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地方・観光

教科書の世界に止まる民主主義、地方民主主義:『地方議員の逆襲』から(5)

新刊『地方議員の逆襲』(佐々木信夫氏著・2016/3/20刊)
を参考にしながら、地方創生と地方自治・地方行政とを関連付け、合わせ
て国と地方の<政治>について考えるシリーズです。

第1回:保育・介護など身近な問題を地方自治・地方創生との関連で考えていく
第2回:存在感が薄い地方議会と地方議員の職務怠慢
第3回:全国1788自治体の地方議会議員総数3万3438名の内、女性議員1割の現実
第4回:ボーナスが出る地方議員報酬。大阪府の議員定数削減・報酬引き下げをモデルとすべき

今回は、第5回です

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 はしがき(5)
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 各議会の改革勢力の中で、法律上の定数、上限定数といった制限がなくなっ
たこともあり、議員定数を見直す機運がある。
明治半ばにプロシア(ドイツ)の議員定数を見本として始まったのが、日本
の地方議員の定数。
ようやく、地域に何名の議員が必要かといった、「そもそも論」から見直す
環境が生まれている。
法律上の定数制限はなくなった。

 ただ、議会任せだと「集団防衛本能」が働き、ほんの少しの削減でお茶を濁
す傾向にある。
市民に聞いて議員定数の議論を始める時ではないか。
議会のルールを定めた議会基本条例をつくったり、年4回だった会期制を通
年会期制に切り替えたり、会派やグループで研究会や研修、調査活動を活発に
するなど地道な改革努力も見える。
その点、従来の「動かざること山の如し」という地方議会に対する見方は当
たらない。
 しかし、その議会改革が地方民主主義の再生に向けた、大きな流れになって
いるかと言えば、疑わしい。

 一方で、議員のなり手が極端に減ってきている。
2015年春の統一地方選は投票率の大幅低下と無投票当選率の増大が特徴だっ
た。
議員選挙に限ってみると、無投票当選率は町村で21.8%、市で3.6%、政令市
で1.7%とこれまでで最も高い。
県議選の1人区などは3割近くが無投票当選。
これは首長選にも波及し、町村長選挙で4割強。
その後さみだれ的に行われている市長選をみても、3割が無投票である。
ついに知事選までそれが現れた。
2015年は岩手県と高知県の知事選が無投票だった。

 これに選挙があっても、事実上、選挙前から当選者が分かるような無風選挙を
加えると、半数近くの地方選が無投票に近い状態。
道府県議選の投票率も史上最低の45%で、有権者の半数以上が地方選に足を運
んでいない。
自分の住んでいる選挙区の投票率の低さすら知らない市民も多い。
いま日本の地方民主主義は草の根から枯れてきている。  

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 果たして、無投票当選というのは”当選”なのか。
 ゼロ票議員、ゼロ票議会の出現は、代表制民主主義における政治的妥当性を失
わせる。
 彼(彼女)らは仮面をつけた「みなし代表」に過ぎない。
 選挙の洗礼なき無投票当選に政治的妥当性はない。
 便宜的に認めた無投票当選という制度は廃止したらどうか。
 今後人口減少に伴い。よりこの傾向が強まるとすれば、事実上、自治体官僚の
支配する自治体へと変容する。
 住民の住民による住民のための政治を、自ら手放すことになってしまう。

 公共領域が拡大し、税負担が年々重くなる日本。
 その約3分の2を占めるのが自治体の活動だ。
 そこで議会制民主主義の空洞化が進むなら、この国はどこに行くか分からない。

 すでに行政を国に任せればよかった時代は終わっている。
 多くは地方の自己決定、自己責任に委ねられている。
 だが、地方に任せればうまく行く、その道筋はまだ見えていない。
 地方政治の出番なのにパワーが見えない。
 納税者に近いところでこそ一番問題が見えるはず。
 そこに政治行政を任せるのが民主主義の基本であり、地方分権の思想だが、未
だそれは教科書の世界に止まる。

 地方政治に対する無関心の広まり、議員のなり手の枯渇、議席の固定、既得権
化など、日本の地方民主主義は危機に立つ。
 地方政治をめぐり改革すべき課題は山ほどある。
 この課題について様々な角度から分析し提言する中で、解決の方途を見出した
い。
 本書がこの国のあり方について、地域レベル、地方議員という窓を通して考え
る”よすが”となれば幸いである。

※以上で「はしがき」が終わりです。

010
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5回に分けて紹介しました「はしがき」に、本書刊行の背景・狙いがコンパクト
に示されていました。

次回から具体的な課題を体系化した各章に入りますが、以下のような章立てに
なっています。

第1章 なぜ、地方議員が問題なのか 
第2章 地方民主主義と地方議員
第3章 地方議員の待遇
第4章 地方議員と選挙
第5章 地方議会、地方議員は変われるか
第6章 地方議員の政策形成入門
第7章「大阪都構想」と地方民主主義
終 章 地方からこの国を新しくする

次回以降、どのように当シリーズを構成していくか、今回の文章を読みながら、
入力しながら思い浮かんだことを再生し、考えています。

極力、原文を忠実に引用紹介したうえで、自分の意見を述べていく形式を取る
のが私の方法。
しかし、図書の全文を順に取り上げていくととてつもない時間と日数が必要に
なるので、一部の章をカットしたり、順番を入れ替えることもあります。

消費増税見送り決定を受けて、話題になっていました衆参同日選は、なしになり
ました。
しかし、7月の参院選は当然定例のこと。
参議院の存在意義もその都度考えることになりますが、この機会に、地方自治、
地方選挙との関係なども重ね合わせる機会にしたいと思っています。

長い引用になりましたので、そこから感じたことは今回は控えることにしたい
と思いますが、ただ一つ、印象深かったところは
「(地方に)政治行政を任せるのが民主主義の基本であり、地方分権の思想だが、
だそれは教科書の世界に止まる。」
という部分です。

私は、「民主主義」自体が、未だ実験の途中であり、ある意味、教科書の世界に
とどまっているモノ、コト、と考えているからです。

このシリーズでは、脈絡が理解しにくくなるかもしれませんが、各章から特に
見ておきたいテーマの部分を都度取り上げて個々に見ていくスタイルを取ること
になりそうです。

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当ブログのカテゴリーの一つが<地方>。
地方創生・地方再生問題を多面的に捉えて、その在り方を考えていくもの。

これまで『ローカル志向の時代』『地方創生の正体』の2冊を参考にして
『ローカル志向の時代』から
『地方創生の正体』から
の2つのシリーズを投稿してきています。

ただ、これまで地方創生・再生問題を考えるとき、必ず、国の政治と地方
自治体の行政の在り方と関連させて考えることが不可欠であることを確認
させられています。

加えて、兄弟ブログとして運営する<世代通信.net>でテーマとしている
保育や介護問題等が、同様に、国の政治や地方自治体行政と関係付けて
考えられるべきことを、増々認識させられています。

WordPressテーマ「Chill (tcd016)」

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