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外国人人材

外国人人材在留期間延長と高度技術人材活用、技能実習制度、双方に必要な課題

先日、
「成長戦略を推し進めるためには、減少する労働力人口を維持するか、増やす
かの政策が必要。
その資源は、高齢者・女性・外国人の3点セット。
そしてその中の、外国人政策は・・・。
EU諸国で問題となっている難民受け入れ問題の困難さの比ではなく、はっきり
と働く目的・意欲・能力を持つ外国人は、大切に、ありがたく受け入れるべき
ものなのに、言い始めてからどれだけ経つことか、遅々として有効な政策が決
まらない、進まない・・・。」

とし、外国人人材の活用について、9月15日に決定の出入国管理基本計画から
外国人人材活用と法務省・出入国管理基本計画との関係
と題して、ブログを書きました。

それに先立って、2015/9/10付日経では
「外国人在留8年に延長 高度技術人材を確保 諮問会議が成長戦略案」と題し
た関連する記事が掲載されていましたので、今回さかのぼってその記事と、
もう一つ外国人技能実習制度についての記事を掲載していました。
今回それらを引用し、少し詳しく見て行きたいと思います。

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政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の民間議員は9日、
10月に発足する改造内閣で取り組む新たな経済政策の素案をまとめた。

「外国人の在留資格に示す滞在期間を最長8年に延長し、高い技術や経営能力
を持つ人材を確保。
公務員の配偶者手当の見直しなどを通じ女性や高齢者が働きやすい環境を整
え、500万人程度の就労拡大を目指す。
人手不足の解消などの日本経済の構造改革を通じ、成長戦略を加速する。」
という骨子。

政権発足時は金融緩和と財政出動に重点を置いていたが、安倍首相は総裁再選
後、経済政策「アベノミクス」は「いよいよ第2ステージに入る」とする。
素案では中国経済の減速などを踏まえ、内需主導の持続的成長の加速を重点課
題に掲げ「内需強靱化構造改革プログラム」の策定を求め、新たな経済政策の
たたき台となる見通しだ。

 企業の生産性を上げる柱のひとつは、外国人の高度人材の活用。
海外企業の本社から日本にある支店への転勤や、ITなど専門分野で高度な技
術を持つ外国人の滞在期間を延長する。
実現には入国管理法の改正が必要で、来年の通常国会での法改正を目指す。

上記の出入国管理基本計画の一部に、その方針を反映されたと言えます。

 政府は2012年に外国人の在留資格を最長3年から最長5年に延長しており、
これを最長8年に再延長する。
在留資格の更新手続きの頻度が少なくなるなど、国内で働きやすくなる。

 日本に滞在する外国人数は212万人(14年時点)。
12年に期間を2年延長した効果などから約10万人増えた。
経済産業省の調査では国内で働いている外国人の約5割が「在留期間が短い」と
の不満を持っているという。
さらに3年延長すれば一段の増加が見込める。

 民間議員は、日本の大学などで学んだ留学生にインターンを勧め、国内企業へ
の就職率を現状の2割から5割に高めることも提言。
国内企業が人手不足に苦しむ現状を踏まえ、これまで以上のペースの増加を目指
す。
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 20年の労働力人口は14年比で400万人減少すると試算しており、有効な手立て
を打たなければ人手不足が一層深刻になるとみている。

----------------------------
上記の文中、
「企業の生産性を上げる柱のひとつは、外国人の高度人材の活用」としています
が、果たしてそう断言してよいかどうかは疑問です。
そのためには、相当数の人材が必要であり、そうした人材は、グローバルレベ
ルでの争奪戦が予想されます。
そこで直接的に生産性向上云々と課題にするのでなく、日本で働くことが、働く
主体にとってどういう魅力・メリットがあるか、何を提供できるか・・・。
そういう視点で人材誘致を図るべきと考えます。

滞在期間を法律上延長しても、魅力・メリットが感じられなければ持続しないで
しょうし、新しい人材も入ってこないでしょう。
グローバル展開している大手企業やITベンチャーなどは、既に外国人人材活用を
当然のこととし、採用・定着・戦力化、幹部登用まで、包括的な人材マネジメント
に取り組んでいると思われます。

そうした高度な専門技術や経営管理人材の外国人人材に加え、実は、より力を入
れるべきは、これまでの外国人技能実習制度を利用してきた、建設・製造などの現
業・現場での人材の増員と有効活用です。
この制度をより拡充し、働く意欲、技術技能の習得意欲を持つ外国人を、何十万
人レベルで受け入れる必要があります。

しかし、こうした課題について、2015/4/9付日経で
「外国人実習 定着の陰で 「貴重な働き手」失踪も多く 待遇・環境改善が急務」
と題して、以下のように問題を指摘し、改善の必要性を提案しています

----------------------------

日本国内で外国人が働きながら技能を学ぶ「外国人技能実習制度」。

人手不足に悩む製造業や農家では、事実上、貴重な働き手を確保する仕組みとして
定着している。

【村上造船所(広島県尾道市)の技能実習生活用事例】
瀬戸内海に浮かぶ広島・因島。
海に臨む作業場で、日本人の従業員に混じってタイ人の若者が黙々と溶接作業など
に汗を流していた。

創業約130年の同社では、日本人の従業員8人に対し、タイ人実習生は4人。
「今や因島の造船業は外国人実習生に支えられている。」。

村上造船所は寮として一軒家を借り上げ、布団や自転車などを用意。
来日して約3年になるタンワー・タナンチャイ氏(25)は「仕事は大変だけど、
社長さんらが優しく教えてくれて日本の生活は充実している」と笑顔を見せた。

造船の現場の仕事は肉体的にきつく、危険な機械も扱うために日本人の若者から
は敬遠されがち。
島は過疎化と高齢化が進むなか、約10年前から実習生の受け入れを始めた。
因島商工会議所などによると、因島や周辺の島に来ている実習生は約1千人。
同会議所の担当者は「実習生が因島からいなくなれば、過疎化と産業衰退が加速
する」と話す。

【農業における実習生活用事例】
実習生は農業でも貴重な戦力となっている。
全国で最も受け入れ数が多い茨城県では、中国人やベトナム人ら約4千人が人手
のかかる野菜農家などで働く。
JA茨城県中央会の担当者は「農業は常態的な人手不足で実習生に頼らざるを得
ない」と話す

こうした活用・成功事例も多い一方
実習生の失踪が相次ぎ、悪質な受け入れ先の問題が指摘されるなど、不透明で、
問題を抱えるイメージもつきまとう。

専門家は「実習生の立場を明確にし、待遇改善を図るべきだ」という。

法務省によると、2014年に実習先から失踪した実習生は4851人で05年の2.5倍
過去10年の合計では計2万4千人を超え、大半不法残留になっているとみられる

劣悪な労働環境がこうした失踪の要因の一つとされ、同省によると、2013年に認
した受け入れ先などの不正行為(366件)のうち、賃金未払いなど労働関係法令
違反
が3割以上(124件)を占めていた。

実習生の相談を受ける弁護団には「残業の時給が300円と不当に低い」「暴力を受
けた」といった苦情が相次ぐ。

政府は15年度にも受け入れ期間を最長3年から最長5年に延長する方針。
不正防止策として新たに監督機関を設け、「失踪者などの実態把握を急ぎたい」
(法務省入国在留課)とする。

外国人労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「失踪を防ぐには監督強化だけでは効果が
足りない。賃金改善など実習生の権利を擁護する仕組みが必要だ」と指摘している。

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これまで種々の問題が起き、今も、単なる人手、人足としか考えられていない事例
もある外国人技能実習制度。

私も、実習生を単に人手としかみず、日常生活の相談相手となったり、しっかり技術
や技能を教える体制を持たず、計画的・体系的に身につけさせようともしない小規模
企業・経営者を見たことがあります。

入国させ、受け入れるまでは一生懸命ですが、受け入れてしまえば、ただの人手。
人権を無視した悪質な事例・事件も何度も話題になった外国人技能実習生制度。
このままでは、在留期間の延長は、かえって悪用を許す期間を長くすることにもなり
かねません。

導入希望企業の事前審査、運用とフォロー、活用企業の評価などの仕組みの整備が
絶対に必要です。
本質的には、国家間の問題でもあり、国がこの制度を責任をもって管理すべきです。

そして、その課題をクリアすることを条件に、従来の職種にとどまらず、新たに、
もっともニーズが高い介護・医療や保育分野にまで対象を広げることも当然の流れと
言えます。

外国人介護人材の問題については
先日、私の別のブログ、「介護相談.net」で以下のようにシリーズ化しました。
関心をお持ち頂けましたら、チェックしてみてください。

日本を上回るアジアの高齢化と介護人材ニーズ:外国人介護士問題の現状と課題(1)
国・業界上げて、外国人介護人材育成・受け入れを:外国人介護士問題の現状と課題(2)
外国人介護人材、受け入れ・定着・戦力化のモデルにならう:外国人介護士問題の現状と課題(3)
中国での介護事業要員確保育成兼ねた外国人介護人材を技能実習制度で:外国人介護士問題の現状と課題(4)

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