住民届

地方・観光

二重住民票制度が、人口減少社会の地方創生を推し進める:『地方創生の正体』から(11)

地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか
山下祐介氏・金井利之氏共著・2015/10/10刊)を紹介し、地方創生・
地方再生問題を基本から考えるシリーズ。


「第1章 「国-自治体-市民」の構造を問いなおす」
前文は、省略し、金井利之氏が2015年5月に行った、全国の市町村長
有志に向けての講演から。
第1回:地方自治のあり方を基本から考えてみる機会に!
第2回:「地方創生」という山を登れば、何が見える、何がある?
第3回:国が掲げる地方創生は、人口増減で勝ち負けが決まる相撲土俵?
第4回:愚の骨頂のプレミアム付商品券は国の無能の証!ばら撒き政策を拒否する地方自治への道
第5回:真の自治・自主・自立のために国とどう付き合うか?
第6回:国、マスコミ、学者を当てにせず自治体独自のあり方を探る
第7回:数値責任をめぐる国と地方自治体との関係のあり方
第8回:地方自治体が国の「ヤレヤレ詐欺」に遭わないために
第9回:地方創生と党利党略・政局との関係から考えるべき地方政治・行政のあり方
第10回:人口減少をチャンスと考えて、新しい地域価値基準を創り上げる

今回は第11回です。

-----------------------------
1.「地方創生」で自治体は困り果てる(11)

-----------------------------

人間の数え方を変える>①

「地方創生」の表向きの目的は人口減少の抑制ですが、国の「地方創生」の総合
戦略には、実効的な少子化対策は含まれていません。
 また、仮に今、直ちに有効な少子化対策がなされて、合計特殊出生率がV字回復
しても、現に子ども・若者世代自体がすでに減ってしまったのですから、人口総数
は確実に減ります。
 したがって、国が仕掛けた「地方創生」という土俵に立つ限り、自治体はいやお
うなしに負ける戦いを強いられます。

 しかし、自治体首長は政治家である以上、負ける戦をすべきではありません。
「地方創生」において、人口を増やせば勝ちとみなされるのであれば、各自治体は
人口を増やしていくしかないのです。
 1億2千万人を、それぞれ1回ずつカウントすれば1億2千万人になりますが、
人口が8千万人になってもそれぞれ2回ずつカウントしさえすれば1億6千万人
になります。
 こうなれば、すべての自治体にとって、勝ち戦に持ち込めるのです。
 もちろん、国はそんなことを認めないでしょうけれど、それは放っておきましょ
う。
 国が一方的に決めた土俵に、上がらなければならない義務は、自治体にはないの
です。

 原子力公害(核害)避難のみならず、「地方創生」でも議論になっている二重住
民票(複数の住所地の市区町村に同じ地位の住民として登録する仕組み)の問題は、
これに関係しています。
 夜間・定住人口だけでなく、昼間・交流人口も住民とみなせばよいのです。
一人の人が数カ所に行けば、それだけ多くの地域で活動する人口が増えます。
 そういう戦略を取れば、自治体全員が勝てる戦いに持ち込むことが可能です。
 現状に「地方創生」の土俵のままでは、自治体全員は負けないにせよ、全体とし
て見れば、自治体は負けるところが多数に上ってしまうでしょう。
 負ける戦いを勝てる戦いにするためには、自治体のほうで、人間の数え方を変え
るしかないのです。
 これは自治体側からの土俵づくりとして、重要なことだと思います。

 二重住民票の仕組みは、あくまで各自治体で、自生的につくらなければ駄目です。
 国はとにかく、人口減少問題を地方圏の自治体に転嫁したいのだから、そのよう
な制度を認める必要はありません。
それを認めれば、すべての自治体が勝てる戦いになってしまいます。
 すべての自治体の交流人口が増えたとしても、日本全体の人口減少は生じるので
すから、国だけが負け組になってしまいます。
 もちろん、国も勝ち組になりたいならば、外国との交流人口を増やせばよいだけ
の話なので、本当は国にとっても問題ではないのです。
 実際、外国から国内に来るインバウンドの外国人観光客を増やそうとしています
し、アベノミクス・円安効果があって、そうなっています。
 単に「お金を落としてもらう」という発想だけでなく、人口としてカウントすれ
ば、それでよいのです。

※次回、この項の残りとなります。

マイナンバー
-------------------------------

別荘を持っていれば、この二重住民票の制度には、合理性があります。
地方自治体が積極的に進めようとしている地方移住政策も、今住むところから
いきなり住民票を移動してしまうのでなく、お試し移住や季節移住のような生活
を行うに当たって、副住民票のようなものが発行・活用されるのは、「いいね!」
です。

仕事での単身赴任生活地。
頻繁に訪れる観光地やお気に入りの土地。
反対に、以前暮らしていたが、引っ越しと同時に住民票を移動。
家族やお墓が残る故郷に、いずれは戻りたい、機会があるたびに帰省している。

そうした場合の二重住民登録制度。
生活基盤が複数、マルチで、なんとなくいいです!

ふるさと納税者もその自治体地域の一員。
子どもたちにも、常に二つの故郷がある。

これからの生き方、暮らし方を証明するシステムであり、それぞれの土地・地域・
自治体の拠って立つ意義・価値がそこに表現されることを意味します。

問題は、その発想やシステム化が国主導となると、国の手柄とされ、やはり国の
独り勝ちシステムとなってしまう可能性が高まること。

では、自治体が個々に取り組むことも、コスト的には厳しいと思うのですが、
筆者はどう考えるのでしょうか。

※次回、<人間の数え方を変える> の残り部分を見ます

生態1
-------------------------------

《本シリーズ開始の動機と目的》
昨年、そのタイトルに惹かれて読んだ
地方消滅の罠: 「増田レポート」と人口減少社会の正体
(山下祐介氏著・2014/12/10刊)は、いい著書とは思いましたが、その独善・
独断性・ツッパリ感に多少の違和感があり、このブログでは紹介せずじまいに
なっていました。
もともと、増田レポートと一連の『地方消滅』や『東京消滅』論などには
かなりの違和感を持ち、それに批判的な書に、より強い関心を持っています。

その後、『ローカル志向の時代』(松永桂子さん著・2015/11/20刊)を紹
介するシリーズを始め、現在も継続中。
しかし、最近はちょっと物足りなさを感じたので
地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか
山下祐介氏・金井利之氏共著・2015/10/10刊)へ。

ミクロの地方再生の成功事例・失敗事例をかいつまんでみていくことにも
意義・意味はあると思います。
が、本書のように、マクロから見ていく必要もあると感じてのことです。

----------------------------

地方創生・再生を語る時に、地方自治体・地方行政・地方政治のあり方も変革
していく必要がある。
最近、その思いが強くなってきています。

地方議員の逆襲』(佐々木信夫氏著・2016/3/16刊)を読み終えました。
そのシリーズ、間もなく始めます。

 

WordPressテーマ「Chill (tcd016)」

ピックアップ記事

  1. 個人地方税・法人住民税を安定化する基盤作り:日経「自治体 迫り来る危機」より(2…
  2. 出世魚のブリ、世界進出狙う。サーモンに勝つ!:日経<養殖新時代>から(2)
  3. 荒廃農地、耕作放棄地、不耕作地、耕作不能地。どれも規制緩和・撤廃と創意工夫で再生…
  4. 農水省「農業女子プロジェクト」が広げる事業と人との連携、女性の農業経営への参画
  5. 国が掲げる地方創生は、人口増減で勝ち負けが決まる相撲土俵?:『地方創生の正体』か…

関連記事

  1. 4

    地方・観光

    国内農業縮小は投資不足に因?:<経済教室>TPPと日本の農業(中)から

    2015年11月19日から、日経の<経済教室>で「TPPと日本の農…

  2. %e3%82%a8%e3%83%8d%ef%bc%91

    エネルギー問題

    「仮想発電所」システム化で再生可能エネルギー社会現実化へ

    最近、またまた書いた、エネルギー・電力行政のミスについてのブログ。…

  3. 野菜セット

    地方・観光

    世代継承・技術継承で農業の明日へ:日経「農業を解き放て」から(4)

    2016/1/12から掲載の日本経済新聞のシリーズ【迫真】。「農業…

  4. いちご狩り1
  5. 都燃料電池バス1
  6. 33

    少子高齢化

    超高齢社会の要請としての社会保障と社会の責務:『人口と日本経済』<人口減少と日本経済より>(2)

    先日、今年の推計で、年間の出生数が初めて100万人を切ると報じられまし…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

worldbanner2
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で
2018年2月
« 11月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  
  1. 0-2

    地方・観光

    日本遺産(14) 尾道市(広島県):尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市
  2. 1

    エネルギー問題

    アフリカに広がる再生可能エネルギー発電:現地太陽光発電・風力発電事業で後れを取る…
  3. 5

    農業

    若い世代の新規就農者増加傾向。農林中金が最大60万円助成金
  4. 014

    人口減少

    人口減少に無関係の労働生産性向上による経済成長をめざす:『人口と日本経済』<人口…
  5. トヨタ1

    地球温暖化

    全トヨタ自動車グループ各社が参画・貢献すべき、CO2ゼロ及び水素社会の実現
PAGE TOP