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暮らし

負担・受給格差が大きい国民年金・厚生年金制度の矛盾:個人の負担が増える制度改革を先送りする一億総モラトリアム社会

2016/3/3付 中日新聞に
関心がある社会保険制度に関する記事がありましたので、紹介します。

わたしの関心の視点は、要介護者が利用する居住型介護施設の利用料が、一般
的に国民年金受給者では困難であり、厚生年金制度とあまりにも違い過ぎる点
にあります。

当然、そのことは、年金受給の高齢者生活の貧困とも直結しています。
従い、老後格差を少しでも改善・解消するためには、社会保険制度を抜本的に
改定すべきと考えているからです。

中日新聞の記事は
<知らなくていいの? 税の仕組み>という特集欄。
タイトルは「社会保険料にも不公平感」というもので以下の内容です。

記事中の図表も、内容を理解するために不可欠でしたので、そのまま転載させ
て頂きました。

-----------------------------------

 「税制を見直して格差是正につなげよう」と呼びかけている学者や税理士
らが、「公的年金や健康保険などの社会保障の仕組みも合わせて見直すべ
きだ」と提言している。

収入が多い人と、ワーキングプアともいわれる低収入の労働者の税・社会
保険料の負担額の実例から、こうした意見について考えてみた。

中部地方の有名企業に2年前まで勤めていた50代男性のAさんは現在、関連
会社に勤務する。
「給料がほぼ半減した」とぼやくが、生活に困っている様子はない。
2年前の給与明細などを見せてもらうと、年収は約1400万円。
典型的な高給取りだ。

一方、「いつもぎりぎりの生活」と訴えるのはBさん。
中部地方の40代派遣社員男性で、一人暮らし。
厚生年金や雇用保険などには、勤務先との雇用契約の関係で入っておらず、
国民年金や国民健康保険(国保)などの保険料は自分で手続きして納めて
いる。
「仕事が減ってきた感じもある」というので、これまでよりやや少ない
給与月額15万円(所得税額含む)として、税や社会保険料の月額を計算し、
Aさんと比べてみた。

Bさんの項目をみると、国民年金や国保がともに1万円を超えている。
アパート代は約3400円。
給与から税、社会保険料、アパート代を差し引いた残りの生活費は8万円
を下回る。

Bさんの国民年金、国保の保険料の額はともに、Aさんの厚生年金や健保
を大きく下回る。
しかし、税や社会保険料の種類ごとにBさんの納付額がAさんの何%に
当たるかをみると、所得税が8%なのに対して年金は23%で健保が45%。
年金や健保の負担感が強い。

学者や税理士らが昨年2月に設立した民間税制調査会は、昨年12月に独自
の税制改革大綱を公表。
その策定作業で、問題点としてしばしば指摘されたのが国民年金保険料の
定額制だ。
会社員のAさんは厚生年金と国民年金に加入しているので、図のように
年金の納付額は異なるが「国民年金加入者は、ワーキングプアでも有名
プロ野球選手でも、月額15,590円で同額。これはおかしい」というのが、
民間税調のメンバーの共通認識だ。

国民健康保険料も定額部分の比率が比較的高い
大綱では、社会保障制度の第一の問題として、低収入なほど社会保険料の
負担感が強まることを指摘した。

公的年金については「高額所得者の厚生年金保険料を上げては」「高額所
得者の年金を減らしては」といった意見もある。
厚生年金保険料は、定額制ではなく定率制
「給与月額○○~△△円は標準報酬月額(保険料を算定する基礎となる金額
の一つ)○△円」という形で設定し、標準報酬月額に保険料率を掛けて保
険料を計算する。
なので、収入が多いほど多く保険料を納める。
ただ、現行制度では標準報酬月額の上限が62万円のため、給与が65万円の
人と200万円の人の保険料は同額だ。

2012年に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」では、標準報酬
月額の見直しが検討事項とされたが、いまも実現していない。
高額所得者の老齢基礎年金額を減らす措置も、年金機能強化法案に盛り込
まれたが、国会審議の過程で関連条文が削除され、先送りされた。

有識者たちは「国民が税や社会保障に無関心だと、政治は動かない」と口
をそろえる。
消費税だけでなく、税や社会保障の仕組みにも関心を持つことが、国民に
今、求められている。

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「国民が税や社会保障に無関心だと、政治は動かない」
「税や社会保障の仕組みにも関心を持つことが、国民に今、求められている。」

こう記事では結んでいるのですが、実際にこの問題を個人が取り上げるとする
と、大半が、自分の負担額が増えることになるはずです。
その負担は、本質的には、将来の年金給付(受給する年金額)が増えること、
あるいは診療医療費負担が減るなど、長い目で見ればメリットになるはずなの
ですが、いま、目の前の負担が増えるとなると、結局「反対」ということにな
る・・・。

そのように取り上げることは、客観的で公正であるかもしれませんが、抜本的
な制度改革の声を国民サイドから高め、法制化にもっていくなどというのは、
どだいムリ、というものです。

そうした改革は、残念ですが政治・行政主導でいくしかない・・・。
一億総モラトリアム化した社会では、この問題はそうするしか恐らくないので
は、と考えます。

自営業者の多くは、国民年金・国保加入者。
それなりの収入を得ている人が多いはずですが、前述の固定低額保険料の納付
で済む。
そのうちの何割かの人は、事業収入から財産を形成し、年金をアテにしなくて
もいい生活を送ることができるでしょう・・・。

私の場合で恐縮ですが、社長=社員のひとり会社であっても株式会社化し社会
保険に加入し、法定福利費も負担してきています。

定額制から定率制への移行は、絶対に必要です。
上限の見直しを含む累進制の見直しも同様です。

社会保障財政の問題は、こうした社会保険制度の抜本的な見直しで、100%改
善・改革できるわけではありません。
しかし、矛盾とハッキリわかる課題に、反対があっても踏み込まない限り、財
政のみならず、暮らしそのものも将来に向けて悪化する一方であることが目に
見えています。

先送りのツケは、膨れ上がるばかり・・・。
政治がポピュリズム化してしまえば、政治家の仕事など価値がありません。
その存在意義がありません。

介護士の賃金を上げる法案を、野党5党が共同で提案した、と一昨日報じられ
ました。
今回の社会保険制度なども、与野党から改定案が積極的に提案されるべき重要
なテーマです。
しかし、どちらにしても国民の多くが賛成しない課題。

安保改正、憲法改正などそのテーマなのですが、個々の負担が増える社会保険
制度改正などは、それとは本質的に異なる、身近なテーマだけに、これから議
論が少しでも活発化することを、まずは期待したいと思っています。

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