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環境・エネルギー

新電力と送配電網独占の旧電力との紛争必死:高すぎる使用料が 電気料金を縛る可能性

2015/8/24から2015/9/3まで日経の<経済教室>紙面にある
<やさしい経済学:公共政策を考える>で、
(第5章)として 「電力自由化の影響」というテーマが取り上げられました。

関連して、先に、電力自由化を受けての異業種間での提携事例として、
楽天と丸紅の取り組みを以下で紹介。
⇒ 楽天が電力小売り参入:電力自由化が促すビジネスモデルの進化・拡充と効

本シリーズのこれまでのブログは
⇒ 電力・ガス小売り全面自由化への工程:日経<電力自由化の影響>から(1)(2)
⇒ 電力システム改革の要、電力広域的運営推進機関(広域機関):日経<電力自由化の影響>(3)から
⇒ 電力システム改革第2段階・電力小売り全面自由化と企業間競争:日経<電力自由化の影響>(4)から
⇒ 電力小売り自由化と送発電分離は、電力料金引き下げを意味しない?:日経<電力自由化の影響>(5) (6)から
⇒ 電力自由化で電力料金引き下げとエネルギー自給自足社会への道筋を:日経<電力自由化の影響>(7)から
⇒ 真の電力自由化、問題点の核心は?:日経<電力自由化の影響>(8)(9)から 

以上9回で終了したこのシリーズの内容がもやもやした感じだったのですが、
9月4日付<総合>紙面に、その総括と言えるような記事が載りました。
「新旧電力、自由化前に火花 独占続く送配電網「使用料高すぎる」 電気料金の下げ左右も」
という見出しの記事を加筆修正して、今回紹介します。

---------------------------

来年4月の電力小売りの全面自由化まであと7カ月。
小売事業に参入する新電力と大手電力会社(旧電力)のつばぜり合いが
本格化
してきた。

電力自由化では「発電」と「小売り」への新規参入を認める一方、
新電力は大手10社の送配電網で顧客に電気を届ける仕組みで、送配電網
の使
用料を支払うことになる。
 つくった電気を送り届ける「送配電」は大手10社の独占が続く構図で
ある。

  使用料の見直しを焦点として、30年前の通信自由化と似た新旧勢力の
衝突が避けられないとの見方が出ています。


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デジャブになるか? 通信の二の舞になる可能性が
自由化されても料金がなかなか下がらなかった通信業界

 独占的な公共公益事業体がつくり上げたインフラを巡る新旧勢力間の
衝突は
過去にあった例を思い出させます。

 85年の旧日本電信電話公社(現NTT)民営化で始まった通信自由化
で、
第二電電(現KDDI)や日本テレコム(現ソフトバンク)などが
長距離通信
事業に参入。
 しかし、市内通信網はNTTの独占が残り、新電電各社は割高な料金
を払って
NTTの市内通信網に接続しサービスを提供するしかなかった。
この結果、市内通信網への接続に消極的なNTTと新電電の間で紛争が
度々発生したことは、まだ記憶に残っています

 電気通信事業法の改正でNTT側に回線の接続を義務付けたのは97年。
 自由化のスタートから10年以上がたっていたという歴史があります。

自由化後も大手10社が独占する送配電網の使用料を巡り、新電力側が
「高すぎる」と不満を強めている。


 大手10社が経済産業省に申請した使用料金表によると、例えば北海道
電力の場合、
家庭向け使用料は1キロワット時あたり8.89円。
 このまま認可されれば道内の家庭向け電気料金27円前後の3分の1を使
用料
が占めることに。

 他の地域でも状況は似たり寄ったりで、東京電力の申請使用料は8.61円。
 東電管内のある新電力の試算によると、利用量が一番少ない家庭向けの
電気
料金の5割近くになる。
「単身や2人暮らしの家庭では商売にならない。利用が多い子育て世帯に
特化するしかないかもしれない・・・」。

 使用料は鉄塔や送電線の整備費用や離島への電力供給などの費用を基に
算定。

 使用済み核燃料の再処理関連費用なども含み、新電力には「新電力も一
律に
負担するのはおかしい」との反発も・・・。

 ただ、送配電網を大手10社が独占しているため、その主張が妥当か検証
しに
くいともいえる。
 1998年に電力自由化に踏み出したドイツでは大手が使用料を高く設定し
たた
め、新規業者の倒産が続出、という事例もある。 

 通信自由化での市内網の独占が、電力自由化での送配電網の独占に当る。
 送配電網を独占する大手には、競争相手の新電力を利する使用料金下げを
積極的に行うことを回避することは予想できる。

 従い、通信業界同様、紛争が不可避との見方が強くある。

 電力自由化では大手から送配電部門を切り離す「発送電分離」を行うが、
実施
は5年後で、分社後も大手のグループ内にとどまる。
「結局は大手の影響力が残るのでは」と多くはみる。

 政府は4日から電力取引監視等委員会で送配電網の使用料に関する審議を
開始するが、
「独占的な企業が新規参入を抑圧しては困る」としている。

 大手電力側もひとまず「真摯に対応する。新電力にしっかり説明したい」
と強調するが・・・。
 しかし、東日本大震災以降に電気料金を上げた東電など7社は経産省が送
配電費用
などを査定済みで、大手電力側からは「もう値下げの余地はほとん
どない」と主張することが予想される。

 来春の全面自由化以降、使用料を巡る新旧電力の争いが激しくなる
 家計が払う電気料金の下がり方にも大きく影響する要素・要因となる。 

SB3
---------------------------

<やさしい経済学:公共政策を考える>「電力自由化の影響」
シリーズで、電力システム改革・電力小売り自由化がすんなり電気料金
低下につながらない、そのために電力各社の経営革新が必要、となんとな
くごまかしたようなまとめ。

そこでは触れられていなかった<送配電網>の旧電力独占と使用料高止ま
りの可能性。
これが、特に一般家庭の電力料金引き下げのネックになる。

なるほど、そういうことだったのか・・・。
確かに、通信業界で、NTTとソフトバンクのある意味闘争が長く続いたこ
とを思いだしました。

ソフトバンクは電力業界にも乗り出し<新電力>サイドにあります。
ですから、電力業界で以前経験したNTTの牙城を突き崩す戦いを、旧電力
に対して挑む構図も考えられますが、果たしてそうしたパワーが、現状の
同社にはあるでしょうか・・・。
期待したいところですが・・・。

とはいうものの、本質的には、企業間の問題ではなく、政治・政府・官庁
の政策・法律の問題なんですね。
通信業界では総務省が、当時、NTTを守るためノラリクラリと時間稼ぎ。
今回は経産省と政府がどう立ち回るか、です。
旧電力の既得権を守るか、国民と経済活動を行う企業サイド、どちらの視
点で臨むのか・・・。

既に2020年4月からの第3段階までの電力システム改革のシナリオは法制化
されているのですから、それと並行してこの問題に取り組めるのか。
それともその後の課題として、議論されるのか・・・。
やはり実質的な電力改革も気が遠くなりそうな時間・期間が必要になりそう
です。

しかし、いろいろ繋がるものですね。
今度は、2015/9/5付中日新聞一面に、電力自由化に関する興味深い記事が
載りました。
「大手電力解約、原発15基分 自由化以降に新電力へ流れる」
と題したものですが、続けてきている電力小売り自由化と関係しており
次回紹介したいと思います。

地球森

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