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少子高齢化

超高齢社会の要請としての社会保障と社会の責務:『人口と日本経済』<人口減少と日本経済より>(2)

先日、今年の推計で、年間の出生数が初めて100万人を切ると報じられました。
そして、来年度2017年度の予算案の規模が、過去最大の97兆円。
その中で、社会保障費が、これも最高額の約32.5兆円規模に。
少子高齢化を如実に物語る報道が、2016年クリスマス前に相次ぎました。

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前回から『人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長』(吉川洋氏著・2016/8/25刊)
を用いながら、人口減少と高齢化社会、日本の閉塞感を解消すべく、経済学者の知見を
参考に考えるシリーズを始めました。

「第2章 人口減少と日本経済」からスタート。
第1回:西暦4211年10月11日、日本に子どもが一人だけになる(日本の子ども人口時計)

今回は、第2回です。

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 第2章 人口減少と日本経済(2)
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超高齢社会の社会保障

 人口減少と並んで、著しい速度で進行しているのが「高齢化」だ。
日本は1970年に高齢化率(総人口のうち65歳以上が占める割合)が7%を超えて「高齢化社会
となったが、その後1994年には14%を超え「高齢社会」となり、さらに2007年に21%を超え、つ
いに世界で初めて「超高齢社会」となった。
2015年の国勢調査では、高齢化率は26.7%、いまや4人に1人以上が高齢者だ。
現役世代(15~64歳)と高齢者の比率も、かつて高度成長の時代には11対1だった。
それが2013年には2.5対1となり、2030年には1.8対1、さらに高齢化率がピークを迎えると見ら
れる2060年には
1.3対1になる。

 超高齢社会は経済社会に大きな問題を生み出す。
誰もが知るように、高齢者は経済力でも健康
面でもばらつきが大きい。
 会社の社長や役員の多くは65歳以上だが、他方で、年金以外に収入減を持たない人もいる。
 健康に恵まれた高齢者もいるが、重篤な病気を患い介護を必要とする人も多い。

 古く紀元前4世紀の古典である『孟子』にも、すでに次のような記述がある。

 老いて妻なきを鰥(かん)と曰い(いい)、老いて夫無きを寡と曰い、老いて子無きを独と曰
 い、幼くして父無きを孤と曰う。此の四者は天下の窮民にして告ぐる無き者なり。

 だから政治は、こうした弱い立場にある人々を救わなければならない、とある。
 「社会的弱者」が直面する問題を社会全体で解決する -- 残念ながら、完全な解決は難し
いが、少なくとも緩和する制度、それが社会保障制度にほかならない。

 今日、わが国の社会保障の給付(お金やサービスの提供を「給付」という)は総額で116兆円
である。GDPは500兆円だから、GDPの4分の1に達しようという大きな数字である。兆という単
位はわれわれの実感を伴わない大きな数字だが、実際1兆円を1万円札で積み重ねると10kmにな
るそうだ。日本経済を考えるときにはこの兆が基本単位になる。

 給付総額のおよそ半分を占める年金は56.2兆円(2015年度)、続いて医療37.5兆円、介護9.7
兆円、「子ども・子育て」5.5兆円、「雇用保険」、最後のセーフティネットと言われる「生活
保護」などがある。

 お金はもちろんのこと、サービスでも何か給付がなされれば、このコストは必ず誰かがなん
らかの形で負担しなければならない。そこで社会保障を負担の面から見ると、6割は労使折半の
保険料で賄われているのだが、それでは足りない残り4割は税で賄われてる。

 「税」と言っても、文字どおり税収で対応できているわけではなく、赤字公債で取り繕って
いるのが現状である。したがって正確には、税でなく「公費」と言わなければならない。
 これこそが財政赤字の問題なのである。

 なお、保険料6割、税4割というのは社会保障全体の話であり、制度ごとの保険料と税(国と
地方)のシェアはまちまちである。
 一方にはすべて税で賄われ保険料の負担はない生活保護や児童・障害福祉などがある。
 逆に厚生年金や健康保険などには税の投入は無く、すべて保険料で賄われている。基礎年金、
国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険は、税と保険料が半分ずつの負担をしている。
 このように制度ままちまちで複雑なものになっている。こうした現状は、明確な方針に基づ
いて設計されたものではない、むしろ過去の歴史の中で形成された妥協の産物である。

 さて、負担の6割を占める保険料は、企業ともども現役世代が払うものだし、税も所得税な
どは現役世代が納付するものだ。このように負担は主として現役世代が担う。
 一方、給付は、年金は高齢者が受給するものだし、医療・介護もやはり高齢者の受給が大き
い。ちなみに、1人当たりの年間の平均医療費は64歳以下17.5万円に対して、65~74歳55.3万円、
75歳以上89.2万円である。75歳以上の後期高齢者1人当たりの医療費は、現役世代の5倍以上か
かる。

 したがって、少子化により現役世代が減り、高齢化により高齢者が増えていけば、社会保障
の給付が膨らむ一方で、それを支える財源は先細りになわざるをえない。こうして少子高齢化
の下で苦しくなる社会保障の台所を支えるのが国の財政である。
 しかしそれは、国の「財政赤字」というもう一つの大きな問題を生み出す。

32

※次回、<財政赤字の危機> に続きます。

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ざっと基本のおさらいをしている感じですが、決して堅苦しくなく、人口問題と日本経済を
結び付けて読み進めていくことができます。

クリスマスの今日、日経で「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」が発表され、最低が、
2400円、最高が3900円という価格の9冊と共に、唯一新書版で、760円(税別)の
人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長』が、第7位に入っていました。

私は、基本的には、新書しか購入せず、1,500円以上の図書は、少々発行から時期がずれても
構わず、ネットで中古本しか買わないことにしています。
今年も100冊ほど購入しましたが、そのほとんどが新書で、その中の1冊が、これ。
非常に価値のある、760円の新書です。

ハードカバーは要らないから、全部新書で発売してくれれば、もっと硬派の書も買い求めたい
のですが、さすがに2000円以上もする本には手は伸びません。

読み手の経済性を、ぜひ経済学者と出版社は考えて欲しい・・・。

今回の内容にはまったく関係ありませんが、このベスト10、順番に紹介しておきたいと思い
ます。


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<<第2章・構成>>

・日本が消える?
・超高齢社会の社会保障

・財政破綻の危機
・財政赤字はなぜ拡大し続けているのか
・市町村が消える?
・明治の都市人口ランキング
・経済成長を決めるのは人口ではない
・イノベーションの役割
・ソフトな技術
・高度経済成長の時代
・AI、ITは人間の仕事を奪うか
「第3次産業革命」とインダストリー4.0

 

4

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【吉川 洋氏・プロフィール】
1951年、東京都生まれ、東京大学経済学部卒業後、イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D)
ニューヨーク州立大学助教授、大阪大学社会経済研究所助教授、東京大学助教授、
東京大学大学院教授を経て、立正大学教授。東京大学名誉教授。
専攻はマクロ経済学。
著書多数(後日紹介します)

 

 

 

 

 

 

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