破3

原発問題

検針票から考える、電力行政と原発政策のこれから:矛盾に満ちた原子力政策を考える(3)

中日新聞が、原発廃炉問題とエネルギー政策に関する問題を取り上げ、
国の失政・電力行政の誤りを正すキャンペーンを張っていることに賛同
しています。
2016.09.21付、および2016.9.28付の記事を紹介し、
新電力も負担で、廃炉費用・1億総負担社会へ:矛盾に満ちた原子力政策を考える(1)
無限の原発処理費用に無感覚になった「一億総危機意識ロス社会」:矛盾に満ちた原子力政策を考える(2)
と、話を進めてきました。

今回は、2016/10/3付同紙の社説が、関連した内容だったので、続編と
して紹介します。

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 払う側にモノ言わせよ 電気料金と廃炉
-------------------------- 

 見えない商品だからでしょうか。
 電気料金の仕組みは複雑怪奇です。でも月々の検針票をよく見ると。
 国からのさまざまなメッセージが読み取れます。

託送制度を知っていますか

 ことし4月、電力の小売りが全面自由化され、一般の家庭でも電気の購入先
を選べるようになりました。
 しかし、ドイツのように発電事業者と送電事業者を切り分ける発送電分離
4年後に先送りされ、大手電力会社による送配電網の独占状態は続いています。

 新電力と呼ばれる新規参入の発電事業者は、たとえば風力や太陽光を使って
電気を自前でつくることはできますが、今のところ、消費者にじかに届けるこ
とはできません。
 大手電力会社の送配電網を有料で使わせてもらわなければなりません。
 それが「託送」です。

 新電力の電気代には、大手に支払う託送料金が、上乗せされているのです。

 託送料金は、電力会社が旧来所管する地域ごとに決まっています。
 既存の大手も送配電網の利用に応じて、決められた料金を自らに支払う建前。

 家庭で使う電気(低圧)の場合、北陸と関西が、1kw時あたり7.81円と最
も安く、最も高いのは沖縄の9.93円。
 東京は8.57円、中部は9.01円などとなっています。

 このような託送制度が、政府がうたう「電力改革システム貫徹」という名目
で、原発の延命に、一役買おうとしています。

 原発の廃炉には、当然巨額の費用がかかる。
 東京電力福島第一原発だけで10兆円を超えるともいわれている。
 現状では、原発を保有する大手電力9社が積み立てることになっており、そ
れがどこから出るかと言えば、結局は私たちの支払う電気料金です。

 原則40年の原発寿命が法制化され、本格的な廃炉時代に向かう中、老朽原発
を抱える大手電力会社の負担感は膨らんでいる。

 そこで、政府がひねり出したのが、福島の廃炉や事故処理にかかる費用だけ
でなく、あらゆる原発の廃炉費用を託送料金に上乗せし、国民全体に広く浅く
転嫁してしまおうというアイデアです。

 政府の委員会で検討が始まりました。

 3・11を教訓に、自由化が進めば、原発の電気はもういらない、新電力の
再生可能エネルギーを使いたいと考える人たちにも、過去には原発の恩恵を受
けてきたからと、一様に負担を強いるというのです。これはおかしい。

電線0

せっかくの市場がゆがむ

 もともと電力自由化は、大手電力会社による地域独占と総括原価、すなわち
発電、送電、販売にかかるすべての費用に一定の利益を上乗せできる値決めの
方式を突き崩し、健全な電力市場を育てるための改革ではなかったか。

 電力市場に競争原理を働かせ、国際的にも高いとされる電気代を引き下げて、
消費者の利便を図るはずではなかったか。

 いかに廃炉促進という大義名分があるとは言え、既存大手の優位を解消せず、
消費者に新たな負担を強いるかのような政策は、電力改革の貫徹どころか、本
末転倒、逆行というしかありません。

 消費者へのつけ回し体質はまったく変わっていないのです。

 このような苦し紛れの政策自体、3・11以前は安い、安いと言われてきた
原発の、果てしない高コスト体質を物語るものでもありましょう。
 福島の賠償や廃炉費用は恐らくさらに膨らみます。

 電力市場が健やかに成長すれば、「高過ぎる原発」はおのずと淘汰されてい
くはずです。

原発存続、見え隠れ

 市場をゆがめ、保有者の負担を軽くして、高過ぎる原発をあえて維持、存続
させようという意図が見え隠れしないでしょうか。

 福島第一原発の廃炉に、家族3人、月間消費電力約300kw時の標準家庭で
月額120円(関東エリアのみ)、そのほかの廃炉に6円…。
 資源エネルギー庁が例示した、託送制度で“公平”に回収できるとされる費用
の一部です。

 石油や石炭などの価格変動を電気料金に反映させる燃料費調整額再エネ
発電促進賦課金…。

 電力会社から月々送られてくる検針票に込められたさまざまなメッセージ。
 もう少し丹念に読み解いて、モノ申す必要がありそうです。

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自由化されはずだった電力発電・販売事業は、3.11福一事故で東電が国有化
されたことで、反対方向に強烈に動きだしてしまいました。
自由化は、もう何十年先まで、不自由化されてしまったのです。

電力小売り自由化のシナリオ自体、不十分で、とてもすんなり料金の自由化
が進められるようなものではなかったのですが、その政策の甘さを上回る、電
力行政の横暴とミスは、すべて原発政策の誤りに起因するものと言えます。

次に、電源構成(エネルギー・ミックス)自体、原発再稼働を前提とし、
再生可能エネルギーの構成比も抑制していたこと。

それから、再生可能エネルギー構成比を高めていく方針は示していても、自
由化が発電コストの引き上げなどにより料金低下を早期に促す前提で考えてい
なかったため、早期に新規参入を促したいがために、非常にというか異常に高
い、固定買い取り価格を設定し、それを利用者に当初から負担させたこと。

そして、福一(福島第一原子力発電所)の処理費用・賠償費用とすべての
原発の廃炉費用などの天文学的な、天井がない、期限・期間が決められない、
ほとんど未来永劫続くことが確かになりつつある巨額負担。

高度な科学技術に裏打ちされたはずの原発を、素人のレベルの政策・行政で
扱ったツケが、社説氏の証言として表現されているのです。

こうした失政と根が同じなのが、パリ条約批准を巡る政府・行政の甘い認識。
(この問題は、次回取り上げたいと思います。)

とは言うものの、これからの世代のためにも、当然この失政や矛盾を黙って
看過するわけにはいきません。
個別の電力行政を巡る問題点や、エネルギー、電力事業を巡る課題や情報を
これからも取り上げ、改善策・解決策を考えていきたいと思っています。

中日新聞だけでなく、全マスコミがこの問題に関するキャンペーン報道を行
ない、解決策を提言すべきなのです。
(TVは、劇場型・垂れ流し型マス媒体なので、まったくアテになりませんが。)

最大の元凶である国有化された東電の解体・解散と、負債の切り離し策。
これは必須です。
電力の自由化のシナリオも再構成し、現実的に進め得るようにする・・・。

学者・研究者の現実的な、総合的な戦略と戦術の提言・提案を期待したい、
のですが・・・。

国1

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