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地方・観光

空間経済学という耳慣れない視点は地方創生とどう結びつくか:日経「産業集積による地方創生」から(1)

2017/2/14から日経【やさしい経済学】欄で、
「産業集積による地方創生」と題したミニ講座が、8回にわたり、大久保敏弘慶応義塾大学
教授執筆で連載されました。
2回ずつ紹介していきたいと思います。

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  1.グローバルな観点が重要 (2017/2/14)   
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 近年、地方創生が日本経済の重要な課題となり、どう地方で産業を活性化させるかに注目が
集まっています。
少子化と産業空洞化に伴って人口が流出し、多くの市町村が将来消滅するとした増田寛也氏
の『地方消滅 – 東京一極集中が招く人口急減』は人々に衝撃を与えました。

その後、藻谷浩介氏の『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』や冨山和彦氏の
なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』などが、地方再生のために日本
経済の根本や日本人の発想をいかに変えるべきか提言しています。
同様に多くの有識者が地方の実情や地域戦略を検証し、地方創生への提言をしています。

 
 本連載は地域動向や政策事例の検証ではなく、国際経済学や空間経済学の視点で、どのよう

に産業集積を形成すれば地域経済、ひいては日本経済全体が活性化できるのかをグローバルな

観点を入れて考察します。

近年のグローバリゼーションで多くの先進国はどうやって国際競争に勝ち抜くか考えるよう

になっており、その一つの政策として産業集積の形成があります。


産業集積とは産業や企業が特定の地域に集中することをいいます。

情報産業の米シリコンバレーや自動車のデトロイト、精密機器のスイスの諸都市、日本では

東京都大田区や神奈川県川崎市の機械産業、福井県鯖江市のメガネ、愛知県豊田市の自動車な

ど枚挙にいとまがありません。非常に身近で、経済学では古くから研究されてきました。

 産業集積地では効率が上がり経済成長を促進することがよく知られています。
A・マーシャルの外部経済」として知られているように産業集積地では豊富な熟練労働者
や中間財へのアクセスが容易で、技術のスピルオーバー(波及)や技術革新が起きやすい。
またM・ポーターによれば、人材・インフラなどの要素条件、需要条件、関連・支援産業、
企業戦略の相互作用によって技術革新が起こるとしています。
これらが産業集積の源泉となります。

 J・ジェイコブズが言ったように、産業集積では多種多様な産業の相互作用により「外部経済」
が生まれるともいえます。

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  2.生産性の高い企業、都市に集中 (2017/2/16)   
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 産業集積は古くから研究されてきましたが、近年、飛躍的に進んだ分野に空間経済学があります。
 国際貿易論と都市経済学の融合であり、どのような要因で産業集積ができるのか、輸送費の低減
がどう企業立地を変えるのかなどを分析しています。
 藤田昌久京大名誉教授やP・クルーグマン教授らが先駆的な研究を行いました。

 その後、欧州統合の諸問題に答えるべく、空間経済学は欧州で大きく発展しました。
 統合によって輸送費が下がり、企業も人も立地を選択できるようになりました。
 その結果、ドイツやフランス、英国といった中心国に産業が集中し、スペインやギリシャなどの周
辺国では産業空洞化が進み、失業率が上昇しました。

 ここでは単純に、規模の経済と輸送費から産業集積の形成を説明します。
 輸送費が高ければ、個々の地域で生産し、地元で販売します。
 逆に輸送費が低ければ一地域に企業が集中し、規模の経済を生かして生産し他の地域に輸送します。
つまり生産が一極に集中して産業集積が形成されます。
 既存の研究ではこのように集積と分散を「企業数」の面から分析してきました。

 しかし最近の研究では、企業数のみならず、「質」つまり企業の生産性で集積を分析する流れが出
てきています。「企業の異質性」の下での分析と呼ばれています。
 企業は個々に生産性が異なり、市場での行動や立地も異なるため、産業集積を生産性の面から分析
するようになってきました。

 筆者はR・ボールドウィン(ジュネーブ高等国際研究所)教授とともに発表した一連の論文で
空間ソーティング・セレクション」を理論的に明らかにしました。
 これは都市部には生産性の高い企業が集まり、生産性の低い企業は地方に立地し、さらに輸送費が
低くなるほど、都市と地方の生産性の格差が広がっていくというものです。

 少子高齢化・人口減少社会の日本では、産業集積は企業数の多寡ではなく、「質」が重要になります。
 少数でも国際的に通用する精鋭企業の結集が肝心です。
 企業の異質性を考慮した空間経済学は地方創生への重要な分析の一歩になるといえるでしょう。

電7

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大久保敏弘・慶応義塾大学教授:ジュネーブ大学博士。専門は国際経済学、空間経済学

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まず、空間経済学、という耳慣れない用語。
その基本要素は、輸送費。
輸送費がかかるのは、モノと人。
ここで、産業集積をテーマとした経済学は、モノが構成要素を大きく占める産業を対象としているのか
とまず想像・推察することになりました。
初回の産業集積都市の事例で、非製造業は、米シリコンバレーのみ。
そこでは、人の輸送費が低い(安い)ことを要因にしているのでしょうか、少々違和感を持ちましたが。

2回目の論では、輸送費を要素とした企業の「数」ではなく、「質」が重要な要素になる、と展開。
しかし、生産という用語を用いており、そこでの付加価値が、輸送費がかかるモノ、原材料、中間材の
質で向上し、生産性が高いアウトプットを生み出す、というような一般的なロジックに単純に戻している
わけでもありません。

とすると、その生産性を上げるのは、人、か・・・。
一般的に大都市は住宅等生活コストが高く、そこで高い生産性を実現するには、それを生み出す質の高い
人を確保することが求められることになります。

とすると、人の輸送費もかかるわけで、当初の産業集積の条件に矛盾が見られるのです。
そこで持ちだした「企業の異質性」とは、空間経済学上で、どのように定義し、基準化するのか。
3回目以降で、地方創生のための空間経済学とはどういうものなのか、納得のいく形で提示されるでしょ
うか。
楽しみ半分、懐疑半分・・・。そんな感じのスタートと読みました。

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