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グローバル情勢

注目を集める日米首脳会談。安倍政治も一種のポピュリズム政治?:『ポピュリズムとは何か』から(5)

一緒にトランプ大統領とゴルフをやる・・・。
特別待遇・厚遇と米国のみならず世界のマスコミが注目する安倍総理の訪米。
初日の形式的・包括的合意形成と確認のためのホワイトハウスでの首脳会談と共同声明発表
をまずはつつがなく済ませました。
安保問題は、既に先日のマティス国防長官訪日時の会談で、今回の落としどころは決まって
いたもの。特段、目新しいものはありません。
問題は経済。
これは、米国政府の担当閣僚がまだ未承認で、今回の会談に加わることができないため、や
はり方向・基本方針ベースの確認を行うことで、双方の意思が共有されたわけです。
具体的な交渉は、トランプ政権の全閣僚体制が出来上がってからと言えます。

米国などマスコミは、安倍首相とトランプ大統領の関係は、特別で、他の諸国及びその首脳
との関係とは異質なもの、という論調です。

私自身は、当初から、安倍政治も一種のポピュリズム政治と考えています。
その視点をもって、これからも、日米関係のみならず、安倍首相の政治を、このシリーズと
並行して見ていきたいと思っています。

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トランプ政治を最新の象徴的事例ともする、グローバル化した「ポピュリズム」を考えてみ
たいと思い、昨年12月に刊行されたベストセラー
ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』(水島治郎氏著)を参考にして
政治社会などを考えるシリーズです

「第1章 ポピュリズムとは何か」
第1回:米国トランプ政治等現状のグローバル社会を照らし合わせながら読む『ポピュリズムとは何か』
第2回:ポピュリズムとその定義の多様性・柔軟性
第3回:米国トランプ・ポピュリズムの異種性と人民種性
第4回:米国トランプ政治は、異種・新種ポピュリズム

前2回は、同じ表現がタイトルに付いてしまいました。
今回は、第5回です。

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 (6) ポピュリズムは民主的?
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 次に、本章のテーマである、ポピュリズムとデモクラシーの関係について検討してみよう。
先に述べたように、ポピュリズムをポデモクラシーに敵対的な政治イデオロギーとし、ポ
ピュリズム政党を反民主主義的な政党とする見方は今も強い。
ポピュリズムは「民主主義の
病理」「討議ではなく喝采を優先」「カリスマ指導者の独裁」などと理解されることが多く

いわゆるデモクラシー論でも、正面から検討の対象とされないのが普通である。
またヨーロッパの文脈では、ポピュリズム政党は右派政党であることが多く、極右由来の
ポピュリズムもあることから、ポピュリズムはデモクラシーに対して否定的・批判的である
と見られがちである。

 しかしポピュリズムの主張の多くは、実はデモクラシーの理念そのものと重なる面が多い
 ポピュリズムの比較検討を行った政治学者のミュデとカルトワッセルは少なくとも理論
上は、人民主権と多数決制を擁護する
ポピュリズムは、「本質的に」民主的であるとする

 それはなぜか。ポピュリズム政党においては、国民投票や国民発案を積極的に主張する傾
向がある。
オーストリア自由党は、国民投票に広範な導入、首長の直接選挙などを主張し、フランス
の国民戦線も、国民投票や比例代表制導入を通じた国民の意思の反映を主張してきた。また
スイス国民党は、国民投票の制度を積極的に活用し、しばしば成功を収めている。
このような直接民主主義的諸制度は、まさにデモクラシーの本来のあり方に沿うものであ
り、「反民主主義」と一概にいうことはできないだろう

 現在、西欧のポピュリズムでは、右派であっても民主主義や議会主義は基本的な前提とさ
れており、暴力行動を是認する、いわゆる極右の過激主義とは明らかに違う。
ポピュリスト
の多くは、少なくとも主張においては、「真の民主主義者」を自任し、人民を代表する存在
と自らを位置付けている。

 そのように見ると、各国のポピュリズム政党が標的とするのは、民主主義それ自体という
よりは、代表者を通じた民主主義、すなわち代表制民主主義(間接民主主義)である、とも
いえる。ポピュリズム研究で名高いタガートが述べるように、代表制の枠内で議論するより
も、代表制そのものに対する反発が、
ポピュリズムの根底にある。

 ポピュリズム政党は、代表者=政治エリートが市民の要求を無視し、自己利益の追求に専
念している、と批判する。そして島田幸典が的確に指摘するように、市民の要求を実現する
回路をポピュリズム政党が真剣に求めていると見なされることで、むしろポピュリズム政党
の主張が妥当性・正統性を獲得している面もある。ミュデたちの表現を使えば、ポピュリズ
ムは、まさにデモクラシーの存在そのものによって生み出された存在なのである

 現代日本の代表的なポピュリズム政治家とも目された橋下徹・前大阪市長もまた、先に述
べたように、しばしば「民主主義」をもちだして自らの主張を根拠づけ、住民投票の実現を
訴えた。彼の政治スタイルは、従来の保守政治家とは大きく異なるものであり、それゆえに
支持者は保守層を越えて広がり、また進歩的とされる著名人の支持も一定程度得ることがで
きた。大阪都の是非を問う住民投票で敗れた橋下は、投票結果を受けて政界引退を表明した
深夜の会見でも、次のように語っている。

 「負けは負けです。戦を仕掛けて・・・・こちらがたたきつぶされた。これが民主主義な
んです」

 橋下において、そのポピュリズム的手法とデモクラシーは、違和感なく接続していたよう
である。
しかしそれではなぜ、ポピュリズムとデモクラシーの関係について、正反対の解釈が成り
立つのだろうか。

1

※次回、<近代デモクラシーの二つの原理> に続きます。

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テレビという媒体をベースに知名度を高め、政治に転身して後も、それをフルに、活用して
劇場型政治を展開した橋下氏。
身の下のスキャンダルも、自らの一面をさらけ出す効果に変えたことなど、従来の政治家で
はありえないプロセスを描き、政治ショーを演出し、一幕を閉じたわけです。
盛んに、安倍首相が、彼にボールを投げかけ続けているのは、自分と重なる点を見いだして
いるからでしょう。ポスト安倍が登場しない安心、自信、慢心もあり、早々に総裁三選のレー
ルを敷くことに成功したゆえに、余裕で、橋下の復帰を待っている状況が、見え隠れします。
(心待ちにしている、というようなことでもありません。)

次元が違うTV界上がり?の橋下氏にはあまり関心がないのですが、著者水島氏の評価が高い
ことに少々驚いたので、敢えてお付き合いして触れました。

保守そのものの政治家、安倍氏。
そのポピュリズム性を支え、具現化する要素の一つは、立ち回りの速さとうまさにあります。
対抗がいない、他の追随を許さない、のです。
この状況は、そうそうのことでは揺らぎそうもない・・・。
見ていられない危ういトランプ政治とは正反対なのですが、どちらも、一種のポピュリズム。
ポピュリズムは便利なのです。
そして危害が及ばない限りは、面白い!
その多義性のゆえに・・・。

3

 

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【『ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』構成】

第1章 ポピュリズムとは何か
第2章 解放の論理 ー 南北アメリカにおける誕生と発展 -
第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌
第4章 リベラルゆえの「反イスラム」 - 環境・福祉先進国の葛藤
第5章 国民投票のパラドクス ー スイスは「理想の国」か
第6章 イギリスのEU離脱 - 「置き去りにされた」人々の逆転劇
第7章 グローバル化するポピュリズム

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【水島治郎氏・プロフィール】
◆1967年東京都生まれ、東京大学教養学部卒業、99年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了
 博士(法学)。甲南大学助教授、千葉大学法経学部助教授などを経て、現在千葉大学法経学部教授。
 専攻はオランダ政治史、ヨーロッパ政治史、比較政治
◆著書:『戦後オランダの政治構造 -ネオ・コーポラティズムと所得対策』(東京大学出版会・2001年)
『反転する福祉国家 -オランダモデルの光と影』(岩波書店・2012年、第15回損保ジャパン記念財団賞)
『保守の比較政治学 -欧州・日本の保守政党とポピュリズム』(編、岩波書店・2016年)

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昨年12月、日経に3回にわたって掲載された「広がるポピュリズム」というテーマでの3人の学者
の小論を本シリーズのプロローグとして1月に紹介しました。
◆第1回:ポピュリズムの多様性・多義性から引き出される主体性・自立性への期待?:日経「広がるポピュリズム」から(上)
◆第2回:リベラリズム・反リベラリズム、2つの原理の揺れと民主主義の幅:日経「広がるポピュリズム」から(中)
◆第3回:歴史は繰り返す。トランプ現象にも前例:日経「広がるポピュリズムから」(下)
お時間がありましたら、チェックしてみてください。

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