iv2

人口減少

構造問題としての財政赤字は、構造改革の最優先課題:『人口と日本経済』<人口減少と日本経済より>(4)

2016年12月下旬から
人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長』(吉川洋氏著・2016/8/25刊)
を用いながら、人口減少と高齢化社会、日本の閉塞感を解消すべく、経済学者の知見を
参考に考えるシリーズを始めました。

「第2章 人口減少と日本経済」からスタート。
第1回:西暦4211年10月11日、日本に子どもが一人だけになる(日本の子ども人口時計)
第2回:超高齢社会の要請としての社会保障と社会の責務
第3回:財政赤字の抜本的対策はインフレ政策ではなく構造改革で

今回は、第4回です。

-----------------------
 第2章 人口減少と日本経済(4)
-----------------------

財政赤字はなぜ拡大し続けているのか

 そもそも財政はなぜここまで悪化したのか。船底にたまった水(ストック)は、船に開いた穴
から毎時流入する水(フロー)がたまったものである。同じように、現時点における国債残高
ストック)は、過去年々の財政赤字(フロー)が累積したものにほかならない。

図表1は過去40年の財政収支(一般会計)の推移で ある。財政赤字が拡大したのは、平成
に入ってまもなく1990年代初頭にバブルが崩壊してからでえあることが分かる。
 景気が好くなれば財政赤字は縮小し、逆に不況のときには赤字が膨らむ。これは真理であり、実
際図表1にある財政赤字も年々年々ぶれている。
 しかし図表1を全体として見れば、日本の財政赤字はまさに「構造的」と呼ぶべき長期的な問題
であることが分かる。この問題は、経済成長だけでは解決できない

(図表1)

%e8%b2%a1%e6%94%bf%e6%ad%b3%e5%85%a5%e6%ad%b3%e5%87%ba%e6%8e%a8%e7%a7%bb

 さて、財政赤字は歳出(予算によりお金を使う分)と歳入(税を中心にお金が入ってくる分)の
ギャップにほかならない。歳出の増加、税収の減少、いずれかあるいは両方によって財政赤字は拡
大する。ここでは歳出に注目しよう。

 予算は時代に鏡だ。経済社会の変化を反映して歳出の中身は時代と共に変わる。
 図表2はこうした歳出のシェアの変化を見たものである。

(図表2)

%e6%ad%b3%e5%87%ba%e6%8e%a8%e7%a7%bb

 

 東京オリンピックが開催された1964年の少し前、1960年度の一般会計予算を見ると、その規模は
1.7兆円、100兆円に達しようという今日の予算と比べると何とも小さいが、そのうちで社会保障関
連の予算は2000億円と、公共事業費3000億円の3分の2の水準だった。この時代は、道路をはじめ
インフラ整備が急務だった。東京ですら雨が降ると水たまりのできる土の道が多かった時代である。

 その後、経済成長の1960年代、高度成長が終わりオイルショックもあった1970年代、国の予算は
膨らみ続け、バブル経済が崩壊する直前1990年度の予算は69兆円に達した。
 バブルが崩壊し、「失われた10年」と呼ばれる90年代に入ると、深刻な不況の下で度重なる「経
済対策」により公共事業費が急増した。
 もっとも2000年代に入ると、小泉内閣をはじめ歴代の内閣により公共事業費は大幅にカットされ、
2015年度には6兆円と、2000年度の半分まで減少した。

 こうした時代の変化の中で、1970年代から一貫して増え続けている費目が二つある。
 一つは国債費。累積する財政赤字の結果、国債の残高が増大すれば、償還に加え利払いが増えて
いくのは当然である。
 しかし、それにも増して年々増加のペースを高めてきたのが、「社会保障関係費」である。
 こうして今では、一般会計予算から国債費と地方への移転である「地方交付税交付金」を除いた
国の「政策経費」の半分以上が、「社会保障関係費」である。
 (2015年度は31.5兆円/57.4兆円=55%)。

 社会保障関係費は国の予算の中で圧倒的に高いシェアを占めているだけではない。
 高齢化のの下で、毎年1兆円近く増大していくものと考えられる。先にも述べたとおり、少子化
により保険料を払う現役世代が減る一方、高齢化により給付は増大していくから、社会保障の台所
は苦しくならざるをえない。
 そのギャップを埋めているのが国・地方の社会保障費関係予算なのだから、少子高齢化の下でこ
れが膨張していくことは避けがたい。こうして、少子高齢化は「財政赤字」という大きな問題を生
み出した。

 問題を解決するためには歳出の伸びを抑制する一方、歳入増(増税)が必要であることは自明だ。
 しかしここではこれ以上立ち入らない。
 ただ一つ、日本と同じく少子高齢化に悩むEUが加盟国に消費税(付加価値税)最低15%という
ルールを課している事実をわれわれ日本人はよく考えてみる必要がある。

3  

※次回は来年に入ってからになります。

----------------------------

文中に用いた資料は財務省により公開されているものですが、その関連で、公債・国債の発行
と累計残高の各推移に関するグラフもありましたので、以下に添付します。

(図表3)

%e5%85%ac%e5%82%b5%e6%8e%a8%e7%a7%bb

(図表4)

%e5%85%ac%e5%82%b5%e6%ae%8b%e9%ab%98%e7%b4%af%e8%a8%88%e6%8e%a8%e7%a7%bb

やはり、課題先進国の課題解決は、種々の構造改革なしには不可能です。
そのファンダメンタルとして、どうしても歳入・歳出の国の財政上の構造をいかに変革するか、
その課題を避けて通ることはできないのですが、その決め手となる方針・政策が示されず、すべ
て先送りになっているのです。
単純に先送りにされ、財政赤字の幅も、変化がなければまだいいのですが、どんどん悪化し続け
ていることが、上の4つの図表で明らかです。

消費増税については、ここでは立ち入らない、とした筆者。
では、替わって、何をどう描くことで、財政の構造的問題に切り込むのか・・・。

2017年度の政府予算案が決まった年末から始めたこのシリーズ。
新しい年は、その構造改革のための転換点になり得るか・・・。
しっかり注視していきたいと思います。

%ef%bc%91

次回は、<市町村が消える?> です。
(注)
4条公債とは:建設国債のこと。公共施設の建設等に充当される資金の調達のために発行されるもの。
       (根拠法は財政法第4条但し書き)
特例公債とは:赤字国債のこと。財政法で禁止されている国債だが、毎年度根拠法
       (平成○○年度の国債発行の特例に関する法律)を制定して発行されるもの。 

----------------------------

(参考)
2016/12/25付日経で発表された「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」。
最低が、2400円、最高が3900円という価格の9冊と共に、唯一新書版で
760円(税別)のこの『人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長』が、第7位に。

 

ベスト10、順番に紹介しておきたいと思います。


----------------------------

<<第2章・構成>>

・日本が消える?
・超高齢社会の社会保障

・財政破綻の危機
・財政赤字はなぜ拡大し続けているのか
・市町村が消える?
・明治の都市人口ランキング
・経済成長を決めるのは人口ではない
・イノベーションの役割
・ソフトな技術
・高度経済成長の時代
・AI、ITは人間の仕事を奪うか
「第3次産業革命」とインダストリー4.0

 

4

---------------------------
【吉川 洋氏・プロフィール】
1951年、東京都生まれ、東京大学経済学部卒業後、イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D)
ニューヨーク州立大学助教授、大阪大学社会経済研究所助教授、東京大学助教授、
東京大学大学院教授を経て、立正大学教授。東京大学名誉教授。
専攻はマクロ経済学。
著書多数(後日紹介します)

WordPressテーマ「Chill (tcd016)」

ピックアップ記事

  1. 志摩の漁師育成私塾「畔志賀(あしか)漁師塾」:漁業未経験の若者が地域に育つ!
  2. 電力自由化で、地方自治体の電力事業参画広がる:エネルギーの地産地消と地方再生の目…
  3. トランプ大統領、無報酬を表明。就任前サプライズへの期待と不安 :トランプ政治とア…
  4. 日本遺産(12)三朝町(鳥取県):六根清浄と六感治癒の地-日本一危ない国宝鑑賞と…
  5. 錦織圭 試合速報:シティ・オープン準決勝、2-1見事逆転勝ちで決勝へ!

関連記事

  1. ノーリターン

    日記・随論

    野坂昭如ノーリターン! 瀬戸内寂聴さんの追悼文にうるうるの朝

    「マリリンモンロー ノーリターン・・・」野坂昭如と聞けば、あるいは…

  2. 218
  3. __ 1

    日記・随論

    インターネットがつながらないとき、解決策はインターネットで探せない!?

    起床後すぐにPCを立ち上げるのがルーティーン。今朝もいつもどおり立…

  4. SM1

    政治・社会経済

    孤軍奮闘?の日銀・木内委員のバランス感覚・国民生活視点を支持する 

    12月3日、都内で講演した、日銀の木内登英審議委員の話のポイントが…

  5. %ef%bc%97

    地球温暖化

    環境庁・外務省・官邸。リーダーシップとマネジメント不足が招いたパリ協定批准ミス

    前回、エネルギー・電力・原発政策の失政と繋がる失敗と考えるパリ条約…

  6. 4

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

worldbanner2
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で
2017年11月
« 10月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  
  1. ソーラーパネル

    再生可能エネルギー

    太陽電池、ソーラーパネル、太陽光発電の関係を学習しました:太陽光発電、最近の話題…
  2. 1

    太陽光発電

    経産省、太陽光発電買い取り制度、見直し着手:政府の電力政策の重大な誤りを他人事の…
  3. %e5%8c%97%e6%96%972

    日記・随論

    107日間のリハビリ入院に、退院日が来た!:明日が来る(6)
  4. 林業

    地方・観光

    スマート林業で再成長期へ:IT化・システム化で効率化・省力化・人材不足対応
  5. 4

    エネルギー問題

    港湾内洋上風力発電に追い風:国・自治体も、事業化エネルギー旺盛な企業を支援へ
PAGE TOP