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地方・観光

2000年地方分権改革は機能しているか?:『地方議員の逆襲』から(25)

地方議員の逆襲』(佐々木信夫氏著・2016/3/20刊)
を参考にしながら、地方創生と地方自治・地方行政とを関連付け、合わせて
国と地方の<政治>について考えるシリーズです。

「第2章 地方民主主義と地方議員」に入っています。
第19回:政活費が流行語大賞に選ばれなくてよかった!?地方議員、冷や汗の2016年
第20回:増える住民投票が意味する、地方議会・議員・首長・自治体不信
第21回:好都合の無所属議員。その意味・意図は?
第22回:2017年、都議会議員選で地方政治が変わるか?
第23回:地方議員も、働き方改革の中での、一つの、一時期の職業の選択肢に
第24回:「地方自治・地方行政基礎講座」で学ぶ、地方議員のあり方

今回はその第7回、通算第25回です。
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 第2章 地方民主主義と地方議員(7)
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<明治、そして戦前><戦後、そして現在> を省略しています。
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2000年の地方分権改革
 (一部略)2000年の地方分権一括法(475本の一括改正)の施行により、機関委任事務制度
全廃され、各自治体とも8割近くが自治事務化され、自己決定領域が飛躍的に拡大した。
2割の法定受託事務を含め、議会は10割領域について審議権を手に入れることになる。問題
は運用、意識のレベルが付いていけるかどうかだ。
それまでの各省大臣の地方機関として、国の委任業務を多く処理するよう位置付けられた知事、
市町村長は、公選職でありながらあたかも大臣の部下であるように通達で縛られ、補助金によっ
て統制されていた。各省の仕事が大臣→知事→市区町村長というルートで地方機関(法的な位置
付け)へ回され、結果として都道府県の業務の8割近く、市町村業務の4割近くが機関委任事務
で占められていた。

 議会には8割近くを占める機関委任事務について、審議権条例制定権予算修正権も与えら
れておらず、機関委任事務の執行に関する「監視権」のみ使える状況下にあった。これでは地方
議員自らが、地方議会は「チェック機関」だと確信せざるをえない。中央集権のメリット、つま
り全国に統一性、公平性を担保する、国が強いリーダーシップを発揮するために、もうひとつの
政治機関である地方議会を排除してきたとも言える。

 2000年の地方分権改革によって、上級官庁、下級官庁といった国からの法的統制や通達による
統治構造は大きく変わり、基本的に都道府県も市区町村も8割近くが固有の自治事務を有する自
治体となった。これで2割の法定事務を含め、地方議会は各自治体の10割の仕事について審議
権を持ち、予算修正権をもち、条例制定権を有するのである。

 ただ問題は、こうした制度改革を現在生かせているかどうかだ。地方議会が従来型のチェック
機関だという発想なら何の進歩もない。地方議会は決定者、監視者、提案者、集約者として、チ
ェック機関から「立法機関」へのパラダイム転換が求められている。これに応えることが議会改
の本丸であり、各議員に求められる役割行動である。

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※次回、<地方議会における与党と野党>に続きます。

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 ちょうど、別のブログサイト<世代通信.net>で、小池都政における保育行政について、各
区の政策とも重ね合わせて、自治体としての東京都の政策について、考えたところです。
保育所増設、利用者・保育士支援の小池都知事保育行政が促す、子育て世代の流入と女性就業者数増加 (2017/2/6)
東京各区、待機児童対策で、ベビーシッター保育制度拡充:小池都政が加勢 (2017/
2/7)

財政豊かな東京都と各区のこうした自由度の高い、住民の支持を受けられる保育政策は、人口
減少に悩み、財政問題も根底に抱えている地方自治体にとっては、羨ましい限りでしょう。
まさに、自治を実践できる自治体と、自由度を持たない自治体との自治・政策の差が、記事の
裏側に隠されているわけです。

また、<介護相談.net>
介護費抑制成果で地方自治体に使い道フリーの交付金支給:飴とムチ政策の矛盾 (2017/2/7)
として紹介したブログ。
こちらは、今回の項のテーマである、地方分権改革以前の、国と自治体との関係のあり方が、
本質的には変わっていないことを端的に示す(悪)例と言えるでしょう。
否、より陰湿になり、機関委任事務を通り越して、<機関抑圧威嚇事務>のようにさえ感じ
させる気がするのですが、どうでしょうか。

このシリーズに戻るに当たって、少し前、日経の【経済教室】で地方自治に関する小論が2回
にわたって掲載されました。そこでも、2000年の地方自治改革を取り上げて、現状の問題点
を展開しており、本書と重ね合わせて、興味深く読むことができます。
次回、その1回目、江藤俊昭・山梨学院大学教授による「地方自治制度の課題(上)」を紹介
したいと思います。

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【『地方議員の逆襲』構成】
はしがき
第1章 なぜ、地方議員が問題なのか
第2章 地方民主主義と地方議員 
第3章 地方議員の待遇
第4章 地方議員と選挙
第5章 地方議会、地方議員は変われるか
第6章 地方議員の政策形成入門
第7章 「大阪都構想」と地方民主主義
終 章 地方からこの国を新しくする

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【『地方議員の逆襲』から:ブログリスト】
「はしがき」

第1回:保育・介護など身近な問題を地方自治・地方創生との関連で考えていく
第2回:存在感が薄い地方議会と地方議員の職務怠慢
第3回:全国1788自治体の地方議会議員総数3万3438名の内、女性議員1割の現実
第4回:ボーナスが出る地方議員報酬。大阪府の議員定数削減・報酬引き下げをモデルとすべき
第5回:教科書の世界に止まる民主主義、地方民主主義

第1章 なぜ、地方議員が問題なのか
第6回:地方議会・地方議員について何も知らない自分
第7回:地方分権で増す地方議会・地方議員の役割責任と現実
第8回:地方議員も人の子、というのは甘すぎますか?
第9回:地方議員の政務活動費は、使途を公開し、成果を評価されるべき
第10回:初の女性都知事誕生を、女性議員比率向上の好機に!
第11回:小池新東京都知事と都議会議員との透明性をめぐる闘いに期待!
第12回:政務活動費=政活費は、議員の生活費?
第13回:公職としての地方議員の義務・責任のあり方
第14回:生活費と政活費の区別ができない富山市議。同類は他地方議会にも
第15回:地方首長選出方式の改革による地方自治改革を考える
第16回:右肩下がりの地方選投票率。政務活動費問題が投票率アップにつながれば・・・
第17回:岡崎市議選投票結果で考える地方市議会・地方自治の今後
第18回:トランプ新大統領選出で囁かれる民主主義の危機は、地方政治では?

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【佐々木信夫氏・プロフィール】
◆中央大学教授。1948年岩手県出身。早稲田大学大学院政治学研究科修了。
 慶應義塾大学にて法学博士取得。
 東京都企画審議室などを経て、聖学院大学教授、94年から現職。
 日本自治創造学会会長。地方制度調査会委員、大阪府・市特別顧問など兼任
◆専門は行政学、地方自治論
◆著書:『人口減少時代の地方創生論』『新たな「日本のかたち」』
『東京都政』『日本行政学』『現代地方自治』『道州制』『地方議員』など多数
◆テレビ、ラジオ出演、新聞・雑誌でのコメント、各地での講演も多数

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当ブログのカテゴリーの一つが<地方>。
地方創生・地方再生問題を多面的に捉えて、その在り方を考えていくもの。
これまで『ローカル志向の時代』『地方創生の正体』『地域再生の失敗学』の3冊を参考に
『ローカル志向の時代』から『地方創生の正体』から『地域再生の失敗学』から
の3つのシリーズを投稿してきています。

その中で、地方創生・再生問題を考えるとき、必ず、国の政治と地方自治体の行政の在り方と
関連させて考えることが不可欠であることを認識。
加えて、別に運営するブログサイト<世代通信.net>介護相談.net>でテー マとしている
保育や介護問題等が、同様に、国の政治や地方自治体行政と関 係付けて考えるべきことも一
層強く認識。 それが、この「地方議員の逆襲』からシリーズを始めた要因です。

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