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人口減少

公的サービスの地域間格差是正のための補助金投入は国民的合意:地域格差と財政(3)(4) 

日本経済新聞の【やさしい経済学】
2015年11月10日から、慶応義塾大学准教授 別所俊一郎による『地方再生の行方』
をテーマとしたシリーズが始まりました。
その第1章は「地域格差と財政」がテーマ。
その解説内容を、複数回分ずつ紹介します。

第1回:人口集中と所得格差がもたらす地域格差を克服する:<地方再生の行方:地域格差と財政>(1)(2)より
今回は、第2回です。

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  地域格差と財政(3) 所得以外も移住の要因
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全国の市区町村の人口の流出入。
所得の高い
東京23区や政令市には人口が流入する一方、小規模な市町村で
は流出が
起きています。

昨年、増田寛也・元総務相らがまとめた、いわゆる「増田リポート」は
人口移動が今後収束しなければ、2010~40年の間に20~39歳の女性人口
が半分以下になる市町村が全体の5割近い896あると推計。
この報告書はそうした市町村を「消滅可能性都市」と呼んだことで話題
になりました。(参考)⇒『地方消滅 – 東京一極集中が招く人口急減

全国を1平方キロメートルごとに区切った11年の国土交通省の推計でも、
50年時点の人口が05年に比べて半分以下になる地点が現在の居住地域の
6割以上を占めるとされています。逆に人口が増える地点の割合は2%
以下で、東京圏と名古屋圏に集中しています。

また、教育水準や技能の高い人々のほうが集積の利益をより享受でき、
大都市へ移住しやすいとなれば、移住は地域の平均所得の違いをさらに
拡大させるかもしれません。

もし、電車の混雑のような人口集中による「負の移住外部性」が小さく、
自由にかつ費用をかけずに移住できるなら、自分にとって最適な地域に
住もうとするので、地域の平均所得の差はさほど問題ではないでしょう。

平均所得の格差拡大は人口流出入の一因ではありますが、所得だけが
住むところを決めるわけではありません。
例えば、人口1人当たりの都市公園の面積は北海道や宮崎県などで広く
なっています。
住環境は住むところを決める要因の1つであり、平均所得の低い地域が
選ばれる可能性はあります

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 地域格差と財政(4) 補助金通じ改善目指す
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 地域間の移住が自由で費用もかからず、電車の混雑のような人口集中
による負の移住外部性が小さいのなら、地域の平均所得の差はそれほど
問題ではありません。

しかし実際には、移住は費用がかかります。
引っ越しの費用以外にも、住宅や土地の売却にかかる手間や時間も含ま
れます。
また、住み慣れた地域に対する愛着や愛郷心も移住費用の一種です。

所得の低い人たちが移住の費用を支払えないために移住できず、その
ために地域の平均所得が低くなっている時、政策的に平均所得の差を
是正すべきでしょうか。

この時、是正は支持されません。
経済的に恵まれない人を支援したいのなら、基本的に全国一律の基準
に従って支援されるべきです。
平均所得が低い地域に住む恵まれない人と、平均所得が高い地域に
住む恵まれない人を、地域が違うという理由で異なる扱いをすること
は公平性の観点から好ましくありません。
ただし、冬の寒さが厳しく暖房代が必要だといった気象条件の違いや
物価水準の違いは考慮されるべきです。

ではなぜ中央政府から地方政府に補助金が配られ、平均所得が低い
地域のほうが補助金を多く受け取っているのでしょうか
1つの理由は移住外部性です。
渋滞や公害のような人口集中の弊害が大きければ、政策的に介入する
必要があります。
補助金で、人口が集中していない地域の所得を引き上げたり住環境を
改善したりすれば、過度の人口集中の緩和が期待できるでしょう。

もう1つの理由は地方税収の差です。
税制に大きな差がない時、平均所得が低ければその地域の地方政府が
受け取る住民1人当たり税収も少なくなります
税収が少ないと地方政府が提供できる公的サービスも少なくなります
地方政府の提供するサービスに地域的な差がないほうが望ましいとい
う全国的な合意があれば、中央と地方、地方と地方の間で税収を再分
配する必要があるのです

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地方住民が受ける公的サービスの質が、地域ごとに異なることは問題、
と誰もが思うでしょうね。
例えば、学校教育、保育、医療、介護、年金など・・・。

確かに、税収が少ない自治体では、そのための資金が十分でなく、その
ままでは地域間格差が生じてしまう。
そこで、補助金が拠出されることに異議を唱える国民・住民はいないと
思われます。
これが全国的・国民レベルでの合意、と言えます。

地域の所得の低さは、物価などの生活コスト等の比較を含め、相対的に
判断すべきと前回述べました。
しかし、一律に都市部よりも地域の方が所得が低いと断定することは、
本来適切ではありません。
職種や業種により、個人個人により、そして企業企業により所得格差は
あるわけで、その格差を不平等として埋めようとすること自体、不平等
というべきです。

すなわち、所得の地域間格差を、人口移動・人口流出入格差の本質的な
違いの要因とするのは誤りといってもよいと思うのです。

地域・地方で居住し生活する魅力、利点。
それは、地域自らが創生し、再生すべきこと。
補助金でカバーされる公的サービスを提供しつつ、全世代が関りをもって
取り組むべき課題です。

 

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