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ばらまき政策からの脱却の好機にできるかTPP?やはりムリ?:日経「食と農・平成の開国」から(4)

2016/2/2から日経で5回にわたって掲載された特集「食と農  平成の開国」
を紹介しています。

第1回:コメの戦いは日米のみならず日豪などグローバルレベル化
第2回:緑茶・富有柿、和食ブームと共にジャパンブランド農産物輸出、成長期に
第3回:物流・国際クール宅急便が切り拓く、農水産物のグローバルビジネス化

今回は、その4、です。

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(その4):「ばらまき温泉」の亡霊 「守るだけ」で勝てますか(2016/2/6付) 
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群馬県の南部、埼玉との県境に「廃虚」となった酪農施設がある。
牛乳をパックに詰める機械を撤去したがらんどうの室内に壁からホースが垂れ下がり、
床は傷んでめくれ上がっている。
酪農業協同組合が4年前につぶれ、放置された。

廃虚になった酪農施設(群馬県南部)
※画像は、日経記事から転載させて頂きました。
<例によって、施設は建てたが・・・>

18年前に設備を更新したときは、新品の機械に農家が目を輝かせた。
原資はガット・ウルグアイ・ラウンド(UR)対策費。
地産地消を掲げ、1日1万パックの強気の計画を立てた。

誤算は、肝心の牛乳が期待ほど売れなかったことにある。
スーパーへの売値はブランド力のあるメーカーより少なく、赤字が膨らんだ。
元理事長は「補助金に飛びついても経営は向上しなかった」と肩を落とす。

環太平洋経済連携協定(TPP)で農業の競争力強化が焦点になっている。
教訓は、1993年に決着したURの農産物交渉。
日本は約6兆円の対策を決めたがその後、効果は小さかったと批判を浴びた。
象徴が「温泉ランド」だ。

栃木県那須塩原市の温泉街にある施設はその一つ。
入り口には「農林漁業特別対策事業」と書いた看板があるが、市の職員による
と「利用客にすればただの入浴施設」。
もとからあった遊戯施設に、97年に温泉を併設した。
農家が野菜を売るコーナーを設ける構想もあったが、採算に合わないとして
見送られた。

ウルグアイ・ラウンド対策費で建てた温泉施設(栃木県那須塩原市)
※同じく、画像は、日経記事から転載させて頂きました。

農林水産省はUR対策で巨額の予算を使ったが、TPP交渉では「海外には勝
てない」と再び守りに終始した。

<先行する欧州>

対照的なのが欧州。
UR交渉を機に農産物の値段を下げ、農家の収入は補助金で支えるシンプルな
制度を導入。
消費者利益と競争力強化を両立させた。

補助金の進化はなお続く。
昨年本格的に始まった制度では、多様な作物を植える
など環境に気遣う経営へ
の支援を厚くした。

JC総研客員研究員の和泉真理(55)は「納税者の理解を得るよう努めている」
と話す。

<変われるか日本>

では日本はもう同じ轍(てつ)を踏まずにすむのか。
昨年2015年11月、東京・永田町の自民党本部。
元農相の谷津義男(81)はTPP関連の会合でUR対策を「農林族の私をはじめ
みんな悪い。まさか温泉まで掘るとは思わなかった」と悔やんだ。

今回は温泉ランドのようなものは入らない。
だが競争力強化に徹することができるかは不透明。
自民党は当初今秋にTPP対策をまとめる予定だったが、大枠は春に前倒しする
案が浮上した。
夏の参院選の選挙公約に書き込むためだ。

いま論議で表に出ているのは、輸出促進などが中心。
だが元農相の西川公也(73)は「本当の狙いは米価対策」と打ち明ける。
数が多く政治への影響力が強いコメ農家への配慮が強まるほど、TPP対策は
「攻めの農政」から遠ざかる。

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<ウルグアイ・ラウンド対策、8年で6兆円 半分以上が公共事業に
- 歴史を繰り返させないために!>

1993年12月に合意したガット・ウルグアイ・ラウンド(UR)を巡る農業対策で、
日本はコメ市場の部分開放や農産物の関税率を平均36%、品目ごとに最低15%引
き下げることになった。
8年間で6兆100億円の事業費が投じられ、そのうちの半分以上が公共事業に
充てられた。

非自民連立の細川政権はガット・ウルグアイ・ラウンドの合意後に崩壊。
政権を奪還した自社さ政権が関連対策をまとめた。
大蔵省(現財務省)は当初、約3兆5000億円の事業費で調整していたが、
与党から「1年で1兆円は必要だ」との意見が強まり、2倍近くに膨らんだ。

事業費6兆100億円の内訳は、農業土木を中心とする土地改良に約3兆2000
億円
(53%)を充てた。
施設整備などに使う農業改善事業にも約1兆2000億円(20%)を振り向けた。
「ばらまきありきで、農業強化につながらなかった」との批判は絶えない。

農地の大規模化に割いたのは2200億円(4%)。
新たな担い手対策も250億円(0.4%)と全体のごく一部にとどまった。

一定量のコメを関税ゼロで受け入れることになったため、せんべいなどの加
工用
やエサ米などに振り向ける措置がとられた。
コメ価格の下落で中小零細農家の反発を招かないようにするための策だった。

2
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こうした過去の日本農政の失敗事例は、枚挙にいとまがありません。

日本農業は世界に勝てる』や下記の『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える
でも、指摘していますが、過ぎ去った政治の責任はだれも問われることがありませ
ん。

せめて、もうそろそろ同じ轍を踏まない政治を望みたいのですが、金をばら撒く
ことこそ政治の面白味、だから政治家をやっている、かのように穿った見方をす
るのは、悪い癖でしょうか・・・。

こうした点では、与党も野党も同じ穴のむじなです。

一億総活躍社会の実現には、一億総モラトリアム社会の変革が必要です。
政治だけでなく、当事者自らが行動を変えていく・・・。

意識の変化は、行動の変化でしか認めることができません。
幸い、農業の現場が、若い世代やICT産業等異業種の参画で変わりつつある・・・。
民の行動こそがその根源と強く思うのです。

それにしても、最近の動きを示す記事中に、「元」農相が二人も出てくる政治。
大臣のバラマキ政治をも象徴するものであり、恥ずかしい限りです。
当然、「元」の人たちは責任を取りません・・・。

5

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当ブログサイト<大野晴夫.com>に『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える
(窪田新之助氏著・2015/12/17刊)を紹介しながら、日本の農業のこれから
の可能性・期待について考えるシリーズがあります。

はじめに
第1章 農業を殺した「戦犯」たち

第2章 世界5位を誇ったコメの実力
第3章 大進化するコメ農業の可能性
第4章 輸出産業となった日本農業
第5章 ロボットと農業参入者のシナジー
第6章 農業の「多面的機能」で世界に
おわりに
という構成の本書からのこれまでの投稿は
【はじめに】
第1回:自動車産業を超える農業の可能性、その根拠は?
【第1章 農業を殺した「戦犯」たち】
第2回:大規模稲作農家の離農という矛盾と米価との関係
第3回:減反・米価政策等農業保護政策が招いた稲作農業の経営実態
第4回:重労働、高齢化に抗することができない農業の弱点
第5回:70歳が農業就業者の定年?2017年大量離農予測の根拠
第6回:農家の減少と高齢化をどう捉えるか
です。

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