2

グローバル情勢

ポピュリズムとその定義の多様性・柔軟性:『ポピュリズムとは何か』から(2)

従来の政治と社会をひっくり返すような米国トランプ新大統領の政治。
選挙戦で公約として掲げた政策を、矢継ぎ早に大統領令で発効し、グローバル社会に大きな波紋を起こしています。

トランプ政治を最新の象徴的事例ともされる、グローバル化した「ポピュリズム」を考えてみたいと思い、昨年12月
に刊行されたベストセラーの
ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』(水島治郎氏著)を参考に
して考えるシリーズを2月から始めました

 

では、「ポピュリズムとは何か』から」シリーズ、「第1章 ポピュリズムとは何か」から始めます。
第1回:米国トランプ政治等現状のグローバル社会を照らし合わせながら読む『ポピュリズムとは何か』

今回は、第2回です。

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 (2) 二つの定義
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 それでは、そもそもポピュリズムとは何なのだろうか。この問題を考えるにあたっては、まずその定義を
行うことが必要である。そこでポピュリズムの定義を整理したうえで、本書で採用する視覚を示しておこう。

 ポピュリズムについては、大まかに分けて、これまで二種類の定義が使われてきた。
第一の定義は、固定的な支持基盤を越え、幅広く国民に直接訴える政治スタイル
ポピュリズムととらえる
定義である。この立場をとる論者としては、政治学者の大嶽秀夫や吉田徹などが挙げられる。

 たとえば大嶽秀夫は、ポピュリズムを政治指導者による「政党や議会を迂回して、有権者に直接訴えかける
政治手法」としている。また吉田徹は、「国民に訴えるレトリックを駆使して変革を追い求めるカリスマ的な
政治スタイル」を
ポピュリズムとする。そしてポピュリズム政治家とは、それまでの政治スタイルに変化をも
たらし、斬新な政治手法wお採用することで、国民に幅広くアピールすることに成功した指導者たちを指すと
いう。吉田がそのような
ポピュリズムの主な例として挙げ、分析するのは、日本の中曽根政権、イギリスのサ
ッチャー政権、フランスのサルコジ政権、イタリアのべルルスコー二政権などである。
なお日本では、新聞をはじめとするジャーナリストにおいても、
ポピュリズムをこのような「指導者が大衆
に直接訴える政治」の意味に用いることが多い。

 第二の定義は、「人民」の立場から既成政党やエリートを批判する政治運動をポピュリズムととらえる定義
である。ポピュリズム研究者として名高いカノヴァンらがこの定義をとり、日本でも、政治学者の野田昌伍、
島田幸典、古賀光生らがこれに近い。
すなわち
ポピュリズムとは、政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層(および社会の支配的
な価値観)を批判し、「人民」に訴えてその主張の実現を目指す運動とされる。ここではエリートや「特権層」
と、「人民」(あるいは「民衆」「市民」)の二項対立が想定される。そして変革を目指す勢力が「人民」を
「善」とする一方、エリートは人民をないがしろにする遠い存在、「悪」として描かれる。ここで主に例とし
て挙げられるのは、フランスの国民戦線、オーストリアの自由党をはじめとする、いわゆる
ポピュリズム政党
である。近年の政治学では、この定義を取る立場が多いように見受けられる。

 この点で、フランスの思想家、ツヴェタン・トドロフの指摘は興味深い。彼によれば、ポピュリズムとは伝
統的な右派や左派に分類できるものではなく、むしろ「下」に属する運動である。既成政党は右も左もひっく
るめて「上」の存在であり、「上」のエリートたちを下から批判するのが
ポピュリズムだというのである。

 以上のように二通りの定義があるが、大まかに言えば、前者はリーダーの政治戦略・政治手法としてのポピ
ュリズムに注目するのに対し、後者は政治運動としての
ポピュリズムに重点を置く。そのためこの二つの定義
については、どちらが正しい定義というものではなく、また、相互に排他的とも限らない。実際、大嶽秀夫や
吉田徹のいずれもが、「エリート批判」としての
ポピュリズムについても言及している。分析対象の違いに応
じて、ポピュリズムの定義が異なることもありえるだろう。

039

※次回、<「エリートと人民」の対比を軸に> に続きます。

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2つの定義。
第2章以降で各国・各地域でのポピュリズムの姿が描かれる時、ほとんどにおいて、既成政党自体がポピュリズム
政党の政策に近づき、逆に、ポピュリズム政党自体が、既成政党の政策に近づく傾向があるとされています。

ですから、単純に、2種類の定義分類にポピュリズムを委ねていいものかどうか・・・。
疑問を持ちます。

「人民」や「住民」「国民」に直接訴える手法とは、どういうことか・・・。
例えば、既成政党自体が、世論を喚起し、世論調査での支持率動向を見ながら、政局運営に活用する。
これも、一種のポピュリズム的政治手法を取っていると見做すことができます。

そう考えると、単純に2義化することには、私は疑問を持ちます。
住民・市民・国民に迎合するかのような政治手法を用いることもポピュリズムの一種。
特に、選挙での支持を得るために、政権獲得・政権保持のために、本来持ちえない政策・方針を打ち出す政治手法を
用いることもその範疇に入れて認識すべき・・・。

ポピュリズムは、かなり、多様で、節操もない手法まで包含していると見做すべきではないか・・・。
線引きがあいまいになり、論点もぼやけてしまうリスクも高いですが、そうした疑問を持ちながら、ポピュリズムの
表と裏を見ていきたいと思います。

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【『ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』構成】

第1章 ポピュリズムとは何か
第2章 解放の論理 ー 南北アメリカにおける誕生と発展 -
第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌
第4章 リベラルゆえの「反イスラム」 -環境・福祉先進国の葛藤
第5章 国民投票のパラドクス ー スイスは「理想の国」か
第6章 イギリスのEU離脱 - 「置き去りにされた」人々の逆転劇
第7章 グローバル化するポピュリズム

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 【水島治郎氏・プロフィール】
◆1967年東京都生まれ、東京大学教養学部卒業、99年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了
 博士(法学)。甲南大学助教授、千葉大学法経学部助教授などを経て、現在千葉大学法経学部教授。
 専攻はオランダ政治史、ヨーロッパ政治史、比較政治
◆著書:『戦後オランダの政治構造 -ネオ・コーポラティズムと所得対策』(東京大学出版会・2001年)
『反転する福祉国家 -オランダモデルの光と影』(岩波書店・2012年、第15回損保ジャパン記念財団賞)
『保守の比較政治学 -欧州・日本の保守政党とポピュリズム』(編、岩波書店・2016年)

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なお、昨年12月、日経に3回にわたって掲載された「広がるポピュリズム」というテーマでの3人の学者
の小論を本シリーズのプロローグとして1月に紹介しました。
◆第1回:ポピュリズムの多様性・多義性から引き出される主体性・自立性への期待?:日経「広がるポピュリズム」から(上)
◆第2回:リベラリズム・反リベラリズム、2つの原理の揺れと民主主義の幅:日経「広がるポピュリズム」から(中)
◆第3回:歴史は繰り返す。トランプ現象にも前例:日経「広がるポピュリズムから」(下)
お時間がありましたら、チェックしてみてください。

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