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政治

「同一賃金」企業内限定の政府方針で、企業が目指すべき方向:正規・非正規社員の評価制度・処遇制度の再構築を

前回、元々の視点は違ったのですが、トヨタグループの非正規社員の正規雇用化の
ニュースから、正規・非正規間の賃金格差問題の解消策として、非正規社員の正規
雇用化企業に対する法人税減税を提案しました。
トヨタ自動車グループ、非正規期間従業員の正社員化促進:非正規社員の正規雇用企業には税制改革で法人減税を

二つの雇用契約に、有期・無期の違いに基づく賃金格差があるのは、ある程度はや
むを得ないと私は考えます。
しかし、有期が無期に近い運用になれば、賃金抑制のためにかなり確信犯的と言え
るわけで、こうした運用に対しては、正規化すれば減税で報いるというわけです。

そこで、もともと議論の源になったのは、「同一労働同一賃金」という概念。
よく欧米の雇用において確立されているという「同一労働同一賃金」制。
私は、それ自体懐疑的に思っており、必ずそこには、スキルと成果を評価する制度
が付随し、決して、すべからく「同一労働」とはみなせない、従い「同一賃金」
もあり得ない。
そう考えるのです。

まして、企業間では、一応同一職種ではあっても、まったく同じ仕事内容ではあり
えないですし、同一賃金ということもあり得ない。
感覚的な議論止まりなのです。

学者・研究者においても、実際のシステムの知悉度や概念化においては差がある。
これを、政治家や官僚が、文字面だけで判断し、良し悪しを論じ、法制化にまで
持ち込もうということは、土台、ナンセンスなのです。

そのことにようやく気が付いたのかどうか分かりませんが・・・。
2016/11/25付日経で、以下の報道がありました。

-------------------------------
 「同一賃金」企業内に限定 政府方針 企業間格差は容認
-------------------------------

政府は働き方改革の柱の一つである「同一労働同一賃金」の導入について、業種ごと
に一律の基準を設けるのではなく、同じ企業の正社員と非正規社員の間に限って実現を
めざす方針だ。
 企業間で賃金の格差が生じるのは認める。
年内に問題のある待遇の違いを事例で示し
たガイドラインをつくり、企業側に正社員
と非正規社員の格差をなくすように促す。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 11月29日に開く政府の働き方改革実現会議で打ち出す。
 12月にも開く次の会議で、同一労働同一賃金のガイドラインの内容を固める。

 9月に発足した実現会議はこれまで賃上げやテレワーク(在宅勤務)、病気治療と仕事
の両立といったテーマを議論してきた。
 同一労働同一賃金を取り上げるのは29日の会議が初めてとなる。

 バブル崩壊後に非正規社員の比率を上げてきた日本企業は、非正規でも正社員並みの仕
事をする例が増えている。

 非正規社員の間では正社員と同じ仕事をしているのに、給料を正社員より低く抑えられ
ていることへの不満が強い。
 政府は非正規の働く意欲を高めて深刻な人手不足を解消するには、同一労働同一賃金の
実現が欠かせないとみている。

 フランスやドイツでは、業種ごとに同一労働同一賃金が定められ、労使交渉も業種単位
で実施する。
 職種や技能のレベルに応じて賃金が決まり、正社員と非正規の違いはない。
 日本政府は同一労働同一賃金の導入にあたって、仏独の事例を参考にしている。

 日本の経済界は欧州のような業種ごとの同一賃金の導入には慎重な立場を取る。
 日本の労使交渉は欧州と違って企業単位で、職務内容も明確に決まっていないからだ。
 政府は経済界のこうした懸念を踏まえ、同一賃金の対象を同じ企業内に限定することに
した。

 転勤の有無や同じグループ内の違う会社で待遇に差がつくことも、ある程度は容認する
方向だ。

 年内に策定するガイドラインは、基本給や諸手当など賃金だけではなく、福利厚生や
教育訓練といった待遇全般について行きすぎた格差の事例を示す。
 就業規則を変更する際に企業が参考にしやすいように「交通費は正社員と非正規社員
で差があってはならない」などの具体例を記載する。

 政府は正社員の待遇を引き下げて、非正規の格差を縮める動きが出ることを警戒して
いる。
 あくまで非正規の待遇を底上げして同一賃金を実現するよう経済界に促す考えだ。
 しかし経済界の側は大幅な人件費の上昇につながるため、警戒する声も出ている。

 日本では、パートタイム労働者の時間あたり賃金がフルタイム労働者の6割弱にとど
まる。米国の3割に比べれば格差は小さいが、フランスの9割、ドイツの8割、英国の
7割
より大きく見劣りする。
 政府は10年かけて賃金格差を欧州並みに縮めたいと考えている。



 非正規労働者の賃金が上がれば、さえない個人消費を押し上げる要因になる。
 正社員の賃上げと合わせて、足踏みするアベノミクスの再加速につなげる思惑もある。

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正社員と同じ仕事をしても賃金が低い非正規社員。
その問題を根本的に改善・解決する最良の方法は、非正規社員を正規社員に雇用変更
することです。
非正規社員として、一定の雇用期間を経過し、正規社員と同様の質の仕事ができると
評価されたとき、本人の希望があれば、正規社員に変更しなければならない。
そういう法律を導入する。
年次ごとにその実績を報告し、実績に応じて法人減税を行う。

職種によりその基準とすべき期間は、求める技能・知識などによって異なりますが、
感覚的には、2年程度が望ましいかな、と思います。

しかし、明確に、そのレベルの技術や遂行能力を満たさないと評価した場合は、非正
規雇用として継続契約しても構わない。

一方、この政策を推し進める中で、正規社員の要件の見直しも並行して行い、単に長
期勤続していることで相対的・絶対的に高い賃金を得ている社員の処遇は見直していく。

企業内での賃金制度、評価制度の見直しも不可欠になるわけです。

結局ここでも同一労働同一賃金制の根拠が崩れることになるわけで、正規・非正規、
どちらにおいても、客観的で公正な自社内での評価処遇制度を再構築する必要がある
ことになります。

もうそろそろ企業もこの課題に正面から取り組むべき。
そして働く人々も、その自覚を持ち、かつ自分の評価を客観的に評価し、処遇や人
事管理、能力開発に結びつけてくれる企業かどうか、真摯に向かい合い、これからの
自分と仕事を考え、自分を活かし、高めていくべき。

同一労働同一賃金という用語は、そうした根本を思い出させ、望ましい行動を起こ
させるきっかけとしての役目を果たしてくれれば、お役御免としてよいのは、と考え
ます。

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