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地方・観光

国、マスコミ、学者を当てにせず自治体独自のあり方を探る:『地方創生の正体』から(6)

地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか
山下祐介氏・金井利之氏共著・2015/10/10刊)を紹介し、地方創生・
地方再生問題を基本から考えるシリーズ。

「第1章 「国-自治体-市民」の構造を問いなおす」
前文は、省略し、金井利之氏が2015年5月に行った、全国の市町村長
有志に向けての講演から。
第1回:地方自治のあり方を基本から考えてみる機会に!
第2回:「地方創生」という山を登れば、何が見える、何がある?
第3回:国が掲げる地方創生は、人口増減で勝ち負けが決まる相撲土俵?
第4回:愚の骨頂のプレミアム付商品券は国の無能の証!ばら撒き政策を拒否する地方自治への道
第5回:真の自治・自主・自立のために国とどう付き合うか?

今回は第6回です。

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1.「地方創生」で自治体は困り果てる(6)

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 <幸せは、国から歩いてこない>

今までも、意識ある自治体は自分の頭で考えていました。
 そういうところは、地域おこしのプランや総合戦略をたった1年で作れると
思っていないし、国に褒められたいとも思っていないのです。
でも、あえて国政為政者に逆らうと、批判されるから黙っているものです。
自分たちが考えていることを、気易く国の為政者に喋っては駄目です。
 政治家や官僚の視察も適当にあしらうしかない。
 同じように、学者やマスコミの調査や取材に対しても、本当の姿などは見せ
てはいけませんし、本音を喋ってもいけません。

 私としては、国とは適当に付き合うのが一番いいと思っています。
 政権は2014年12月の総選挙と2015年4月の統一地方選挙さえ乗り越えられれ
ばよかったので、「地方創生」は選挙対策として、いわば御用済みです。

 あとは国がKPI付きの交付金をばら撒い、自治体を困らせます。
 自分たちの無策を棚に上げ、「お前たち自治体のアイディアは出来が悪い」
「頑張って成功したところしか応援しない」などと言うのです。
 そういう人たちとは関わらないのが一番ですが、それを態度に出すと叱責さ
れるから、関わっているふりをするしかありません。
 表向きには「我が町ではこんあことを考えています」と言うけれども、後ろ
を向いて舌をペロッと出す。
 これが一番いいのではないでしょうか。

<国の後出しじゃんけん>

国の各省官僚も、「地方創生」をどう自治体に対して使うかは、具体的に
は、まだ考えていないかもしれません。
 ただし、将来的には、自治体や地域社会が衰退していくときには、自治体
や地域社会は集中的に非難されるでしょう。
 たとえばマスコミが取材に来て、「この町は「地方創生」でアイディアを
出さなかったから、今まさに滅びようとしています。でもそれは自己責任だ
から、自業自得で仕方がないのです」あるいは「このようにならないように
しましょう」と報道されるでしょう。

 北海道の夕張市では1980年代に、炭鉱の閉山によって人口減少は避けられ
ないということで、「炭鉱から観光へ」とシフトする政策を打ちました。
 国の為政者は当時、夕張の政策を大絶賛したのですが、資金繰りが悪化し
て立ち行かなくなると、てのひらを返したように冷たくなりました。
 そんな例はヤマほどあります。

 「地方創生」の行く先は危ういのです。
 頑張っている自治体でも、たとえ今褒められていても、後で梯子を外され
る恐れがあるのです。
 「持ち上げておいて落とす」というのは、マスコミの常套手段ですが、国
も同じ。学者やコンサルタントも同様です。
 最初から「地方創生」の土俵に上がらなければ、不必要に落とされること
はないのです。

sb風力
※この項、次回に続きます。

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なんだか落語か漫才のような話になってしまっていますが、「舌ペロ」を自治
体が住民と「口裏合わせ」をしておくのは、なかなか難しいですね・・・。
(講演なので、そんな口調に・・・)

地域における広報・コミュニケーションの一環として、国の視察やマスコミの
取材を利用することの方が多いでしょうから、適当にあしらって、報道も適用に
流しておく、というのは、かなりのというか、ものすごいというか、「したたか
な」地域・自治体でないとできない・・・。
言わんとすることは分かりますが・・・。

「持ち上げておいて落とす」
この感覚はよく分かります。
絶対にいいことばかり続くわけがない・・・。
必ず下り坂を降りることや、局面が反転することは、すべて想定内としておく
必要がある・・・。
だからこそ、KPIで評価することに矛盾が当初からあるわけです。
民間企業の業績評価や企業収益に基づく株主配当方式とはまったく違う行政と
いう事業なのですから・・・。

ばら撒きで、有権者の投票を誘導する政治とは、地方自治は本質的に違うはず。
それにおもねることは、自治の権利を諦め、放棄することを意味することにな
りかねない・・・。
と口で評論家風、学者風にいうのは簡単・・・。

学者である金井氏に、果たして秘策はあるのでしょうか・・・。

031

次回、<国の後出しじゃんけん> の残りに続きます。

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《本シリーズ開始の動機と目的》
昨年、そのタイトルに惹かれて読んだ
地方消滅の罠: 「増田レポート」と人口減少社会の正体
(山下祐介氏著・2014/12/10刊)は、いい著書とは思いましたが、その独善・
独断性・ツッパリ感に多少の違和感があり、このブログでは紹介せずじまいに
なっていました。
もともと、増田レポートと一連の『地方消滅』や『東京消滅』論などには
かなりの違和感を持ち、それに批判的な書に、より強い関心を持っています。

その後、『ローカル志向の時代』(松永桂子さん著・2015/11/20刊)を紹
介するシリーズを始め、現在も継続中。
しかし、最近はちょっと物足りなさを感じたので
地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか
山下祐介氏・金井利之氏共著・2015/10/10刊)へ。

ミクロの地方再生の成功事例・失敗事例をかいつまんでみていくことにも
意義・意味はあると思います。
が、本書のように、マクロから見ていく必要もあると感じてのことです。

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新刊 『地方議員の逆襲』(佐々木信夫氏著・2016/3/16刊)を入手しました。
『地方創生の正体』もその文末に参考図書の1冊に挙げられていました。
いずれ読んでみて、ご報告をと思います。

 

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