さんぽくなりわい里

地方

1989年来の「地域づくり」、新潟県さんぽく生業(なりわい)の里:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(5)

 

人口減少問題を『地方消滅』と結びつけてセンセーショナルに喧伝した
増田レポート(群)への反論書でもある
農山村は消滅しない (岩波新書)』(2014/12/19刊・地方消滅著)。
が好著です。

これからの日本の農業と農業に取り組む世代への期待とエールを込めて、
この書をお借りしながら考えています。
これまでは
第Ⅰ章 農山村の実態 - 空洞化と消滅性】
1 「進む農山村の空洞化」 から
第1回:農山村3つの空洞化①「人の空洞化」:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(1)
第2回:農山村3つの空洞化②「土地の空洞化」:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(2)
第3回:農山村3つの空洞化③「むらの空洞化」と空洞化の広がり:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(3)

第Ⅱ章 地域づくりの歴史と実践】
1 「地域活性化」から「地域づくり」へ
第4回:「地域づくり」の内発性、総合性・多様性、革新性:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(4)

今回は、その続きの第5回です。
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第Ⅱ章 地域づくりの歴史と実践】
2 「地域づくり」の体系化への挑戦
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<リゾート開発に抗する地域づくり -- 新潟県旧山北町>

 新潟県旧山北町(現村上市)は、県北の山形県境に位置し、農業・林業・
水産
業を主要産業とする。
 同町は、バブル経済、リゾートブームただ中の1989年に観光開発基本計画
を作成。

 住民の一部、特に町議会議員には、町内に話が進み始めた大規模ゴルフ場
開発事
業こそが地域の未来を切り拓く「観光」だと期待する者もいた。
 しかし、計画策定にかかわった関係者は、「観光は、文字通り「地域の光
を観る」
こと。今この町の未来に必要なことは、たとえ遠回りであっても自
らが住む集落の
日常生活に光をあて、集落の価値や資源を再発見し「誇り」
と「自信」を持ち、住
民がいきいきとすることではないか」という問題意識
から、集落単位の地域づくり
を柱に据えた観光開発基本計画を作成し、粘り
強い説明により、議会の承認を得た。

 その計画の5つの柱は、以下。

① 48集落の日常生活を基本資源とする地域
② 日常生活を分かちあえる開かれた地域
③ どの集落も一人ひとりが主役になれる地域
④ 暮らしを支えてきた自然と楽しくつきあえる地域
⑤ 郷土を培った知恵や伝統が息づいている地域

 これは観光開発計画というよりは、まずは集落から内発的に、多様な新しい
仕組み
をつくりあげていくことを目標とした「地域づくり」計画そのものであ
る。

(略)

当時、計画づくりに直接かかわった町役場の担当者(現在退職し、集落活動
のリー
ダー)の回想。
 「計画を具現化するため、町内48の集落すべてに説明に行った。中には「本
来、
行政が行うべきこと。何で自分たちがやらなければならないのか」という
戸惑いや、
不満の声も聞かれた。しかし、他方で「行政に頼るばかりではなく、
自分たちの地域
のことだから自分たちで何かをしよう」といった前向きな言葉も
聞かれ、大きな励み
に。約1ヶ月をかけた説明会には、当時の人口が1万人ほど
であった中、1割に相当
する合計1000人もの住民が参加。華々しいリゾート開
発より、住民はこのような地道
な計画や活動にこそ関心があると改めて確信した」

 町役場は、「日常生活を基本資源」とするために、集落単位での「資源調査」
(ワークショップ)やその利用のための計画づくりや実践の支援を「魅力ある
集落
づくり事業」として施策化し、それを地道に促進。
 このことにより、いくつかの集落では、伝統的な織物であった「しな織り
体験、
焼き畑による赤かぶ摘み体験、豪雪集落でのスノーモービル体験などの
メニューが
生まれはじめた。

さんぽく赤かぶ
その上で、町は

①体験交流の主体の組織化(さんぽく体験交流企業組合の設立:1998年)
②体験メニューのリストアップと総合メニュー化(総称:笹川流れ波物語り。同年)
③体験交流をコーディネートする拠点の整備(廃校になった中学校校舎を
 交流・宿泊施設として整備:2001年)
と、次々にサポート策を実践。

全般的に高齢化が進む中でも、事業スタートから四半世紀の間、決して派手
では
ないが、「何かに取り組もう」という元気な集落が順次生まれている。
 その後、同町は2008年に1市2町2村が合併して村上市となったが、旧山北町
地域づくりのこの基本路線は新市に受け継がれ、市全域の地域振興のモデル
なっている。

※次回、鳥取県智頭町の「ゼロ分のイチ村おこし運動」に続きます。

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村上市のHPで調べてみましたら、合併により村上市の一部となった旧山北町
の上記の資源は
「灰の文化がいきづく里 さんぽく生業(なりわい)の里
として引き継がれています。

猫も杓子もリゾート開発ブームの時期にあって、<観光開発基本計画>という
名のもとに、現在の地域づくりを先取りする形で、時間を掛けて計画し、活動
を始め、今日に至っていること、素晴らしいですね。

合併して人口6万人都市のひとつの地域となった「さんぽく地区」ですが
合併したことによるメリット、デメリットは、どうだったのでしょうか?

広域化したことで、知名度が上がり効果が上がったか、それとも近隣地域との
競争に巻き込まれ、分散化したため思った成果が上がらなくなってしまったか。

合併時期がこの活動開始後20年近く経過した後のことでもあり、何かしら
新しい段階に入って行く必要があったのではとも推測できます。

イメージ的には、こんな感じで捉えることができるような気がしましたので。
◆第1期:1989年~1997年
◆第2期:1998年~2007年
◆第3期:2008年~

機会があれば、フォローしてみたいと思っています。

さんぽく笹川
※笹川流れ

 

 

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