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時事ニュース

水素社会実現と海外再生エネルギー活用の関係:CO2フリー水素エネルギー時代への道

 

4月20日・21日付日本経済新聞<経済教室>
「水素社会への展望と課題」というテーマで2回連載。
昨日1回目として
佐々木一成九州大主幹教授による「水素社会への展望と課題(上)」
を取り上げて、紹介しました。
→ 水素社会実現で環境・エネルギー最先進国へ:CO2フリー水素開発への道

今回は
塩沢文朗国債環境経済研究所主席研究員による「水素社会への展望と課題(下)」
を紹介します。

そのポイントは
◆化石燃料の削減には再エネの大量導入必要
◆国内の再エネ資源は質・量とも限られる
◆燃料電池普及だけでは省エネ効果は限定的

という、どちらかと言うと一見、一読、悲観的な内容かと
思えてしまうのですが
もう少し詳しく見てみます。

まずそれらの根拠として

2012年以降の日本の1次エネルギー供給の93%が化石燃料に依存。
世界的に、化石燃料の需要は増加し、2050年には現在の1.7倍に。
しかし中長期予測では、原子力発電を10数%に下げても2050年には
やはり約80%は依存せざるを得ない。

2050年迄の先進国では温暖化ガス排出量80%以上削減、世界全体で
50%削減達成は難しい。

日本は、日射量、日射強度、風況など地理的環境から、国内再生エネ
ルギー資源には質・量共恵まれていない。

日本の太陽光発電のコストは世界の約2倍、陸上風力発電は約3倍、
中東地域の太陽光発電コスト比較では約6倍で圧倒的に不利。

--------------------------
そのために
資源に恵まれた海外の再生エネルギーの利用が不可欠で
その場合、それらを運搬する方法を用意する必要がある。

電気や熱を長距離輸送することは困難であり
輸送・貯蔵に優れた形態である化学エネルギーが望ましく
それが<水素>である。

再エネから作った<水素>=CO2フリー水素の利用で
直面するエネルギー・環境問題を克服できる可能性がある。

それが
「水素社会」実現をめざす目的となり、課題となる、
とします。

--------------------------

現状の水素エネルギー活用の問題点

現状、わが国の水素エネルギー活用は
主に次の2種類の燃料電池の導入で進みつつある。

1.エネファーム(家庭用燃料電池コージェネレーション・システム)
2014年末迄に累計11.3万台普及、2030年530万台目標
2.燃料電池車(FCV)
2030年200万台期待

しかし、
前者では、日本の全エネルギー消費量の約0.4%
CO2排出量は、約0.5%削減レベル
後者では、日本の化石燃料消費量の約0.3%、
CO2排出量は、約0.2%削減
その程度で、削減効果はさほど期待できない。

その大きな理由が
これまで別記事でも何回か述べてきたように、エネファームで
生成される水素自体の燃料=原材料が
都市ガス、LPガスであるため。

エネファームー1

化石燃料の多消費分野は、発電(40%)と製造業(22%)で
この分野でCO2フリー水素が大量導入されなければ目標の実現は
不可能。

そこで
発電分野では、水素のプラント引き渡し価格が
1立法m(セ氏0度、1気圧)当たり30円となり
海外からの純水素(CO2フリー水素)の供給チェーンが整えば
導入環境が整うとしています。

この前提で
以下のシナリオを提示しています
---------------------------

「水素社会」への3段階でのシナリオ

[第1次段階:水素エネルギー利用開始段階]
エネファームとFCVで始まり、水素需要増がFCV分野で起きる。
FCVの普及には、水素ステーション設置が不可欠だが進みつつあり
1立法m90円という販売価格目標はクリアされ
2030年までは、FCV燃料向け水素は改質水素で

[第2次段階:海外からのCO2フリー水素エネルギー大量導入期]
2030年頃に発電分野への導入環境が整い
水素需要が年200億~300億立法m規模に拡大し、国内の改質水素
では不足。
そのため海外からの再生エネ型CO2フリー水素エネルギーの大量導入
が開始。

[第3次段階:改質水素のCO2フリー水素エネルギーへの転換で水素社会へ]
2の大量導入で改質水素も置き換えられ、製造業やその他の分野
にも導入され、水素社会へ。

エネファームー2

このステップは
前回、佐々木九大教授が展開した、以下のステップとほぼ同様の
流れと読むことができます。

----------------------------

[第1フェーズ:炭素循環社会]
<システム>:エンジン、タービンなど
現状システム価格>:安価
現状エネルギー価格>:安価(将来は?)
<CO2排出量>:削減の必要

[第2フェーズ:水素利用社会]
<システム>:燃料電池車、家庭用燃料電池など
現状システム価格>:割高
現状エネルギー価格>:安価(将来は?)
<CO2排出量>:少ない

[第3フェーズ:純水素社会]
<システム>:燃料電池車、純水素燃料電池
現状システム価格>:割高
現状エネルギー価格>:割高(多様な燃料から製造可能)
<CO2排出量>:ゼロ

-------------------------

ミライB

佐々木教授の論考では提起されなかった
海外の再生エネルギー活用によるCO2フリー水素エネルギー
(佐々木氏の表現では「純水素」)という方策が
今回の塩沢氏の小論で具体化されていることで
より現実的にイメージできるものとなっています。

そうすると
太陽光発電や風力発電でも技術的に海外諸国に勝り
プラントの輸出や技術の移転などの戦略・マーケティングも
平行して進めていく必要があります。

エネルギー自給率を高めるためにも必須の長期的課題。
頑張ってほしいですね。

エネファームー3

※注
<エネファーム>に関する画像は、日本LPガス協会のHPから
引用させて頂きました。→ http://www.j-lpgas.gr.jp/index.html

 

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