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地方・観光

人口集中と所得格差がもたらす地域格差を克服する:<地方再生の行方:地域格差と財政>(1)(2)より

日本経済新聞の【やさしい経済学】欄
2015年11月10日から始まった『地方再生の行方』をテーマとしたシリーズ。
その第1章は慶応義塾大学准教授 別所俊一郎氏による「地域格差と財政」。
その解説内容を、2回分ずつ紹介します。

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  地域格差と財政(1)  所得面で東京一人勝ち 
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日本はすでに人口減少社会に突入し、しばらくは人口が減少し続けると予測
されています。
しかし人口が減少する速さは出生率や死亡率、移住の規模の違いにより、そ
れぞれの地域で異なります。
東京などの大都市圏では若い人の流入が目立つ一方、過疎地域では高齢者の
人口すら減りつつある地域もあります。

人口流出や人口減少によって地方は経済活力が失われ、残された住民は疲弊
しつつあるといわれます。
安倍晋三内閣は、各地域がそれぞれの特長を生かした自律的で持続的な社会
を生み出せるよう、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置するなどして対
処しようとしています。

この連載では地域間の経済格差をどのように捉え、どのように対処すればよ
いかについて、地方財政の基礎理論に基づいて説明していきます。

まず、地域間の経済格差の現状を確認しましょう。
日本で地域間格差を統計的に調べる最も簡単な方法の一つは、都道府県の平均
の比較です。
地域の経済状況をマクロ経済学の理論と整合的にまとめている県民経済計算
見てみましょう。

経済格差を見る指標はいくつかありますが、雇用者1人当たりの雇用者所得
を見ると2012年度は最も多い東京都が633万円、最も少ない佐賀県は331万円
となっています。
所得には雇用者所得だけではなく、利子所得や事業所得も含まれます。
これらを含む指標として人口1人当たりの県民所得があります。
やはり、最も多いのは東京都で442万円、最も少ない沖縄県は204万円です。

いずれも、最大値と最小値を比べると2倍近い差があります。
また、東京都の1人当たり県民所得は、第2位の愛知県(344万円)より30%
近く高く、東京都が飛び抜けていることがわかります。 

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 地域格差と財政(2) 人口集中で所得に差
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1人当たりの所得を都道府県の平均値でみると、最大と最小の自治体の間に
は2倍近い違いがあります。
しかし、同じ都道府県内でも豊かな地域とそうでない地域があります。

それを確認するために、市区町村ごとの平均所得の分布を見てみます。
ここでは、市町村民税の所得割の課税対象を基準に。
市区町村は日本全体で1700以上。
これを東京23区と政令指定都市、中核市、そして県庁所在地とその他の市、
町村に分けて、それぞれの平均値を見ると・・・。

東京23区は250万円足らず、政令指定都市や中核都市・県庁所在地などの
都市の平均所得は100万円から150万円程度。
その他の小規模な市町村は100万円未満と低い水準です。
23区の平均と町村の平均を比べると2倍以上の開きがあり、東京一極集中
が確認されます。

地域の平均所得に差があるのはなぜでしょうか。
一般に、教育水準が高いほうが個人の所得水準は高くなりますから、教育
水準の高い人々が集まっていれば、その地域の平均所得は高くなります。

では、地域の平均所得の違いは、地域の平均的な教育水準の違いで説明で
きるのでしょうか。
経済産業研究所(RIETI)で行われた研究によると、平均所得に似た
動きをする労働生産性(労働者1人当たりの生産量)の違いは、教育水準
や労働者1人当たりの資本ストックの違いだけでは説明できず、
それ以外の要因が占める比率が大きいといいます。
都市経済学では、大都市には労働力や資本といった生産要素だけでなく、
知識の伝達などによる集積の利益が大きいと考えられています。

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都市部には企業数が多く、企業間での人材確保競争も激しいため、人件費
が高まる。
都市部での地価の高さや物価の高さから、給与も他の地域に比べて高くなる
傾向がある。
これらの点も、都市部の所得平均が高くなる要因として上げられます。

ただ、こうしたことから都市部の人々の暮らしが豊かであると断定すること
には無理があります。
通勤時間の長さ、住宅コストや物価の高さなどから、都市部で暮らす人々が
収入の多さほどの豊かさを実感していない。

こうした視点に、大都市から地方への移住を促す根拠を求めることは可能と
思います。

また、教育水準の違いがもたらすとしている所得格差。
地方においても高い知識や教育水準を活かし、高収益を得ることが可能な仕
事を創出することは、情報システムやインターネットインフラを活用するこ
とで十分可能です。

従い、人口の集中や所得格差が大都市と地域間の個人レベルでの経済・所得
格差を生み出す根本要因とすることは、的確ではなくなりつつある。
そう感じています。

もう一つ、仮に教育水準が低くても、担当する仕事における創意工夫や改善
を求め、その活動を日常的に進める基盤・仕組みがあれば、労働生産性の向
上や付加価値を高めることも可能になります。
そのことで企業収益を再配分し、個人所得を引上げることはこれからでも可
能です。

地方には、あるいは地方企業にはそうした視点と取り組みが不足していた。
その観点から、都市部で業務改善や事業開発などに携わった経験・実績を持
つ幅広い世代の人材が地方に移転し、高い水準の知識や技能を移転し、収益
と収入の向上に貢献してもらう機会を積極的に創っていくべき。
そう考えます。
もちろん、その中に農業分野・漁業分野も含むこと、IT活用を前提とするこ
と等は言うまでもありません。

視点を戻すと、所得格差をそのまま生活ベースでの経済的格差、生活の豊か
さの格差と読み、評価することは客観性・公平性を欠くと思われます。

ただ、電気やガス・水道など公共的基盤を整備・維持するためのコストは
ある程度の規模のニーズが確保されなければ、過重な負担となることも目に
見えています。

そうしたプラス、マイナスの諸要素を基本として、格差を埋めていくか。
地方再生には、恵まれていないというマイナスの要素からスタートするの
ではなく、格差の実態、公正な評価・把握から取り組むことが必要と考え
るのです。

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