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地方・観光

円安は地方衰退の一因か?:日経記事から地域企業経営・地域再生を考える

2015/12/2 付日経の <大機小機>というコラムで
「 地方衰退の一因は円安」と題した一文が載りました。
概ね、もしくは大筋、賛同できる内容でしたのでご紹介します。

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日銀が掲げるインフレ目標の2%達成が危ぶまれている
2年で2%という目標が経済再生に果たした役割は大きい
エネルギーなどを除いた物価上昇率は1%を超え、既にデフレは脱した
状態だ。
これ以上、形式的な2%にこだわる理由はない
日銀は目先のデータなどに右顧左べんせず、自らが主導した成果に基づ
き、断固としてデフレ脱却宣言をすべきである
それが人々の期待を変える。

現在、主要国で2%のインフレ率を達している国はない。
米国が利上げに向かい、日銀が2%にこだわるなら円安傾向は続く
その余波は輸出企業の少ない地方経済に及ぶ

円安の恩恵は輸出企業に生ずるが、それは都市に集中する大企業に多い。

一方、地方経済は中小企業が主体で仕入れる原材料など輸入への依存度
が高く、円安の悪影響が及びやすい
円安による輸入品の値上がりはデフレ脱却には貢献するが、地域で見れ
ば地方に不利である。

輸出が多い大企業は円安で収益が拡大しても国内を市場とする地方の
中小企業には恩恵が少ない。
脱デフレや人手不足に伴う賃金上昇も中小企業には負担だ
ICT(情報通信技術)の進歩も大企業の地方進出に有利で、円安、
人口減、技術進歩が全て地方の中小企業への逆風になっている。

経済動向を全国一律のマクロ変数だけで見るのではなく、もっと丁寧に
政策効果を検証すべきではないか。
地方が活性化しないと選挙で不利になり政権基盤が揺らぐ
政治が安定しないと経済再生は一層困難になる。
全企業数の99%以上を占める中小企業を基盤とする経済力は、国力の
源泉である。
一億総活躍社会を実現する具体策は過度な円安の是正にある

黒田総裁が就任する前の日銀は、主要国が軒並み大幅緩和をする中で
緩和政策を否定し続けたために市場に政策を先読みされ超円高を招いた
同じ過ちを逆方向で繰り返してはならない。
日銀は過去の約束に捕らわれて自縄自縛に陥ってはいないか。
訪日客の急増は購買力平価で円安に振れている証しである。

成長戦略や新3本の矢は民間企業がやるべき項目が主体である
政府と日銀が政策として追求すべきは、自らが持つ政策手段を適切に
運営することである。
金融政策の力は既に証明済みなのだから。

k9
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「概ね、大筋賛成」とは言っても、紫色に変換した部分には違和感があります。

まず、「日銀が掲げるインフレ目標の2%達成が危ぶまれている。」
「危ぶむ」という表現を用いる必要はないと考えます。
何としても2%達成させるという目標自体、本当に適切だったのかどうか、の
評価・議論なしで、それを是としていることが、それ以外の意見と矛盾すると
思われるからです。

次に、「デフレ脱却宣言をすべきである」という表現。
実体経済を考え、あるいは評価する時、インフレかデフレか、という2元論を
用いることが果たして必要か、適切なのか、という疑問を持つからです。
物価は下がっても賃金が上がる。
生産性の向上、あるいは高い生産性をもつ産業や企業が増え、賃金も上がるが
物価は落ち着いている。
そういう経済・経営モデルをめざすことも当然、是、とすべきと考えるのです。
そこに、インフレやデフレという旧来の概念は不要と思うのです。
これからめざすべき、目標とすべき経営ではないでしょうか。

「地方が活性化しないと選挙で不利になり政権基盤が揺らぐ。」
残念ながら、今の自公連立に対抗できる野党があるはずもなく、野党が地方を
活性化できる的確な政策を提案することなど、とてもとても考えられない、期
待できるはずもないのは、明らかです。(悲しいですが。)

「一億総活躍社会を実現する具体策は過度な円安の是正にある。」
「成長戦略や新3本の矢は民間企業がやるべき項目が主体である。」
この2つはつながっているので並記しました。
その政策の目玉は、女性活躍、保育・子育て、介護関連です。
それらが、円安とどう結びついているか・・・。
保育・子育てや介護などの社会福祉的な課題は、民間がすべての責任を負うも
のではなく、国や自治体の財政政策と深く結びつき、それらの行政の基本方針
のあり方が、間違いなく問われるものです。
もちろん、保育事業や介護事業が民間に委託され、利用者の利便性を上げ、サ
ービスの質や生産性、収益性を上げながら、利用コストも下げていく・・・。
そう期待したいのですが、困難なことは明らかです。
補助金・交付金を増やせば済むというものでは絶対にない。

円安は地方経済へのマイナス、という主張は適切と思うのですが、その論を裏
付け、肉付けする論が、なんとも甘いと考えます。

「輸出が多い大企業は円安で収益が拡大し」
という件も、海外移転している大企業が多く、輸出の伸びはさほどなかった、
とされているのでは。
大企業の円安効果は、海外投資による資本収支の黒字化要因が大きいはず。

「過度の円安を是正すべき」という、客観性の高いせっかくの問題提起も、他
の部分で、価値を下げてしまったのが、なんとも残念でした。

しかし、円安で起きている「爆買い」の恩恵を受けている地方も一部あるでし
ょうから、それらの地方では、円安は困る!ことになるでしょうね。

本来、ICT技術を用いた事業は、地方でも可能なはずで、そうしたベンチャー
がより地方に誕生してほしいものです。

要は、記事タイトルにもあるように「円安」は一因であり、さまざまな複合的
要因に地方経済が影響を受けているわけです。
外為や金融政策に揺さぶられない、それぞれの事業特性に応じた、あるいは活
かした独自の事業経営を、地方企業はこれから強化すべきことは間違いありま
せん。

k6

最後に、毎度の提案として、地方大学には観光学科を必ず設置すべきとしてい
ることに加え、今度からは、地域経済学科、地域経営学科なども加えて欲しい
ですね。
欲張って、可能なら農漁業経営学科も。自治体の農業試験場などと連携して。

地方再生・地方創生は、永遠のテーマであり、産官学共同して取り組みことで
若手起業家を育成する基盤つくりにもなるからです。
上記の各学科が協働してワークショップを開設することも・・・。
そして他大学との連携・ネットワーク化も当然・・・。

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