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地球温暖化

環境庁・外務省・官邸。リーダーシップとマネジメント不足が招いたパリ協定批准ミス

前回、エネルギー・電力・原発政策の失政と繋がる失敗と考える
パリ条約批准の遅れについて
パリ協定批准読み違えの日本政府:リーダーシップを発揮すべき地球温暖化対策で恥
として、2016/10/7 付日経紙記事を用いて紹介しました。

この問題について、もう少し突っ込んだ事情のレポートが、3日後、
2016/10/10 付の同紙で掲載されました。
興味深い内容だったので、ほとんど再確認の内容にになりますが、
以下紹介します。

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 官邸主導の盲点 パリ協定批准「見誤った」
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 2020年以降の温暖化対策を定めた「パリ協定」で、日本は11月4日の発効
までに批准できない見通しになった
 米国や中国、欧州連合(EU)など主要国のスピード批准の流れを「完全
に見誤った」(首相周辺)ため。
 官邸主導が続くなか、政権中枢の関心が薄い課題に思わぬ盲点が生まれた

 

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 ※記事中の資料をそのまま掲載させて頂きました。
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米中の動き軽視

 「9月の米中合意は『えっ』と思ったが、もう何もできなかった」。
 官邸関係者が誤算に挙げるのが、温暖化ガスの二大排出国、米中の動きだ。

 米国はオバマ大統領のレガシー(遺産)づくりで5月の主要国首脳会議
(伊勢志摩サミット)の首脳宣言に「16年中の発効」と盛り込ませた。
サミット時の日米首脳会談ではオバマ氏が「発効に向け安倍晋三首相のリ
ーダーシップを期待したい」とも発言していた

 中国9月に杭州で開催する20カ国・地域(G20)首脳会議の議題で
パリ協定を重視していた。
 こうした動きは3月の米中首脳会談でも兆しがあった。
 だが官邸は高をくくっていた。パリ協定の発効条件は
1)批准国が55カ国超
2)批准国の排出量が世界全体の55%
の2つ。米中が動くだけでは条件には遠いからだ。

 年内発効が現実味を帯び始めたのは9月25日、排出量4位のインドが10月
の批准を表明してから。
 環境省幹部が重い腰を上げ根回しを開始。
 意を受けた環境相経験者が首相に「温暖化対策をリードすべき日本が世界
の流れに遅れる」と直訴。

 首相は「うまく調整してくれ」とこたえ、ようやく臨時国会での承認への
調整が動きだしたが、時は既に遅し。
 もう10月18日の承認案の国会提出を同11日に早めるくらいしかできなかった

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※記事中の資料をそのまま掲載させて頂きました。

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優先度は最後尾

 協定発効で省エネ対策などを担う経済産業省は、7月の参院選前から臨時
国会での承認を求めていた。
 だが、彼らも想定外だったのが、EUの一括批准だった。
 通常は全加盟国の批准に時間をかけるが、EUは今回、加盟国内の手続き
を後回しにして批准した。
 これで発効条件の一つの加盟国数は一気に増え、発効は確実になった。

 条約や協定を担当する外務省は、臨時国会に向け、パリ協定、環太平洋経
済連携協定(TPP)承認案、自衛隊と米軍の物資融通を広げる改定物品
務相互提供協定(ACSA)の優先順位に悩んでいた。

 彼らの優先度はTPPが1番でパリ協定は最後尾だった。
 官邸の「TPP最優先」の意向があったためだ。

 外務省には「最後に日本の批准のおかげで発効できた」と演出する思惑も
あった。
 だが、EUの批准を見誤ってシナリオは崩れた。
 外務省も当初、EUから「批准は来年になりそう」と感触を得ており、
一気に批准すると思っていなかった。

 関係各省の認識はバラバラで積極的に連携した形跡は乏しい。
だが、そんな中で不作為の連鎖を止めるのはリーダーシップをとるべき官
邸の役割だ。
 首相周辺は「官邸はほとんど関与していない」と話す。

 「臨時国会でTPPを成立させる」との強いこだわりで視野狭窄になった
面もある。

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「COP22までに」綱渡り TPP審議焦点 国会も後手に

 与党も後手に回っている。
 11月7~18日にモロッコのマラケシュで開く第22回国連気候変動枠組み
条約締約国会議(COP22)に間に合うよう手続きを急ぐが、綱渡りだ。

 与党に懸念の声がなかったわけではない。
 9月3日に米中がパリ協定批准を共同発表した直後。
 公明党幹部は自民党幹部に「協定の早期発効もありうる。どうにかなら
ないか」と相談していた。
この時点では、臨時国会を9月中旬に召集する
案もあり、閉会中に審査
することも不可能ではなかったが、見送られた。

 自民党国対幹部は「パリ協定は来年の通常国会でいいと外務省から言われ
ていた」と振り返る。

 政府が臨時国会での承認に動き始めたのは9月下旬。
 衆院では環太平洋経済連携協定(TPP)承認案をまず審議することを
決めており、同時並行でパリ協定を進めるには、日程があいている参院で
先に審議を始めるしかない。

 野党はパリ協定には反対していない。
 そのため参院では今月下旬にはパリ協定の承認案が通過する見込み。
 だが、TPPが障害になりかねない。
 野党がTPPを対決法案に据えているためだ。
 衆院でTPPの与野党対決が激化すれば、パリ協定の衆院審議入りが遅
れる可能性がある

 COP22への批准国としての参加の締め切りは10月19日で国会承認は間
に合わない。
未批准国は参加できるが「オブザーバー」で発言権はない見通し。
政府関係者は「マラケシュでは大したことは決まらない。日本に不利に
作用することはない」と強調している。

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【高村ゆかり名古屋大教授(環境学)の談話】

 オブザーバーで会議に臨めば、自国に不利益な議論でも異議は申し立て
られない。
 今後は温暖化ガス削減目標の条件や、目標が守られなかった際の対処策
が議論される見通しだが、未批准なら国益に反する話も日本抜きで決まる
だろう。
 「日本が批准することで協定が発効する」との可能性もあったが、国際的
な動向を読み違え、せっかくの外交のチャンスを棒に振った。

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結局、今回の件でも、経済産業省と外務省の2つの官庁と官邸との連携
がうまくいかなかったことが最大の要因と言えると思います。

これは結局、首相のリーダーシップ不足と官邸のマネジメント不足、そ
して与党幹部の政局マネジメントの不足に拠るもの、と言ってよいでし
ょう。

記事中の表現を借りるなら、みな視野狭窄なのです。
リーダーシップを取っているつもりでも、グローバルベースでは、そう見
られていないし、本当のところ尊重も、信頼もされていない(のかもしれ
ない・・・)。

前回も書きましたが、国内の政局がらみの関心が第一。
流行の「ファースト」を使うなら、「政権維持・長期化ファースト」。
外交は、中国意識の諸外国への資金援助など、国家間競争を意識した外面
重視ファースト。
これはまだ、日本企業の進出とセットであることが多いので、理解は得や
すい。
一方、地球温暖化対策は、経済界がもろ手を挙げて賛成とは言えない裏事
情もあるので、「ファースト」に位置づけられないということなのでしょ
うか・・・。それでは、やはり、リーダーシップは取れない。

伊勢志摩サミットも、外面・対面重視型、劇場型トップ集会の域を出なか
ったことになったわけです。
国内問題との関連では、消費増税再延期という、ポピュリズム・ファース
トで、極めつけの成果を上げる道具立てに利用しましたが・・・。

パリ条約批准への関心は、国民の意識においても残念ながら低いのが現状
でもあります。
やはり、毎度の一億総モラトリアム社会の一面が顕在化した、象徴的な事
例と言えるのではないでしょうか。

さて、記事中に、パリ条約批准よりも先とされたTPP問題。
米国両大統領候補がTPP反対を公約としている厳しい状況で、日本政府は
リーダーシップをとる気概・決意を持っているのでしょうか。

ここでは、国内問題とセットで、政府の対応が注目されます。

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