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地方・観光

地域づくりの暮らしのものさしつくりは地元学と都市農村交流で:『農山村は消滅しない』から考える地方創世(9)

 

これからの日本の農業と農業に取り組む世代への期待とエールを込めて、
農山村は消滅しない (岩波新書)』(2014/12/19刊・小田切徳美著)をお借りし
「『農山村は消滅しない』から考える地方創世」と題して考えてきています。

これまでは
第Ⅰ章 農山村の実態 - 空洞化と消滅性】
1 「進む農山村の空洞化」 から
第1回:農山村3つの空洞化①「人の空洞化」
第2回:農山村3つの空洞化②「土地の空洞化」
第3回:農山村3つの空洞化③「むらの空洞化」と空洞化の広がり

第Ⅱ章 地域づくりの歴史と実践】
1 「地域活性化」から「地域づくり」へ
第4回:「地域づくり」の内発性、総合性・多様性、革新性:
2 「地域づくり」の体系化への挑戦
第5回: 1989年来の「地域づくり」、新潟県さんぽく生業(なりわい)の里
第6回:鳥取県智頭町「ゼロ分のイチ村おこし運動」から学ぶ地域づくり(1)
第7回:智頭町「ゼロ分のイチ村おこし運動」から学ぶ地域づくり(2)百人委員会、疎開保険へ
3 地域づくりのフレーワーク
第8回:地域づくりに必要な要素・項目を抑えておく!

今回第9回は、<4 地域づくりの三つの柱>の第1回です。

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第Ⅱ章 地域づくりの歴史と実践】
 4 地域づくりの三つの柱 -1
---------------------------
<暮らしのものさしづくり - 第一の柱

 しばしば、地域づくりには「人」が重要だと言われる。その延長線上に
「地域にリーダーがいるかいないかがポイントだ」だという考え方もある。
 確かに、かつては、地域づくりにおいて、リーダーの存在が決定的な要
素であり、そのようなカリスマ型リーダーが注目された。
 しかし、最近では、突出した力を持つリーダーに依存する地域づくりは、
世代交代がうまくできず、持続性の点で難点があると言われている。その
ため、複数の者がかつてのリーダーの役を分担する姿が一般的なケースと
なりはじめている。「カリスマ型リーダーモデル」から、多くの人が担え
る「リーダー群モデル」への転換である。そのため、「人」の問題は、実
は地域住民全体の問題であると考えられる。

 それでは、地域住民レベルの「人」に必要なものは何か・それは、地域
をつくるのは自らの問題だという当事者意識であり、これを最近では「気
づき」と言うことが多い。
(略)
そこに暮らす住民の中には「誇りの空洞化」と言わざるをえないような、
その地域に住み続ける意味や価値を見失い、地域の将来に関して諦めにも
似た気持ちが、住民を覆っているケースがあるからである。住民が単に当
事者意識を持つだけではなく、さらに「誇りの再建」へ向けた意識を持つ
必要がある。
(略)
そのため、自らの暮らしをめぐる独自の価値観の再構築が、農山村を含
む地域づくりの取り組みの中では特に必要とされている。
 例えば、地域の歴史・文化、自然をはじめとして、より具体的には郷土
料理、景観、住民の人情や絆に対する価値観である。これが、「暮らしの
ものさし」であり、そのものさしが、一つひとつ積み上げられる必要があ
る。

このような取り組みを行うことは、社会教育の地域拠点である公民館の
活動でひとつの目的とされてきた。公民館活動が地域づくりの母体となる
ケースが少なくないのはこのためだろう。その点で「暮らしのものさしづ
くり」では公民館活動の再評価が重要である。

加えて、新たな以下の2つの手法が生まれている。

(1)地元学(地域づくりワークショップ)
言うまでもなく「暮らしのものさし」は地域固有のもの。故に、それが
地域の誇りや自慢につながる。従い、地域の足下から、固有の資源を具体
的に掘り起こす活動が重要となる。
地域づくりワークショップ」と総称されるその活動は、「集落(環境)
点検」「宝探し運動」「あるもの探し」「地区力点検」等のユニークなネ
ーミングにより多様な手法が開発されている。
それぞれ個性的な手法だが、根幹の部分は共通しており、標準的には
以下の手順で進められることが多い。

  ① 地域点検とその地図による「見える化」
⇒ ② 課題の整理と共有化
⇒ ③ 地域の将来像の確立
⇒ ④ 地域内での中間報告会の開催
⇒ ⑤ 目標・プランの決定
⇒ ⑥ 活動のスケジュールの決定
⇒ ⑦ 実践

その過程で、地域の多くの人々は、地域の問題は「よそごと」ではなく、
自分たちの問題だという「自分ごと」化を図ることができ、また小さな
成功が後の取り組みの基礎となるという好循環がスタートする。
(略)
 最近では吉本哲郎氏(元水俣市職員)と結城登美雄氏(民俗・農村研究
家)がそれぞれ「地元学」という名前でより積極的に位置づけ、体系化す
ることで、さらに大きな広がりを見せている。

結城氏は言う。
「金以外の、居住環境、文化、コミュニティ、自然風土、生き方と哲学の
存在と魅力をもっと子どもたちに伝えよ。自分たちが拠りどころとしてき
た、それらの価値をもっと掘り下げ再評価し、次の世代のための仕事の場
と生きる場所を準備(する)」・
 これが「地元学」であり、「暮らしのものさし」の本質である。

(2)都市農村交流
他方「暮らしのものさし」をつくり出すためには、都市農村交流の重要
な手段となる。
 交流活動は意識的に取り組めば、地元の人々が地域の価値を、都市住民
の目を通じて見つめ直す効果を持っている。都市住民が「鏡」となり、農
山村の「宝」を映し出すことから、それを、「都市農村交流の鏡効果」と
呼んでみたい。
 「おばあちゃん、この料理はおいしいね」「ほんとうに美しく、のどか
な風景ですね」という来訪者の素朴な言葉が、地域づくりのエネルギーや
契機となっている例は数多い。とりわけ、予断と偏見がない子どもたちの
「鏡」こそが、ピカピカの反射力が強いこともあり、武蔵野市で取りくま
れている「セカンドスクール」と呼ばれる小中学生の農山村体験交流の訪
問先でも、そのような事例が見られる。

 しかしながら、都市農村交流は、しばしば交流疲れ現象」を招くこと
がある。交流当初は取り組みに熱心に参加できるのであるが、2~3年後
には、「都市の者に頭を下げてサービスをして、地域に何が残ったのだろ
う」という疑問とともに、参加者の疲れが増す現象を言う。
それにより、最終的には活動が崩壊した例も少なくない。そこで現在は、
地域住民が「交流の鏡効果」を意識し、交流疲れを招く「頭を下げる交流」
から、「地域を誇る交流」への転換が進められている。
 この過程でも「暮らしのものさし」はつくられているのである。

※<第二の柱:暮らしの仕組みつくり>に続きます。

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「地元学」という用語には普遍性がありますね。
素晴らしい言葉、精神と思います。

「交流疲れ」も、さもありなん、という感じです。
あまり、誇りとか自慢、ということにこだわり過ぎると、そういう問題
が起きてくるのではと思います。

他人の目を気にし過ぎる。
気にし過ぎるがゆえに、媚びへつらうようになる、迎合するようになって
しまう・・・。
期待した反応がもしなければ落胆する・・・。
時には怒りさえも・・・。

自然なコミュニケーションを取っているつもりでも、変に気遣いしたり、
本音とは裏腹の言葉を用いたりする・・・。
コミュニケーションは、結構神経を遣うものでもあります。

「自然体」。
できそうでなかなかできないですが、地域づくりの活動は、できるだけ
そうありたいと思います。
分かってくれる人に分かってもらえれば・・・。
情報発信の方法、相互コミュニケーションの方法のバリエーションを増や
すことも都市農村交流を多様に進める上で有効ですから・・・。

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