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減反廃止が農地バンク(農地中間管理機構)課題解決の根本:農地をどう守るか(2)

日本経済新聞の「経済教室」紙面にある< 時事解析>欄。
2015/10/6から、『農地をどう守るか』と題して5回連載されました。

このテーマは、農業改革問題を耕作地の視点から取り上げるものですが、
可能な限り、
山下一仁氏著の『日本農業は世界に勝てる

に挿入された同一課題に関する論述も、並行して取り上げて考えていきたいと
思います。

第1回の< 登場した自給力指標 必要な面積を議論>は
[食料自給力・自給率と農地問題]と題して、取り上げました。

今回は、第2回です。

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 2. 中間管理機構の不振 市町村と連携カギ
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将来性のある経営に農地を集め、荒廃を防ぐことを目的に、農地中間管理機構
(農地バンク)が2014年度に発足した。
だが初年度の実績は目標の5%にとどまった。

 農地バンクは、引退する高齢農家などから農地を借り受け、担い手に転貸する
仕組みで、都道府県ごとに設けている。
14年度の実績は7349ヘクタールと、目標の15万ヘクタールには遠く及ばなかった

 制度の円滑なスタートを疑問視する声は当初からあった。
安藤光義・東大准教授は、農地の流動化が市町村など農業現場に近い自治体を
軸に進められてきたことを踏まえ、昨年発表した論文で「都道府県という上の
レベルに移譲する必要はなかった」と指摘した。

 農林水産省もこの問題を意識し、農地バンクが市町村と連携するよう求めている。
だが同省が今年5月に発表した調査によると、76%の市町村が「農地の集積に
向けた地域の協議を、農地バンクは十分把握して活動していない」と回答した。

 農水省は、原因の一端は農地バンクの体制にあると判断。
農地バンクの役員で
民間企業の経営者などが1割しかいない点を挙げ、「民間
ノウハウの活用ができていない」として、役員構成を見直すよう求めている。

 県と市町村の協力の大切さを指摘する声はほかにもある。
 農林中金総合研究所の小針美和主事研究員は最近の論文で、地域には担い手が
いない懸念を受け「市町村を超えた枠組みを担保しておくことも必要」と指摘。
 地主が安心して農地を貸せる信頼性を制度が持つことが重要だと訴える。

5
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山下一仁氏著の『日本農業は世界に勝てる』には、関連した
記述に、以下がありました。

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安倍内閣の成長戦略の中で最初に提案された農業改革案は、農家が農産物の
加工、流通も行うという6次産業化(1+2+3=6次)、輸出の倍増、農地を借り
受けて担い手農家に貸し渡す農地バンク(農地中間管理機構)という政策であ
り、10年間で農業所得を倍増するという目標を掲げた。

(略)
農地バンクは農家から農地をいったん借り受けて、必要があれば区画を拡大
し水路などを整備して、大規模農家や農業法人などの農業の担い手にまとまっ
た農地を貸し付ける。
つまり、農地バンクが、いったん農地の受け皿となり、貸し手と借り手の橋渡
しをしようというものだ。
 
 実は、これも1970年から40年以上実施している農地保有合理化事業のリメイ
クである。
 農家から農地を買い入れたり借り入れたりして農地をまとめ、これを規模拡
大しようとする農家に売り渡し、貸し付けてきた。
 この事業を行う法人を「農地保有合理化法人」という。

都道府県段階の農地保有合理化法人としては、47都道府県すべてに公社が設
置されており、主として農地の売買事業を行っている。

 また、市町村段階でも、市町村や公社、農協などが農地保有合理化法人とし
て、主として農地の貸借の事業を行っている。

 しかし、期待されたほどの効果は上がっていない。

 農地面積は全国で450万ヘクタールあるが、2005年以降の事業実績を見ると、
毎年の農地の売買が7000から9000ヘクタール、農地の貸借が1万2000から1万
6000ヘクタール程度である。

 農地バンクがこれまでの農地保有合理化事業と異なる点は、まず、農地の区
画整理や水路の整備などの農業基盤整備事業と連携させて、農地を良好にした
うえで、担い手に渡そうとしていることである

 これまで、農地の集約を行う事業と農地を整備する事業は、同じ農林水産省
の事業なのに相互に関連なく行われてきた。

 これを一体化しようとしている。

 しかし、いくら新しい機構を作っても、農地のゾーニング撤廃と減反廃止
いう政策を実行しない限り、農地が出てこない以上、農地を集約することは困
難である。

 
 これに、当初の2年間だけで1200億円以上の税金投入を用意している。
 貸出面積に応じて30~70万円を配る経営転換協力金農地バンクが借りてい
農地の隣接地を貸すときに10アール当たり2万円を交付する耕作者協力金
まった農地を貸し出した地域に10アール当たり2~3万6000円を交付する地域
集約
協力金の3つを内容としている。

 しかし、私が予想した通り、農地はなかなか貸し出されなかった。
 宮城県では、借りたいという農業者の希望面積は2万ヘクタール以上なのに、
貸し出されるのはわずか750ヘクタールにすぎない。
 どの県でも、似たような状況である。
 農地が出てこないのだ。

 だが、2014年末頃になって、農地が動き始めた。
 米価が大幅に低下したからだ。
 農地の流動化のためには、減反廃止による米価低下が必要であることが実証
され
形となった。

一升枡
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日経記事の視点と、山下氏の視点がまったく違っていることが明確です。
制度と運用組織のあり方に原因があるとする前者。
一方、後者は、もっと根本的な問題として、農地活用の方法と米作の減反問題、
関連して米価問題を取り上げ、その解決が不耕作地等農地の流動化と集約化に
つながるとしています。

日経は、どこまで理解しているのでしょうか・・・。

貴重な資源である農地。
何もしないことに対して協力金を支給する制度のバカバカしさに加え、それでも
提供しない結果となる馬鹿げた制度。
そのために、多くの時間とコストも費やしているのだが、結局だれも責任を取ら
なくても済んでしまう行政。

さて、この根源的な問題は、TPP妥結で変わるのか・・・。
実は、アメリカ議会で、この妥結したはずのTPPが承認されなければ、執行では
なく失効するリスクもあること、意外に知られていません。

日本のみならず、米国でも、来年の大統領選をにらんで、TPP問題は、すんなり
とはいかず、日々くすぶっているニュースが紹介されています。
むしろ、日本の方が、首相の強い意志で、農業改革に取り組む姿勢が打ち出され
ている印象です。

これも野党が弱いせいでもあり、農協改革の第一段階をクリアしていることを背
景にしているからこそでもあります。

とは言いながら、実際には、補償・助成名目で、多額の税金が投入されることは
間違いありません。
問題は、それらの一時的な資金が、中長期的に農業改革にしっかりと結びつくか
どうか、その取り組みを推進させることになるか、です。
注視していきたいと思います。

 

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