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地方

国と地方自治体との関係の基本を知る:『地方創生の正体』から(15)

地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか
山下祐介氏・金井利之氏共著・2015/10/10刊)を紹介し、地方創生・
地方再生問題を基本から考えるシリーズ。

「第4章 市民にとって、国家にとって自治体とは何か」
第1回(通算第13回)住民・国民としての私的個人と自治体・行政・国との関係
第2回(通算第14回)大災害被災時に考えさせられる住民と自治体との関係の本質

今回は、第3回(通算第15回)です。

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1.多元的バランス構造の意義(3)

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権力は分けておく

(山下)
そんな自治体がなぜ、「自治体」という言葉を冠しているのか。
 自治体は建前としては国とは対等です。
 しかし実際にには国の末端としてしか機能していない。
 行政学では、この状況をどう説明するのでしょうか。

(金井)
  一応の説明は、たとえば、以下のようなものです。
「地方自治はあくまで主権国家に由来する。統治機構は主権国家におい

主権者である国民の意向によってつくられるが、地方自治制度もその一つで
ある。
この善し悪しを判断するのは、究極的には国民である。

しかし、究極の国民は実動しないので、憲法の定めた期間が決める。
日本の場合には、連邦制ではなく単一主権制なので、国会、内閣という国
の機関が大枠を決める。
ただし、そのときには、「地方自治の本音」を守らなくてはならないので、
国会や内閣にフリーハンドがあるわけではない。
その意味で、地方自治制度は保障されている。
しかし、個々の自治体の存立は保障されているわけではない」という具合
です。

「ナショナルガバメント」(全国政府)という国だけだと、国は地域の実
情に疎いとか、
地域住民が国の方針に対して投げ遣りに反応するとか、機能
不全に陥るため、
地方自治を保障します。
 国民国家を円滑に機能させるために、自治体を置くわけです。
 これが日本国憲法のロジックです。

 統治機構を中央集権的に突き詰めると、国民国家のもとで主権者である国
民が国をつくり、その出先機関として地方団体を置くやり方もあり得ます。
 これはルソー=ジャコバン型の集権国家です。
 しかし実際にそれをやると「総身に知恵が回りかね」ということで機能不
全に陥りますので、あらかじめいくつかの自治体という単位に分けておきま
す。
 ある程度の人口規模の国家で、地方自治のない国家は現実的ではありませ
ん。
 地方自治を保障しておかなければ自治体は単なる国の出先機関になって
まい、国の言いなりになって、中長期的に見れば、ろくでもない方向に暴

します。

 中央集権で一人の人間が独裁すれば、愚かな政策に走ることは目に見えて
いるでしょう。
 よって、権力は分けて必要があるのです。

 その際、自治の単位は何層かあったほうがいいわけです。
 国と市町村だけの二層制だと、対応し切れない大きな隔絶が生じる可能性
があるため、その間に中間団体・広域自治体としての県を置くことが普通で
す。
空間的スケールを徐々に調整することが現実的だからです。
 四層・五層と、もっと、多層化している国家もあります。

 しかし、国は自治体に「俺はお前の上司なのだから、言うことを聞け」と
命じたがります。
 自治体がめいめい勝手なことをすれば、国の為政者としては迷惑するから、
そういう自治体の主体的な動きは極力抑えたい、という衝動もあるでしょう。
 国と自治体の関係には、そういった権力闘争があるわけです。

 国の為政者にとって最も都合が良いのは、住民や自治体が自発的に国の意
向を汲んでくれることです。
 すべて上から命令するのではなく、下から国の意向に沿ってもらい、徐々
に盛り上げていくことがありがたいのです。
 まあ、虫のいい話ですが。
 その場合にも、国民や自治体が、ある程度の自立性を持っていた方が望ま
しいのです。

 けれども、自治体に自立性があれば、国の意向に沿わないアイデアが、住
民や自治体から出てくる可能性があります。
 その場合には「国益に反する」とか難癖をつけて、拒否したがります。
 確かに、すべての住民や自治体の意向を、国がそのままの形では受け止め
ることはでいないでしょう。
 しかし、それでは住民のやる気・エネルギーや創意工夫はでてきません。
 せめぎあいの中で、国と自治体の権力分立のより良いバランスが模索され
ます。
 国家全体としては、さまざまな意見があったほうが、結果的にはうまくい
くでしょう。 

政1
※次項に続きます。

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さらっと読んで善しとすればいいのか、それともより掘り下げて考えるべ
きか・・・。
あまり深く考える必要はなく、そのまま受け止めればいいいのかな、とい
う感じが強いです。

地方創生と国との関係については、下記にリスト化したこの「『地方創生
の正体』から」シリーズの中で触れてきました。

根本的には、金を握っているのが国であるため、無策の国の思い付きや無
理難題に地方が振り回されているという感じです。

とにかく、使途自由の金をもらってしまえばいいのですが、縦割り行政が
こりこりに固まったこの国では、フリーの金が地方に配分されるわけがあり
ません。
自由なのは、地方〇〇税という名が付いた直接税のみ。
その使い方をもっと研究すべきではないかと考えたりもします。

あとは、何かと問題になったり、話題になったりしている「ふるさと納税」
ですか。
でも、これ、基本的には、地元の人が寄付的に納税してくれることの方が
望ましいありかたではないかと思うのですが・・・。
そして、加えて、「ふるさと納税者」を二重住民登録する形に発展させる。

フリーハンドの余地・方法を少しずつ増やし、広げていく・・・。
そうしたモデルを増やし、参考にする自治体が増え、ネットワーク化する。

災害援助の自治体間の相互協力事例が、被災のたびに増え、ノウハウ化さ
れていくことは心強いですが、それに加えて、こうした地方自治の主体性・
主権に基づく行政モデル、事業モデル、それらの自治体間ネットワークもこ
れからの時代、期待したいと思います。

政2

次回、<国家性悪説> に続きます。

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【『地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか』ブログラインアップ】
「第1章 「国-自治体-市民」の構造を問いなおす」
第1回:地方自治のあり方を基本から考えてみる機会に!
第2回:「地方創生」という山を登れば、何が見える、何がある?
第3回:国が掲げる地方創生は、人口増減で勝ち負けが決まる相撲土俵?
第4回:愚の骨頂のプレミアム付商品券は国の無能の証!ばら撒き政策を拒否する地方自治への道
第5回:真の自治・自主・自立のために国とどう付き合うか?
第6回:国、マスコミ、学者を当てにせず自治体独自のあり方を探る
第7回:数値責任をめぐる国と地方自治体との関係のあり方
第8回:地方自治体が国の「ヤレヤレ詐欺」に遭わないために
第9回:地方創生と党利党略・政局との関係から考えるべき地方政治・行政のあり方
第10回:人口減少をチャンスと考えて、新しい地域価値基準を創り上げる
第11回:二重住民票制度が、人口減少社会の地方創生を推し進める
第12回:自治体主導で進める「ふるさと住民票」による二重住民票制と地方創生

Réseau social 3D couleurs
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《本シリーズの動機と目的》
もともと、増田レポートと一連の『地方消滅』や『東京消滅』論などには
かなりの違和感を持ち、それに批判的な書に、より強い関心を持っています。
昨年、そのタイトルに惹かれて読んだ
地方消滅の罠: 「増田レポート」と人口減少社会の正体
(山下祐介氏著・2014/12/10刊)は、いい著書とは思いましたが、その独善・
独断性・ツッパリ感に多少の違和感があり、このブログでは紹介せずじまいに
なっていました。

その後、『ローカル志向の時代』(松永桂子さん著・2015/11/20刊)を読み、
紹介するシリーズを開始。

そして、この『地方創生の正体: なぜ地域政策は失敗するのか
山下祐介氏・金井利之氏共著・2015/10/10刊)に至りました。
ミクロの地方再生の成功事例・失敗事例をかいつまんでみていくことにも
意義・意味はあると思いますが、本書のように、マクロから見ていく必要
もあると感じてのことです。

そうするうち、地方創生・再生を語る時に、地方自治体・地方行政・地方政治
のあり方も変革していく必要があるという思いが強くなり、
地方議員の逆襲』(佐々木信夫氏著・2016/3/16刊)シリーズを並行して始
めています。

 

 

 

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