桃2

地方・観光

重労働、高齢化に抗することができない農業の弱点:『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』から(4)

GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』(窪田新之助氏著・015/12/17刊)
この書を紹介しながら、日本の農業のこれからの可能性・
期待について考えるシリーズを始めています。

【はじめに】
第1回:自動車産業を超える農業の可能性、その根拠は?
【第1章 農業を殺した「戦犯」たち】
第2回:大規模稲作農家の離農という矛盾と米価との関係
第3回:減反・米価政策等農業保護政策が招いた稲作農業の経営実態

今回は、第4回です。

------------------------------
 第1章 農業を殺した「戦犯」たち(3)
------------------------------

<実は日本の農地は供給過剰>

桃の花がもうすぐ咲きそうな季節に訪れた山梨市にある農業法人ピーチ専科ヤマシタ
一年半ぶりに会う山下一行代表。
6.5ヘクタールという果樹経営にしては広大な面積の農地で、桃、ブドウ、柿を
作りながら、事務所の敷地内で、二階建ての喫茶店「桃の家カフェ
ラ・ペスカ
も開いている。

そのテラスでしばらく話をするなかで「5年後、この地域の農業はどうなって
いるか」とたずねてみた。(略)
「ちょっと、あの山を見てみて。山際に沿って茶色っぽいところが見えるでし
ょ。あそこには萱か何かが生えてきている。その近くに緑色のところがあるで
しょ。あれは畑。雑草が生えてきて、いよいよ荒れ地になり始めている。要は、
荒れ地が山際から下に向かって来ている。ああなったら、もう畑には戻らない
よ・・・・」

いったん荒れ地になったとしても、重機で掘り起こせば、農地として復元する
ことは物理的に可能である。そもそも山だった場所を切り開いて果樹園にして
きたのだ。やろうと思えば、できなくはない。

だが、山下さんが「もう畑には戻らない」というのには別の意味がある。
それは農地が「供給過剰」になっているので、耕作を続けることは事実上不可
能ということ。
背景にあるのは果物消費量の減少だ。

総務省の「家計調査」(二人以上の世帯)によれば、国民一人当たりの果物の
年間購入数量は、1993年に32.7㎏だったが、2013年には27.0㎏まで下がった。
ピーク時の1975年と比べれば、ほぼ半減である

荒廃しているような園地は基盤が整備されていないため、たとえば園内に車が
通れる道は走っていない。
軽トラックや乗用型の農業機械で乗り入れることはできないので、収穫物を

め込んだコンテナを運び出すのは一苦労だ。
だから山際にあるような農地については、貸したい人は多くても、誰も請け負
いたがらなくなっている。

少し前だったらこんなことはなかった。
どんなに借りたくたって、借りられなかった。
でも、いまは違う。
これまで規模を拡大してきたやる気のある人たちさえも高齢化してしまい、と
うとうやりきれなくなっている。
そうすると、山際のようなやりづらいところから返すんだってさ」

ただ、事態は見かけ以上に進んでいる。
というのも、採算を度外視してまで農業を続けている高齢者が少なからず残っ
ているからだ。
農家は経済性だけでは動かない。

彼らにとって、農業とは職業であるとともに、農村社会の生活規範でもある。
地域の住民の目に自分の農地がどう映っているかを非常に気にする。
だから荒らすのは忍びなく、引き受け手がいなければ、体力がある限り自分で
耕そうとする。

ただ、山下さんの周りでそうやって凌いでいる農家の平均年齢は72歳である。
こうした事情を踏まえ、山下さんは「荒れ地はこれから一気に増えていく」と
みている。
 

荒地
-----------------------------

「家計調査」の詳細をサイトから簡単に見ることができなかったため、グラフ
などで示せないのですが、果物の消費量が減少しているのは残念ですね。
わたしたち夫婦は、果物を毎日欠かさない生活を送っているので、ちょっと信
じがたいです。
(常に2~3種類は、毎日食べている感じ・・・)

稲作用農地ではなく、果樹用園地の荒れ地の増加・・・。
いずれにしても、重労働型の農業の抱える問題に、適地でなければ高齢化は抗
するわけにはいきませんね。

頑張っても最終的には「経済性」が決定要因になるのは致し方ないこと。
種々の技術改善・革命で、作業効率や生産性の向上に取り組むしかない・・・。
打開方法は、限られるかもしれませんが、総合的に手を打っていくことになる
かと思います。

ところで、ピーチ専科ヤマシタ」と桃の家カフェラ・ペスカのHP、是非
ご覧になってください。
素敵なHPです。
(喫茶の方は、冬季は休業ですが・・・)

こうした農業経営のモデルが、全国各地に広がり、農業を成長産業と捉えること
が着実にできるようになってきている・・・。
間違いなく、チャンスは広がってきていると感じます。

桃4

次回、<これから始まる大量離農の実態>に続きます。
-----------------------------

-『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』構成-

はじめに
第1章 農業を殺した「戦犯」たち
第2章 世界5位を誇ったコメの実力
第3章 大進化するコメ農業の可能性
第4章 輸出産業となった日本農業
第5章 ロボットと農業参入者のシナジー
第6章 農業の「多面的機能」で世界に
おわりに 

-----------------------------
【著者・窪田新之助氏プロフィール】
1978年生。明治大学文学部卒。
日本農業新聞入社。以後8年間、年間100日ほど国内外を取材。
農業政策、農業ビジネス、農村社会の現場をレポート。
2012年フリーに。
2014年、米国国務省の「インターナショナル・ビジター・
リーダーシップ・プログラム」に招待され、アメリカの農業の
現場を視察。

WordPressテーマ「Chill (tcd016)」

ピックアップ記事

  1. 太陽光パネルメーカー、住宅市場に注力へ:太陽光発電コスト低減を進め、持続可能な環…
  2. 環境庁・外務省・官邸。リーダーシップとマネジメント不足が招いたパリ協定批准ミス
  3. 家族との団らん、日常と異なる食事、利便性。食と暮らしの多様性を楽しむ:日経<食と…
  4. 輸入米対抗策、低コスト生産の業務米か高級ブランド米か:コメ大競争時代へ備える
  5. 「同一賃金」企業内限定の政府方針で、企業が目指すべき方向:正規・非正規社員の評価…

関連記事

  1. 鳥取待っとる県
  2. 俯瞰2

    地方・観光

    高齢就農者の減少、新規就農者の増加:生産性向上の要件と捉えるべき、就農者構造の変化

    前回、林業および農業分野への新規就業者の増加につながることを期待できる…

  3. 爆1

    地方・観光

    地方創生への挑戦、<農業・観光・地方創生等>政策から考える:首相施政方針演説から(3)

    1月22日の衆参両院の本会議で安倍晋三首相が行った施政方針演説。そ…

  4. 5

    地方・観光

    地方出身学生が減る首都圏の大学。都内名所ツアー、同郷者懇親会、学生寮で確保対策

    日経【地域の現実】という3回シリーズの特集その一つ、2015/…

  5. 上だ太陽光2
  6. 3

    地方・観光

    地方自治を地域経営と見る視点からの自治制度改革:日経<地方自治制度の課題(上)>から 

    現在連載中の「『地方議員の逆襲』から」シリーズで◆2000年地方分…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

worldbanner2
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で
2018年2月
« 11月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  
  1. 1

    地方・観光

    人口集中と所得格差がもたらす地域格差を克服する:<地方再生の行方:地域格差と財政…
  2. 林2

    地方・観光

    人口減少をチャンスと考えて、新しい地域価値基準を創り上げる:『地方創生の正体』か…
  3. __ 3

    地方・観光

    農業法人同様、漁業法人化を進めるべき日本の水産業:日経「日本の水産業の課題」から…
  4. ミライB

    地方・観光

    燃料電池車FCVミライに乗れるミライは来るのか?ふるさと納税で乗れるミライ!?
  5. 太陽石油2

    マーケティング

    顧客囲い込みの手段は選ばず!消費者が困惑する電力自由化、仁義なき競争への対応法
PAGE TOP