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地方・観光

2017年、都議会議員選で地方政治が変わるか?:『地方議員の逆襲』から(22)

地方議員の逆襲』(佐々木信夫氏著・2016/3/20刊)
を参考にしながら、地方創生と地方自治・地方行政とを関連付け、合わせ
て国と地方の<政治>について考えるシリーズです。

「第2章 地方民主主義と地方議員」に入っています。
第19回:政活費が流行語大賞に選ばれなくてよかった!?地方議員、冷や汗の2016年
第20回:増える住民投票が意味する、地方議会・議員・首長・自治体不信
第21回:好都合の無所属議員。その意味・意図は?

今回はその第4回、通算第22回です。
(これまでの投稿リストは、文末にあります。)
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 第2章 地方民主主義と地方議員(4)
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なぜ首長優位か
 日本の自治制度は首長、議員とも別々に選挙される
この二元代表制は、議会と首長に対し、互いは対等であり、それぞれ住民を代表する政治機関として民意
の反映を競い合う関係を求めている。しかし現実は「首長優位体制」と言われて久しい。
首長選挙でどの候補、どの勢力に加わるかでその後の議会行動が決まってしまう。つまり支持した首長が
当選すると、自動的に、それを押した勢力は与党として活動することになる。

 全く別々に選挙されながら、首長選挙で議員があたかも住民の政治代表であるかの如くふるまって、その
後の議会の帰趨を決めてしまう。そうなるなら、議会の自殺行為と言えないか。
確かに、首長側につくと、予算編成や条例案の取り扱い、あるいは出身地域(地元)に有利な扱いを受け

る機会に恵まれるかもしれない。そこから与党化する議員心理も分からない訳ではない。
 しかしそれでは、議員内閣制ならともかく、機関対立主義を原則とする大統領制を採用している日本の自
治制度は機能しなくなる。議員の政治的欲望を前提として活動を組み立ててはならない。この制度のもとで
どうプレーすべきか、よく考えなければならない。
 「首長優位」とは議会より首長が優位ということ。議会は戦前の諮問機関の地位を抜け出ていないのでは
という見方もある。なぜ首長優位と言われるのか、そこには議会だけを責められない構造的なその理由もある。
 いま一度整理しておく。
① 議会に対する議案の提出が殆ど首長の独占であり、議会の政策形成への影響力が相対として小さい。
② 予算を伴う提案が首長の専権事項と規定され、それに関する議会の減額修正はできず、増額修正のみに
限定されている。それも財源が限られ、事実上増額はできない。
③ これまで自治体事務の8割近くを占めてきた国の機関委託事務について、議会には執行機関への質問権、
調査権のみしかなく、その内容の是非を問うことができない。
 2000年4月以降はこの機関委任事務制度が全廃されており、③は当たらない。
 であるが、議会が首長の提案に受け身である姿に変わりはない。日本の地方議会は予算に対する関与が著し
制約されており、この点が首長優位を決定づけている理由かもしれない。

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※次回、<なり手不足>に続きます。
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首相が国会議員から選出される国政と異なり、知事・市区町村長の首長が直接選挙で選出される地方自治・
地方政治。
根本的に構造が違うのだが、国政のミニチュア版、コピー版となっている地方政治・地方行政。
多くの議員が、無所属を標榜しているにもかかわらず、結局、首長党政治となっている状態は、住民の地方
行政・政治・議会に関する無理解にある。
確かにそうなのでしょうが、そう責められても、しょうがないというところでしょうか。
学校教育で、そこまでのことは、教えられていない、問われていない・・・。
自治体も積極的に広報・情宣活動をしない・・・。

こうした地方自治・地方政治について、2016年を総括した記事が、2016/12/26付日経にありました。
かなりのボリュームの特集形式だったので、数回に分けて、本書の各項と重ね合わせて紹介することにします。
まずは以下です。
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 劇場型・無風に二極化 首長選2016年回顧(1)
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<都知事選、波乱の幕開け 鹿児島・新潟、原発争点に>

2016年の地方自治体の首長選挙は、東京都知事選や原発が争点になった鹿児島・新潟両県知事選などが注目
を集めた。ただ、多くは現職に対し有力な対抗馬が出ない無風選挙で、住民の関心も盛り上がらず過去最低の
投票率が続出。
 在任期間が4期以上の知事はすでに4人に1人を占めるようになり、17年に9県で実施される知事選でさらに
増える可能性がある。
 18歳選挙が2年目を迎えるなか、劇場型か無風かという二極化する首長選のあり方が問われる。

 舛添要一前知事の辞任を受け、この4年間で3回目となった7月の東京都知事選。
 過去最多となる21人が立候補し、投票率は59.73%と前回を14ポイント近く上回った。

 関心を集めたのは当選した小池百合子氏と、元総務相の増田寛也氏、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏の三つどもえ
の構図。自民、公明両党の組織力をバックにした増田氏や、野党統一候補となった鳥越氏に対し、小池氏は「ひとり
ぼっち」を売り物にした。
 知事就任後は築地市場の豊洲移転の延期を表明。豊洲市場に盛り土がなかった問題を明らかにするなど連日、メデ
ィアに動向が取り上げられた。その後も東京五輪の会場見直しや都議会自民党会派との対立など話題は尽きず、17年
は都議選を巡る動向が注目される。

 今夏の知事選でもう一つ注目されたのが原発の稼働だ。
 7月の鹿児島県知事選では新人で元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓氏が初当選した。現職の4選阻止と県政
刷新を訴えて約42万6千票を獲得。総務省出身で行政のプロを自負する現職の伊藤祐一郎氏に約8万4千票の差を。
 三反園氏は知事選告示直前に反原発派と政策合意し「反伊藤」の一本化候補になった。
 熊本地震の影響を考慮した川内原発の一時停止と施設点検・避難計画見直し、原発に関する専門家委員会の設置を
公約に盛り、保守層から反原発派まで幅広く支持を得た。

 10月の新潟県知事選は、主役が次々と入れ替わる異例の展開をみせた。
 現職の泉田裕彦氏が2月に4選出馬を表明したが、8月末になって突如撤退を表明。地元紙との度重なる衝突で
「自分の訴えが県民に十分に伝わらないから」という説明に多くの有権者が首をかしげる中、前長岡市長で自民・公明
が推す森民夫氏が中盤戦を独走した。
 ところが当選したのは告示6日前に出馬を決めた共産・自由・社民推薦の米山隆一氏だった。米山氏は東京電力柏崎
刈羽原発の再稼働に慎重だった「泉田路線の継承」を自称。「現状では再稼働は認められない」と強調し、原発を不安
視する県民の支持を集めた。森氏も再稼働には慎重だが、自公の推薦を受けたこともあり「いずれは再稼働を容認する」
との見方が広がった。
 ただ、三反園、米山両氏とも知事就任後は難しいかじ取りを迫られている。三反園氏は就任後、原発即時停止を九州
電力に2度求めた。九電は地震の影響を調べる特別点検などを示しつつも停止要請は拒否。その後は三反園氏の原発停
止への言及は減り、定期検査で停止した川内1号機の運転再開も「私に原発を稼働させるかさせないかの権限はない」
と事実上容認。川内1号機は12月8日に運転を再開した。

 米山氏は今のところ原発絡みで大きな動きはない。ただ非自民系の知事とあって、県議会で圧倒的多数を占める自公
勢力に対処しながらの、厳しい県政運営を迫られている。

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 結局、首長選で盛り上がるのは、住民の安全・安心を争点とする政策課題への方針の違いが、候補者間で
明確で争点になったときくらい・・・。
あるいは、カネをめぐるレベルの低い辞任騒動を受けてのもの・・・。(恥)

 でもその後は、どちらかというと、議会で行政が進められていくという感じではなく、首長と自治体が組
んで地方行政=地方政治が進められていく・・・。
首長党主流派の無所属議員が、そこに便乗しているだけ・・・。
そんな風景・光景でしょうか・・・。

今年は、都議会議員選挙がある年。
小池都知事が、新党を結成し、地方政治の在り方に一石を投じるのですが、その石が大きな波紋を描き、
少しは他の地方政治に影響を与えることができるか。
それとも単に東京という特殊な自治体の、特殊な出来事で終わってしまうのか・・・。
少しは期待したいのですが、果たしてどうなるでしょうか・・・。

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※記事中の資料を転載させて頂きました。

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【『地方議員の逆襲』構成】
はしがき
第1章 なぜ、地方議員が問題なのか
第2章 地方民主主義と地方議員 
第3章 地方議員の待遇
第4章 地方議員と選挙
第5章 地方議会、地方議員は変われるか
第6章 地方議員の政策形成入門
第7章 「大阪都構想」と地方民主主義
終 章 地方からこの国を新しくする

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【『地方議員の逆襲』から:ブログリスト】
「はしがき」

第1回:保育・介護など身近な問題を地方自治・地方創生との関連で考えていく
第2回:存在感が薄い地方議会と地方議員の職務怠慢
第3回:全国1788自治体の地方議会議員総数3万3438名の内、女性議員1割の現実
第4回:ボーナスが出る地方議員報酬。大阪府の議員定数削減・報酬引き下げをモデルとすべき
5回:
教科書の世界に止まる民主主義、地方民主主義

第1章 なぜ、地方議員が問題なのか
第6回:地方議会・地方議員について何も知らない自分
第7回:地方分権で増す地方議会・地方議員の役割責任と現実
8回:地方議員も人の子、というのは甘すぎますか?
第9回:地方議員の政務活動費は、使途を公開し、成果を評価されるべき
第10回:初の女性都知事誕生を、女性議員比率向上の好機に!
第11回:小池新東京都知事と都議会議員との透明性をめぐる闘いに期待!
第12回:政務活動費=政活費は、議員の生活費?
第13回:公職としての地方議員の義務・責任のあり方
第14回:生活費と政活費の区別ができない富山市議。同類は他地方議会にも
第15回:地方首長選出方式の改革による地方自治改革を考える
第16回:右肩下がりの地方選投票率。政務活動費問題が投票率アップにつながれば・・・
第17回:岡崎市議選投票結果で考える地方市議会・地方自治の今後
第18回:トランプ新大統領選出で囁かれる民主主義の危機は、地方政治では?

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当ブログのカテゴリーの一つが<地方>。
地方創生・地方再生問題を多面的に捉えて、その在り方を考えていくもの。
これまで『ローカル志向の時代』『地方創生の正体』『地域再生の失敗学』の3冊を参考に
『ローカル志向の時代』から『地方創生の正体』から『地域再生の失敗学』から
の3つのシリーズを投稿してきています。

その中で、地方創生・再生問題を考えるとき、必ず、国の政治と地方自治体の行政の在り方と
関連させて考えることが不可欠であることを認識。
加えて、別に運営するブログサイト<世代通信.net>介護相談.net>でテー マとしている
保育や介護問題等が、同様に、国の政治や地方自治体行政と関 係付けて考えるべきことも一
層強く認識。 それが、この「地方議員の逆襲』からシリーズを始めた要因です。

 

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