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政治・社会経済

無限衝動の成長願望循環をどう断ち切り、脱成長・脱原発をめざすのか?:『さらば、資本主義』から(4)

今年(2016年)6月に<資本主義>と名がつく3冊の新書を読みました。
◆『資本主義の終焉と歴史の危機』(2014/3/14刊)
◆『ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来』(2015/6/20刊)
◆『さらば、資本主義』(2015/10/16刊)

どちらも、現在の資本主義が限界を呈し、新たなフェーズに入るべき時代にある
という認識を持ち、これからどのような社会を目指すべきか、を問いかける内容と
なっています。
そこでまず『さらば、資本主義』(佐伯啓思氏著)からシリーズ化。

【まえがき】
第1回:資本主義の終焉、さらば資本主義、ポスト資本主義。これからどうなる資本主義
第1章 今こそ、脱原発の意味を問う】
第2回:「原発」というテクノロジーの意味を考えるべき
第3回:二元論への集約リスクを、現状の世界情勢に見る。解決はポケモンGOに頼みますか

今回は第4回です。

--------------------------
 第1章 今こそ、脱原発の意味を問う(3)
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<脱原発は気楽な選択なのか?>②

(中略)

 東日本大震災ののちしばらく、東京へ出かけるとどのビルも明かりを消し、街も
ほの暗く、あまり人通りもないという状態が出現していました。
 東京在住者はいざ知らず、私など、この暗さにむしろほっとしたぐらいでした。
 何か妙な落ち着きとなつかしさを感じたものでした。

 それでもヨーロッパ諸都市に比べれば、まだ明るいぐらいです。
 いや日本がともかく「明るさ」を求めたのです。
 50年代、60年代はともかく、70年代ともなれば今日のヨーロッパ諸都市よりも
っと明るかったのではないでしょうか。

 ところが、「成長」という価値は、ただGDPが大きくなるというだけでなく、
「より高く」「より明るく」「より大きく」「より早く」「より便利に」「より安
く」を目指すもので、こうして視覚的にも感覚的にも「成長」が実感できなければ
ならなかったのです。

 これだけの便利さと快適さをさらに発展させるというなら、原発をなくすことは
できないでしょう。
 今日のこの便利な生活、蓄積された富、つまり高度な産業社会は、世界的に見れ
ば「原発」の上に乗っていることはまずは認めなければなりません

 だから、われわれがいっそうの「成長」を求めれば、それを支えるには原発を拒
む理由はないのです。
 いや、近代生活は、「原発」に限らず、ともかく新規の技術を開発し、その技術
によってこの「生」を支えてきたのです

 かつて漱石が述べたように、人は自らのエネルギーの消耗を防ぐために文明を進
歩させました。
 人力車を作り、自動車を作り、汽車を作り、新幹線を作り、飛行機を飛ばせてき
たのです。そしてそのために水力・火力ではあきたらずに、必死の思いで原子力と
いう魔のエネルギーまで開発したのでした。
 人力を使うことを避けて「楽」になるために、ますます「苦労」しているわけで
す。

 しかしいったい何のために、と問えば、その答えはどこにもありません。
 もはや「楽」をするためだけではありません。
 「楽」をするレベルなどとっくの昔に終わっています。
 ほとんどこれは「無限衝動」としかいいようのないものなのです。
 ただとめることができないのです。

 この「成長」へ向けた「無限衝動」は、人間の本性というものでは決してありま
せん。成長することがまたわれわれの欲望を刺激して「無限衝動」を 呼び覚まし
てしまうのです。
 そしてそれがまた成長を必要とする
 近代社会はこういう循環構造によって成り立っているのです

 脱原発を唱えるとは、「近代」が生み出したこの運転の逆転を意味するといわね
ばなりません。たいへんなことです。
 より便利なものを求め、より楽をし、より快適な生活をし、いっそうの快楽を手
にしたいという近代的な生活を、放棄とまではいいませんが、少なくとも、その方
向を逆転させなければならない。
 近代的な価値の大転換であって、これが容易な事態ではないことはたやすく想像
がつくでしょう。
 では、この発想は可能なのでしょうか。

破7
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前回の議論から出てきた「近代」という言葉。
私たちは、この用語を日々意識して暮らしているわけではないのですが、概念的に、
象徴的にこうして言葉を用いるのが、学者は好きです。

なるほど、整理してみるとそう括ること、表現することができる・・・。
でも、そう表現することで、現実的な改善・解決方法がすんなり出てくるかというと
そんなことは決してない。
議論をするための用語にしかならない。
そういうこと、意外に、というか、必ずというか、多いんですね。
カイゼン・解決に役立つのならばその意義は大きいのですが、議論が議論を呼ぶばか
りで、堂々巡りになってしまう・・・。

実は、この書、良いホンだな、うまいこと整理して書くもんだな、と感心して読んで
いたのですが、このブログシリーズに着手してから、どうもそうとは思えなくなりつつ
あるのです。
もちろん、後の方で、「これはいい!」とお薦めの部分があるのですが・・・。

でもまあ、批判精神は、それなりにある私ですから、こういう展開もいいだろう、と
いうことで・・・。

近代をずーっと生きてきたわけでもないのですが、ずーっと俯瞰して象徴的な事象を
抽出・整理すると、こういう脈絡になる。
だからこれからは、こうあるべき、という論法。
では、もっと早くから問題提起し、今現在望ましい形になるように働きかければよか
ったのに、そうはしなかった・・・。

まあ、人間の営みのひとつの典型は、そういうものかもしれません。
本来、為政者は、そうした行動様式を取るべきと思うのですが、過去も現状も見る限
り、それもなかなか叶わぬことであります。

さて、無限の衝動状態に入っている成長循環に抗する、脱原発、脱成長・・・。
どう対処していくべきなのでしょうか・・・。

火力

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