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いじめ

子のいじめ問題、親権者の法的権利と責任を考える:「いじめのない社会」実現を考える(9)

昨年から、 『「いじめのない社会」実現を考える』というシリーズを不定期的に投稿しています。

久し振りになりますが、2017/1/18付日経夕刊の掲載された、徳原聖雨弁護士による以下の一文から
考えてみたいと思います。
日経DUAL2016/12/28付の記事 のまとめです。

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 子がいじめ被害、法的手段は可能?
 悪質か、子ども目線で判断 
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自分の子どもがいじめに遭っていると分かった時、親ができることは何なのか。
被害が深刻になった場合、家庭だけの対応に限界を感じることも少なくない。
いじめの加害者や学校を訴えるなど、法的手段を使うことはどこまで可能なのか。
実例とその対応方法を、弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士に聞いた。

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  子どものいじめで学校や相手を訴えられるかどうかという相談を受けることは少なくない。

 今のいじめは、暴力などではなく「言葉」によるいじめが圧倒的に多いです。
「死ね」「クズ」「ゴキブリ」「キモい」など、本人を前にした悪口やLINEでの誹謗中傷などです。
 暴力だと身体にアザが残るなどするので、周りに知られてしまうのを避けたいという考えがあるのかもしれません。

 いじめがそこまで悪質ではなく、子どもが登校できている場合には、しばらく様子を見るということもあり得るで
しょう。ただ、悪質かどうかは親ではなく子ども目線で考えるべきです。決して自分の物差しで考えないようにして
ください。

 登校できていない場合には、子どもの教育を受ける権利を守る必要がありますので、法的に何かできないかを検討し
たほうがいいかもしれません。

 例えば、「いじめ防止対策推進法」という法律に基づいて、弁護士から学校に対して、いじめの事実があったかどう
か調査するように求める、などです。

 いじめの事実が認められた場合、加害者の生徒に対しては、傷害罪などで刑事告訴と不法行為による損害賠償請求を
することが考えられます
 以前は警察も、子どものいじめについての捜査には積極的ではなかったのですが、最近はいじめによる自殺などが報
道されるようになったことで、暴力や物を隠されるなどのいじめの場合は、警察も動いてくれることが多くなってきま
した。それだけ、いじめ問題が深刻化しているということです。

 損害賠償額は、被害者生徒が自殺してしまったなど深刻な事態に至っていない場合は、そこまで大きな額にはならな
い可能性があります。
 被害者生徒としては、お金よりも、自分のなかで区切りをつけるためや、加害者生徒が何の責任も取らずに大人にな
るのは許せないから請求したいという気持ちの方が大きいかもしれません。

 いじめる側を転校・退学させることは可能かという相談もあります。

 まず、学校に対しては、いじめの実態をより詳細に調査することを求めましょう。
 生徒へアンケートをとったり、直接聞き取りをしたり、などです。
また、被害者生徒が安心して教育を受けられるよう、別室授業やクラス替えなどを求めてみてもいいかもしれません。

 被害者生徒の親のなかには、学校に対して「加害者を転校させてほしい」と希望する方が多いでしょうが、法律上は
できません。
 公立の小学校・中学校は、児童生徒に対して退学処分を下すこと自体が法律上、禁止されています。
 私立の場合であっても、退学処分には強制的に加害者生徒を排除するという側面があることから、退学処分が違法と
評価されてしまう危険もあります。学校が退学処分を下すか否かの判断は、学校にとっても非常に難しいです。

 代替的なものとして、加害者生徒を出席停止としてもらうように求めるということはあり得るでしょう。

 我が子がいじめに遭うと、親は子どもの身辺雑記があれこれ気になりがちになります。
 ただ、本人は親に何も語らないことも多い。そこで、自分の子ども宛ての手紙が届いた時、勝手に開封してしまうケ
ースもある。法律上の問題はないかという相談もある。

 刑法には、信書開封罪というものがあります。他人の手紙はもちろん、家族であっても、無断で開封してしまうと罪
が成立する可能性があります。
 ただ、実際には家族間の場合には実際に訴えることは少ないでしょうし、実際に警察に被害を訴えたとしても事件と
して扱われない可能性があります。家族のことは家族で解決するように、といった具合です。

 では、どのような場合に正当な理由があるといえるのでしょうか。子どもが未成年の場合、親は親権者ということに
なります。
 親権者には、子どもが正しく成長するように見守りサポートする義務があります。
 そのため、親権行使の範囲内ということであれば、正当な理由があるといえます。
 とはいえ、親子といえどもお互いのプライバシーがあります。
 普段から、何かあったら話しあえる親子関係をつくっておくことが大切なのかもしれません。

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 徳原聖雨弁護士:東京・大阪・名古屋などに拠点を持つ『弁護士法人・響』の福岡オフィス支店長。
福岡県弁護士会所属。子どもの権利委員会、法教育委員会、消費者委員会、精神保健委員会所属。
交通事故・離婚・相続・借金問題など民事案件を主に扱う。
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 「悪質かどうかは親ではなく子ども目線で考えるべき」。
というコメントですが、「子ども目線」という用語は、非常にあいまいです。
 子どもの受け止め方自体が、子どもによって異なるでしょうから、何が悪質で、何が悪質でないか、どこからどこま
が悪質で、どこまでが悪質でないか、など一律に決めることが難しいはずです。

ですから、子ども目線というよりも、当人目線の方がよい。
 しかしその当人自身が、その思い・感情をダイレクトに外に向かって発することをためらったり、できなかったりも
するわけです。
 そこをどう察知するか、気づくかの課題が、親子関係や、子と教師との関係においてあるわけです。

なお、いじめ問題を語るとき、子どもが小学生なのか、中学生なのか、それとも高校生レベルのことなのか、子の学
校・学年レベルで、考え方や対応が異なるはずで、この文では、その観点からの区分・違いにはまったく触れられてい
ないことで、内容がぼやけてしまっていることが気になります。

 私は、いじめ問題においては、いじめを受ける子どもサイドでの対応・対策よりも、むしろいじめる側の子どもへの
親や学校、警察など地域社会の関心・対応を重視すべきと考える者です。
自分の子どもがいじめを受けているのでは、と子どもの言動に注意を払うのと同様、他の子どもをいじめてはいない
か、と心配もしてみる・・・。
多くの親は、自分の子どもに限ってそんなことあり得ない、と思うでしょうが、人間の精神構造には、そうした感情
や性向がまったくないとは断言できない・・・。
いじめを受ける子どもの親としての親権の行使の反対側には、いじめ行動を起こす子どもの親権者として責任を問わ
れる可能性もある。そのことを認識しておくべきなのです。

 また、教員も学校も、そうしたいじめ行動を起こしそうな子ども、いじめの性向を感じさせる言動を示している生徒
への関心を持ち、防止する働きかけをすることも責任としてあるわけです。

 警察は、未成年者の非行、犯罪に対して捜査や抑止のための業務を担当する責任を負っており、その業務を通じて、
学童へのいじめや犯罪への対策・対応などにより、社会的責任を果たすことになります。
いじめを受けている子どもへの関心以上に、いじめを起こしそうな、そうした性質・成功を持つ子どもへ関心を傾け、
いじめの防止、いじめ行動を起こさない子どもの教育とその方法についての議論を高めるべきではないかと考えます。

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