え
ばバブル経済の時代である、つまり、「地域活性化」は、ウォーターフロン
ト開発、リゾート開発、そして民間活力導入という、当時を象徴する地域開
発の目標として登場した言葉である。
(略)

 「地域活性化」という言葉が盛んに使われたこの時代には、
①地域振興が経済開発に著しく偏って認識され
②そのためにはリゾート開発という外部資本導入・誘致こそが近道だと意識さ
れていた。それは、典型的な外来型経済開発の動きであった。「地域活性化」
にはこうしたニュアンスがどこかに紛れ込んでいる。
(略)

 そして、その後のバブル経済の崩壊(1991年)に伴い、これらのリゾート構
想の多くは民間企業の撤退や参入中止により頓挫した。地域の経済活性化が実
現できなかったばかりでなく、リゾート法により国立公園や森林、農地におけ
るっち利用転換の規制緩和が図られたため、開発予定地が未利用地として荒廃
化し、それが国土の大きな爪痕として、今も残されている。

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<「地域づくり」の意味>
 1990年台初頭までのリゾート開発を中心とする「地域活性化」の反省の中で
論じられたのが、「地域づくり」である。
これは「まちづくり」「むらづくり」として、多様に使われている言葉であり
すでに80年代初頭から徐々に使用されていた。しかし、独自の意味で語られは
じめたのは、特にバブル崩壊後の90年代前半以降である。
 ここには、リゾート開発主導の「地域活性化」との対比で、少なくとも次の
三つの含意がある。

(1)「内発性」:
 大規模リゾート開発は、「拠点開発方式」と同様に二重の意味で外来型の開発
であった。ひとつは、外部資本による開発であった点。ふたつは、そうであるが
ゆえに、地域住民の意志とは無縁の開発であった点。つまり、カネも意志も外部
から注入されたものであり、地域の住民は土地や労働力の提供者、場合によって
は開発の陳情者にしか過ぎないものであった。
そうではなく、自らの意志で地域住民が立ち上がるというプロセスを持つ取り組
こそ「地域づくり」であることが、この言葉では強調されている。

(2)「総合性・多様性」:
 リゾートブームの下では、都市で発生したバブル経済がそのまま持ち込まれ、
経済的利得の獲得に著しく傾斜した地域活性化が意識された。また、どの地域で
も同じような開発計画がならぶという「金太郎アメ」型の地域振興もこの時期の
特徴であった。そのような状況からの脱却、つまり単品型・画一的な地域活性
から、福祉や環境を含めた多様性に富んだ地域づくりへの転換が求められた。

地域づくりでは、基盤となる地域資源や地域を構成する人のあり方に応じて、
地域の数だけ多様な発展パターンがあることが強調されている。それは、「モデ
ルなき地域づくり」と表現されることもある。

(3)「革新性」:
すべての地域振興は、地域における何らかの困難性が前提となっている。
それを地域の内発的エネルギーにより克服していくとなれば、必然的に従来とは
異なる新たな仕組みを内部につくり出すことが求められる。一部の農山村では過
去の賑やかな時代の仕組みに寄りかかり、それが機能しないことを嘆くことがし
ばしば見られた。しかし人口はやはり減少する。そのことを前提とした対応が
欠かせない。そこで求められるのは、人口がより少ない状況を想定し、地域運営
の仕組みを地域自らが再編し、新しいシステムを創造する「革新性」である。
 その意味での「地域づくり」は「地域の新しい仕組みづくり」である。

以上のように、1990年代から登場する「地域づくり」には、「内発性」「総合
性・多様性」「革新性」という要素が、多かれ少なかれ含まれている。
それは、地域づくりの原則としての「内発性」、その中身の「総合性・多様性」、
そしてその仕組みとしての「革新性」と位置づけることができよう。

※次回 <2「地域づくり」の体系化への挑戦> に続きます。

森林2
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ここまでが、実質的にはこの書の序章といえるのでは、と思います。
よく「失われた10年」と言われますが、地域活性化においても、このバブル崩壊
前後が当てはまるかと思われます。

しかし、リゾート開発という呪文から解き放たれているとはいえ、地方再生・地方
創世、地域振興という言葉が毎日のように放たれている現在においてさえ、内発性、
総合性・多様性、そして革新性を伴っているかと問われれば、その応えはどうでし
ょうか。

地域振興券しかり、ふるさと納税しかり、やはり発想・行動の本質は、横並びで
3つの要素を見出すのは情けないくらいのレベルです。

ですが、次回以降、この書から引用して紹介する地域づくりの事例報告は、3つの
要素を統合しているがゆえに、持続性と堅実な成長性を仕組みとして内包している
と感じられる普遍性を持つものです。

そして、それを動かしているのは、まぎれもなく「人」と「地域社会」なのです。
どこで、なんで、そこに差が、違いが生じるのか・・・。
その要素・要因をしっかり確認して行くこともこのシリーズの目的のひとつです。

 

 

 

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