智頭町

地方

鳥取県智頭町「ゼロ分のイチ村おこし運動」から学ぶ地域づくり(1):『農山村は消滅しない』から考える地方創世(6)

 

人口減少問題を『地方消滅』と結びつけてセンセーショナルに喧伝した
増田レポート(群)への反論書でもある
農山村は消滅しない (岩波新書)』(2014/12/19刊・地方消滅著)。
が好著です。

これからの日本の農業と農業に取り組む世代への期待とエールを込めて、
この書をお借りし「『農山村は消滅しない』から考える地方創世」と題して
考えてきています。
これまでは
第Ⅰ章 農山村の実態 - 空洞化と消滅性】
1 「進む農山村の空洞化」 から
第1回:農山村3つの空洞化①「人の空洞化」
第2回:農山村3つの空洞化②「土地の空洞化」
第3回:農山村3つの空洞化③「むらの空洞化」と空洞化の広がり

第Ⅱ章 地域づくりの歴史と実践】
1 「地域活性化」から「地域づくり」へ
第4回:「地域づくり」の内発性、総合性・多様性、革新性:
2 「地域づくり」の体系化への挑戦
第5回: 1989年来の「地域づくり」、新潟県さんぽく生業(なりわい)の里

今回は、その続きの第6回です。
---------------------------
第Ⅱ章 地域づくりの歴史と実践】
 2 「地域づくり」の体系化への挑戦
---------------------------
鳥取県智頭町「ゼロ分のイチ村おこし運動」>(1)

地域づくりの体系化を意識した事例として ----

智頭町は鳥取県の南東端に位置し、岡山県境に接する山村で「智頭林業地域
と言われ、国内を代表する杉材の生産地。
しかし、高度経済成長と林業不況の中で、他の農山村漁村と同様に激しい
人口流出が続いた。
1960年に約1万4000人だった人口は、2010年には約7700人にまで減少。

従来からこの町でさまざまな取り組みがあったが、地域づくり運動として
本格化したのは1990年代中頃。1996年に、住民で組織する「智頭町活性化
プロジェクト集団」(約30名)と行政職員が、約2年間にわたり積み重ねた
議論を集約し、「日本ゼロ分のイチ村おこし運動」の企画書を作成。
これは、わが国の地域づくりにとって、記念碑的文書といえる。

智頭町2
とし、全文を紹介しています。
それに倣って、以下ここでも転記し紹介します。

-----------------------------
 智頭町「日本ゼロ分のイチ村おこし運動」企画書(1996年)
-----------------------------
1 趣旨

智頭町の高齢化率は29.1%と加速度的に高齢化が進展している。
また、広域合併という新しい課題が提起されているところである。

 智頭町を地域経営の視点で鳥瞰的に捉えてみると、智頭急行の開業、
鳥姫線の高規格化など、外との交通アクセスは鳥取県の他の町村と比較
してみても、条件は整備されつつある。しかし、(そのことは)反面、
容易に地域外の力に影響されるということでもある。
何ら魅力を持たない町は単に通りすがりの町となり、ずるずると外の
力に引き寄せられ、求心力を失ってしまう。

 その町がマチとしての機能を持ち、誇り高い自治を確立することに
よって、21世紀において、「智頭町」を確固たる位置づけとなすこと
もできよう。
そのための小さな大戦略は集落の自治を高めることにある。
智頭町「日本1/0村おこし運動」の展開によって、地域を丸ごと再評
価し、自らの一歩で外との交流や絆の再構築を図り、心豊かで誇り高い
智頭町を創造できるものと考える。

1/0村おこしとしたのは、日本一への挑戦は際限のない競争の論理
であるが、0から1、つまり、無から有への一歩のプロセスこそ、建国
の村おこしの精神であり、この地に共に住み、共に生き、人生を共に育
んでいく価値を問う運動である。

2 この運動の柱

(1)村の誇り(宝)の創造 ~ 村の特色を一つだけ掘り起こし誇りある村づくりを行う。
(2)住民自治 ~ 自分たちが主役になって、自らの一歩によって村をおこす。
(3)計画の作成 ~ ある程度長期的な視点で村の行く末を考え、村の未来計画を立てる。
そして、その村なりの特色ある事業を計画し、実行する。

(4)国内外交流  ~ 村の誇りをつくるには、意図的に外の社会との交流を行う。
(5)地域経営  ~ 生活や地域文化の再評価を行い、村に付加価値を付ける。

3 各振興協議会へのメリットの提供

(1)智頭町の認定法人  ~ 智頭町役場と村おこし事業の窓口を務める。
(2)活動経費の支援  ~ 活動の2年間は地区100万円、集落50万円のソフト事業費
(運営費)を助成する。
(3)リーダーの民主的選出  ~ 住民の総意によって3年間の任期でリーダーを選出する。
(4) 村おこしのための運営団体の組成 ~ 各種団体等を全て包括した組織とする。
(5) アドバイザーの派遣 ~ 村おこしのためのアドバイザーと町職員を派遣する。 

(6) 各種情報の提供 ~ 智頭町役場は各振興協議会との交流やまちづくりのための情報
を提供する。

------------------------------

<趣旨>での思いが伝わってきますね。

5つの運動の柱の各項目も、普遍的な内容です。

「住民自治」により、「村の特色を一つだけ掘り起こし」「長期的な視点で事業計画」
を立案し、「国内外交流」を通じて、「地域経営」に取り組む。

こう繋げると、明確な<地域づくり事業理念>として読むことができます。

もうひとつ着目すべきは、<各振興協議会へのメリットの提供>にある
「運営団体の組成は、各種団体等を全て包括した組織とする」としている点です。
得てして総花的な内容になった場合の弱点は、個々バラバラの活動に終始し、
まとめ上げる、全体が機能する、という統合機能、マネジメント機能が働かない
ことにあります。
そのリスクをなくすための統合組織体制を確立する。
他の4項目は、そのマネジメントをより効果的に実践するための要素・システム
という機能を持ちます。

さて、この素晴らしい企画・計画に基づき、どのように運動が進められて行ったか・・・。

智頭町のHPはこちらから
智頭町のFacebookページはこちらから

※次回に続きます。

 

 

ピックアップ記事

  1. 電力小売り自由化と送発電分離は、電力料金引き下げを意味しない?:日経<電力自由化…
  2. 海上輸送による水素供給体制強化へ、川重、英蘭シェルと提携:水素社会インフラ強化へ…
  3. スマート農業の事例続々: ルートレック、センスプラウト、デジタルガレージのIT農…
  4. 米テスラ、大型商用車等全分野でEV生産。ライドシェアも
  5. 日本への留学生の就職者数、15年最多1.5万人は、多い少ない?:外国人就労者を着…

関連記事

  1. エコ1

    エネルギー

    大ガス・生駒市が再生エネで、地域新電力会社構想:エネルギーの地産地消が目指すもの

    再生可能エネルギーで、エネルギーの地産地消を目指すべきというのがわ…

  2. CCR4

    地方

    高齢者の地方移住を地方自治体、推進協議会等が日本版CCRC構想で推進

    「日本版CCRC構想」中間報告2015/8/25付日本経済新聞で…

  3. ローソン2
  4. 地熱発電イメージ

    エネルギー

    地道に開発する小規模地熱発電:環境影響評価は客観的に、再生可能エネルギー比向上は意欲的に

    今月の<エネルギー・環境>問題シリーズは、再生可能エネルギーシリーズ…

  5. 社会問題・インフラ

    虎ノ門ヒルズ オープン! 森ビルが東京・国際新都心構想を加速!

    虎ノ門ヒルズ オープン! 森ビルが国際新都心構想実現へ!6月11日に…

  6. 農家1

    地方

    70歳が農業就業者の定年?2017年大量離農予測の根拠:『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』…

    『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』(窪田新之助氏著・015/…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

覚えるパスワードを1つに!

worldbanner2
2018年4月
« 11月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で
ロゴマルシェ - LogoMarche
  1. 2-6

    スポーツ

    錦織圭 速報:ATPツアー・マドリッドオープン、2回戦2日間がかりのフルセット2…
  2. 鍋8-2

    農林水産業

    大規模稲作農家の離農という矛盾と米価との関係:『GDP4%の日本農業は自動車産業…
  3. 1

    エネルギー

    「風力よ、お前もか」。電力行政の矛盾と混迷の長期化で増す、国民と新規事業者の負担…
  4. 6

    地方

    新世代型農業への転換期へ:『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』から(16…
  5. FCV-1

    再生可能エネルギー

    トヨタ、燃料電池車(FCV)で水素エネルギー利用促進で「水素カウンシル」設立、共…
PAGE TOP