鍋8-2

農業

大規模稲作農家の離農という矛盾と米価との関係:『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』から(2)

端からそのタイトル『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える
に惹かれたこの書を紹介しながら、日本の農業のこれからの可能性・
期待について考えるシリーズを始めました。

第1回は、序文に当たる【はじめに】を紹介した
自動車産業を超える農業の可能性、その根拠は?

第2回の今回から、第1章 農業を殺した「戦犯」たち
に入ります。

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 第1章 農業を殺した「戦犯」たち(1)
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<10ヘクタールの農家も辞める>

「50ヘクタール(1ヘクタール=1万平方メートル)の稲作農家が突然、
経営破綻した」
「地域の農業を担っていた70ヘクタールの水田農業経営体がつぶれた」
2014年の終わりごろから、こうした話がぽつぽつと届くようになった。
50ヘクタールだとか70ヘクタールだとかいう経営面積は、国内における
農家一戸当たり平均の30倍前後に相当する。
そんな大規模な農家さえもが次々に姿を消そうとしている・・・・・
いま、農業の生産現場で、何が起きているのか。
2014年も年末に近づいたころ、まずはコメどころの青森県を訪ねた。

吹雪のなかを青森市内からバスに1時間ほど揺られて、向かった先は津軽
半島の中南部に位置する五所川原市。
JRの五所川原駅から車で5分ほどのところに、県庁の出先機関である西北
地域県民局がある。
そこで取材に応じてくれたのは、地域農林水産部で稲作・畑作班に所属
する斉藤仁志主幹。
長年にわたって青森県の水田農業経営を見つめてきたベテランだ。

西北地域は県内の水田面積の4割を占める稲作地帯である。
全国を見渡してもコメの収穫量がひときわ多いことで有名で、10アール
(1アール=100平方メートル)当たりの平均収量は、全国平均が9俵
(1俵=60㎏)に対して、同地域は10俵を超える。
おまけに、大規模かつ専業で水田農業を経営する稲作農家が、ごろごろ
といるところだ。

斉藤さんによれば、同班の職員たちは2014年度が始まったばかりのころ、
管轄する7市町の水田農業について、次のような青写真を描いていた。
すでに多くの農家は高齢化し、後継者がいない。
おまけに長引く米価の低迷は、きっとこれからも続くだろう。
そうなれば、大多数を占める10ヘクタール前後の稲作農家は最も経営体
力が弱いから、だんだん姿を消していくに違いない。

ただ、他の地域と違って西北地域の農家が耕作できなくなった農地の引
き受け手となる、集落ごとに農業生産工程の全部や一部を共同で行う
集落営農」は、ほとんど存在しない。

だから、これから大量に吐き出されてくる農地は、余力のある20ヘクタ
ール以上の個々の農家が請け負うことで、30ヘクタール以上の経営体が、
じわじわと増えてくるはずだ。

だが「少し先」と思っていたこのミライは、突如として目の前に迫って
きた。
その引き金となったのは2014年産の米価の大暴落・・・・・
JAが農家に払う一時金、すなわち概算金が、全国的に前年と比べて2割
ほど下がり、各県で過去最低水準を更新していったのだ。

概算金は、その後の米価を占うバロメーターでもある。
青森県では、主力銘柄である「つがるロマン」の概算金は1俵当たり7600
円と、2013年産を3200円も下回った。
これは全国平均を超える下落率である。

生産現場に与えるその影響について率直にたずねると、斉藤さんは神妙な
面持ちでこう答えた。
「離農に一気に拍車をかけるでしょう。というか、すでに辞めた農家も出
ていると聞いています・やはり10ヘクタール弱の農家が辞めていってます
ね。」

次回、<農地の拡大を躊躇するのはなぜか>に続きます。

米
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大規模化を進めるべき、大規模化の可能性・・・。
一般的に、今後の農業のあり方を提示する(はずの)大規模農家の経営が
破綻する・・・。
どうにも不思議な話から始まりましたが、その実態は、稲作農家の離農で
あり、真因は、米価の下落にある、と・・・。

長く日本のコメの価格が高止まりしていたものが、ここ数年で自由市場化
が進み、JAを経ないコメの流通が大幅に拡大した・・・。

そのことに拠るJAの概算金の引き下げ。
という連鎖になるのでしょうか。
しかし、JA自体の経営には、直接大きくは響かない・・・。
打撃が大きいのは、コメの流通をJAに委ねていた稲作農家。

どうやら、消費者にとってプラスとなるおコメの値段が下がることで農家
の経営が困難になる・・・。
それではまずいですが、経営力の強い稲作農家も当然存在し、農業法人も
増えている。
また、ブランド米の生産で、高付加価値・高収益化を図る農家も増えてい
る。

言うならば、TPP対応を含め、稲作農業が大きな転換点を迎えているとい
うことは間違いないわけです。

その辺りも含め、じっくり本書で、現在の問題を招いた過去の農業・農政
を含め見ていきたいと思います。

2

次回は、<農地の拡大を躊躇するのはなぜか> です。

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-『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』構成-

はじめに
第1章 農業を殺した「戦犯」たち
第2章 世界5位を誇ったコメの実力
第3章 大進化するコメ農業の可能性
第4章 輸出産業となった日本農業
第5章 ロボットと農業参入者のシナジー
第6章 農業の「多面的機能」で世界に
おわりに 

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【著者・窪田新之助氏プロフィール】
1978年生。明治大学文学部卒。
日本農業新聞入社。以後8年間、年間100日ほど国内外を取材。
農業政策、農業ビジネス、農村社会の現場をレポート。
2012年フリーに。
2014年、米国国務省の「インターナショナル・ビジター・
リーダーシップ・プログラム」に招待され、アメリカの農業の
現場を視察。

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