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人口減少

人口減少に無関係の労働生産性向上による経済成長をめざす:『人口と日本経済』<人口減少と日本経済より>(6)

2016年12月下旬から
人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長』(吉川洋氏著・2016/8/25刊)
を用いながら、人口減少と高齢化社会、日本の閉塞感を解消すべく、経済学者の知見を
参考に考えるシリーズです。

「第2章 人口減少と日本経済」からスタート。
第1回:西暦4211年10月11日、日本に子どもが一人だけになる(日本の子ども人口時計)
第2回:超高齢社会の要請としての社会保障と社会の責務
第3回:財政赤字の抜本的対策はインフレ政策ではなく構造改革で
第4回:構造問題としての財政赤字は、構造改革の最優先課題
第5回:人口減少・地方消滅の論拠は、女性人口の減少に

今回は、第6回です。

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 第2章 人口減少と日本経済(6)
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明治の都市人口ランキング

この項では、この書にある資料を用いずに、ネットで検索した資料から一部を抜粋したものを引用転載します。

都市人口推移

明治時代は、農業が産業の基盤であったために、北陸や山陰、東北などの都市人口が上位にあったことを示しています。
その後の時代を変遷するなかで、工業化その他の要因がもたらした、現在の大都市への人口流入と蓄積の集中度がはっ
きりとこの表で示されています。
この項の最後に、筆者はこう括っています。

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政府は、「都市から地方へ」と旗を振る。確かに、「東京への一極集中」には問題がある。
 しかし、人口の移動を上からの号令によって変えようとしても限界がある。そこにはなにがしかの合理性がなければ
ならない。

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<経済成長を決めるのは人口ではない> 

財政・社会保障や地域の将来に人口減少が大きな影響を与えることは、以上見たとおりだ。
 人口減少は21世紀の日本にとりまさに大問題だが、それは経済の「成長」に一体どのような影響を与えるのだろうか。
 人口が減る、ということは働き手の数が減っていくということだ。したがって、これからの日本経済はよくてゼロ成長、
おそらくはマイナス成長を覚悟しなければならない。こう考えている人が多いのではないだろうか。「右肩上がり」の経
済の時代は終わり、これからは「右肩下がり」の時代が始まる。こうしたフレーズをよく目にする。実際、企業の経営者
は「人口減少の続く日本国内で設備投資をする気になれない」と言う。
 1930年代にケインズも、人口の減少するイギリスではもはや投資にあまり期待できない、と言っていた。
 問題は需要と供給、二つの面がある。

 まず、サプライ・サイドを考えよう。
 働き人の数が減れば、つくられるモノの量も減るに違いない。これは分かりやすい理屈であり、否定すべくもない「鉄壁
の論理」であるように思われるかもしれない。しかしこの議論には、実は大きな論理の飛躍があるのである。
 一国で1年間につくり出されるすべてのモノやサービスの価値(正確には「付加価値」)の総計を表すのがGDP(国内総
生産)だが、その成長率は、決して働き手(労働力人口)の増加率だけで決まるものではない。

 明治3年(1870)から100年あまりの日本の実質GDPの推移を比較する。
 戦後の成長が大きく目立つが、戦前についてもGDPと人口の成長は大きく乖離している。
 明治の初めから今日まで150年間、経済成長と人口はほとんど関係ない、と言ってよいほどに両者は乖離している
 経済成長率と人口の伸びの差、これが「労働生産性」の成長にほかならない。
 労働生産性の伸びは、おおむね「1人当たりの所得」に相当する。労働力人口が変わらなくても(あるいは少し減っても)、
1人当たりの労働者がつくり出すモノが増えれば(すなわち労働生産性が上昇すれば)、経済成長率はプラスになる。

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※次回は、<イノベーションの役割> です。

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 「働き人の数が減れば、つくられるモノの量も減るに違いない。これは分かりやすい理屈であり、否定すべくもない「鉄壁
の論理」であるように思われるかもしれない。しかしこの議論には、実は大きな論理の飛躍があるのである。」

この「鉄板」ならぬ「鉄壁」論理の紹介から入るのは、いささか読者をバカにしているように思えたのですが・・・。
企業に勤める人ならば、生産性、あるいは労働生産性、あるいは、より高いマネジメントが浸透している企業組織では、
付加価値生産性を高めることを、仕事で必要とし、求められ、その実現に日々努めているでしょう。
従い、経済成長・企業の成長とは、量的な増加だけを意味するのではなく、生産性を軸にしてみることで評価すべきことを
理解している人々も多いはずです。
しかし、一部の経営者や管理職、中堅幹部・社員には、そのことを理解せず、いまだに、いたずらに数量・金額の合計結果
だけにこだわる人も多いのも事実。
いや、もしかしたら、経済成長を第一の命題・政策とする政治家・官僚のなかに、生産性向上が総量・総額の増加そのもの
を意味し、それなくして経済成長なし、と考えている者もいるかもしれない・・・。

就業者人口の減少に悩む、農業などの分野においては、こうした、一人当たり、面積当たり、機械一台当たり、そして時間
当たりといった、何かしらの単位当たりのアウトプット、成果を上げることを成長の物差しにして、やり方・働き方を変える
ことに焦点を当てるようにしていきましょう。

ドローン端末
※なお、この項で用いられた資料は、本書掲載物でしか見ることができなかったため、その資料のエッセンスのみ処理して
引用し、文章だけの説明にしました。

 

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<<第2章・構成>>

・日本が消える?
・超高齢社会の社会保障
・財政破綻の危機
・財政赤字はなぜ拡大し続けているのか
・市町村が消える?
・明治の都市人口ランキング
・経済成長を決めるのは人口ではない
・イノベーションの役割
・ソフトな技術
・高度経済成長の時代
・AI、ITは人間の仕事を奪うか
「第3次産業革命」とインダストリー4.0

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(参考)
2016/12/25付日経で発表された「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」。
最低が、2400円、最高が3900円という価格の9冊と共に、唯一新書版で
760円(税別)のこの『人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長』が、第7位に。

ベスト10の残りの書をいかに紹介しておきたいと思います。


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【吉川 洋氏・プロフィール】
1951年、東京都生まれ、東京大学経済学部卒業後、イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D)
ニューヨーク州立大学助教授、大阪大学社会経済研究所助教授、東京大学助教授、
東京大学大学院教授を経て、立正大学教授。東京大学名誉教授。
専攻はマクロ経済学。
著書多数(後日紹介します)

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