1

エネルギー問題

「風力よ、お前もか」。電力行政の矛盾と混迷の長期化で増す、国民と新規事業者の負担と損失

現在のみならず、ずっと将来にまで社会に重大な影響をもたらす環境・エネルギー問題。
原発問題のみに眼が行きがちですが、より広く、複眼的な視点で、この問題を認識し、
取り組むべきと考えています。
最近のブログでは、以下を投稿。

ネガワット取引導入で省エネ・原発停止分カバー、という発想の矛盾 (
グローバルレベルで再生エネのコスト低下:日本のエネルギー政策の致命的な誤り・遅れと問題が顕在化・加速化する (2017/1/31)

今回は、「風力よ、お前もか!」と思わず、心のうちで叫んだ、
2017/2/22付日経【真相深層】欄のレポートを紹介します。

------------------------------------------
 風力、ネックは送電網  経産省、買い取り価格引き下げ 事業者の開発意欲に水 
------------------------------------------

 風力発電に逆風が強まっている。
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)開始から建設計画が相次ぐが、
風が強い建設適地の東北地方で送電線不足の問題が浮上する。
2016年12月には買い取り価格が17年度から下がる案が決まった。
送電線の増強には10年程度かかる可能性があり、事業者の開発意欲に水を差している。

「開発意欲に水」という次元の問題じゃないですよね。
送電できて当たり前という前提で、開発しているはず。

 「送電網接続の投資が増えるのに買い取り価格が下がるのは厳しい」。
東北で風力発電開発を進めるジャパン・リニューアブル・エナジーの安茂会長はため息
を漏らした。

 経済産業省の有識者会議は現在1kW時あたり22円の風力発電の買い取り価格を17年度
から3年間、毎年1円ずつ下げる案を決めた。逆風は価格だけではない。

 「いま、東北のあらゆるプロジェクトがストップしている」。
昨年10月下旬、東京・永田町の自民党本部で開かれた「再生可能エネルギー普及拡大議
員連盟」の会合。
米風力発電大手、パターンエナジーが出資するグリーンパワーインベストメント(GPI)
の堀俊夫社長は窮状を訴えた。

 指摘したのは青森、岩手、秋田など東北北部での風力発電計画の遅滞。
発端はその5カ月前。地域の送配電網を運営する東北電力が突然、「東北北部における
系統状況変化について」と題した書面を公表した。

「増強に10年」

 発電所の新設計画が一定段階まで進むと、発電事業者は地域の大手電力に送配電網への
接続を申し込む。受け入れは先着順。
発電所で作った電気は周辺で使い切らなければ、より高圧の基幹送電線で需要地に送ら
れる。

 東北電によると、12年のFIT開始以降、管内で太陽光や風力の新設が相次いだ。
このため宮城県沿岸北部を含む東北北部と、同南部をつなぐ基幹送電線の一つに物理的
にこれ以上電気を送り込めなくなった。
新たに基幹送電線を作らなければ、東北北部に発電所を新設しても接続できなくなると
いう。

 GPIは岩手県岩泉町と宮古市にまたがる地域で国内最大規模の20万kW、総事業費400
億円の風力発電所を計画する。
環境影響評価(アセスメント)をほぼ完了し東北電力に送電線への接続を申し込んだが、
10年かかるとされる基幹送電線の増強を待たなければならなくなった

 事情はほかの事業者も同じだ。
「今、新規の開発費用の支出を止めている」。
別の風力発電事業者は東北北部で環境アセスに着手したが、追加の設備や土木関連の設計
を止めた。20年だった開業目標も23年に延期。
「いま撤退したら数億円の損が出る」と試算するが、それも現実味を帯びる。

不透明な運用

 東北北部は北海道と並んで風が強い。
青森、秋田、岩手の3県で、環境アセス手続きに入っているのが50カ所以上、最大400万
kW規模の風力発電所の計画がある。送電線問題はこの開発機運に大きな影を落とす。

 空いている送電線がないわけではない。
東通原子力発電所(青森県東通村)や新設を計画する原発向け高圧送電線がすでにある。

 東通原発は東日本大震災以降停止中で原発から電気は通っていない。
ある開発事業者幹部は「4車線の高速道路がガラガラなのに、莫大な費用で真横に1車線
増やそうとしている」とたとえる。

 名古屋大学大学院の高村ゆかり教授は「送電網のどこにどれだけの電気が流れているのか、
情報開示がされていない」と指摘。
再生可能エネルギーの導入拡大には送電網運用の透明性を高める必要があるとし「送電網
の整備計画をきちんと立てなければならない」。

 東北電は「個別の案件については答えられない」としている。
が、関係者の間では基幹送電線がいっぱいになったのは秋田県で関西電力と丸紅が計画す
る出力130万kWの石炭火力発電所の接続が受け入れられたからだ、とささやかれる。

 「先進国で石炭火力を進めているのは日本だけ。温暖化対策のために優先すべきなのはどち
らか明らかなはずだ」。風力事業者の疑問は解けそうにない。

(庄司容子記者執筆)

電源構成
※記事中の資料を転載させて頂きました。

--------------------------------------

「ああ言えば、こう言う」、「あちらを立てれば、こちらが立たず」・・・。
一億総モラトリアム社会の無責任行政が、闊歩しています。

今回の記事には、国や行政が出てきません。
民間事業者間の問題。
日経記者もその程度の理解・認識なんでしょうか・・・。

電力自由化、地球温暖化対策のための電源構成・・・。
そして原発問題・・・。
エネルギー・電力事業と利用者との関係のあり方は、すべて国の政策・規制・法律により
決められているのです。
太陽光・風力・地熱・バイオマス・・・。
再生可能エネルギーの固定買取価格制の上げ下げも、その設置認可手続きも、国・自治体の
行政、許認可の下のもの。
当初高め設定で、新規事業者・新電力の参入を促し、途中から、しれっとその価格の引き下
げに転じた。
これからの太陽光発電事業は陽の目を見ることができるのか・・・。
そして、風力発電も買い取り価格の下げに・・・。
欧米諸国は、それらの電力開発コストの低減にひた走り、その成果を想定外の速度であげつつ
ある。
アフリカに広がる再生可能エネルギー発電:現地太陽光発電・風力発電事業で後れを取る日本の事情 (
グローバルレベルで再生エネのコスト低下:日本のエネルギー政策の致命的な誤り・遅れと問題が顕在化・加速化する (2017/1/31)
石炭消費、欧米で急減:日本のエネルギー政策の矛盾と好対照の再生可能エネシフト化。2017年の道。 (2016/12/30)

一方、ご当地日本では、なんと既得権大手電力会社が、送電網の利権をしっかり握り、新電力を
いじめている。
これは、行政・経産省が民間事業者をいじめているのに等しいのです。
そうした事情は、本来、電力の完全自由化を推し進めるプロセスで、必ず早期に解決すべき課題
と分かりきっているはずだからです。
知らぬでは済むはずがない。
自由化の意味・定義がまったく異なる・・・。
本質的には、不自由化なんですね。

結局、国民・住民・利用者ファーストではなく、国有化状態にある東電を含む、既存大手電力会
社と、なんとか原発事業の存続を願う大手原発事業会社ファーストを守る政治・行政の、為すところ
なのです。
次世代、未来に対する責任感がない・・・。

こうした政治を打破するのが、野党の役割と思うのですが、あまりに事が大き過ぎて、きっと手に
余るのでしょう、民進党には期待できそうもありません。
ただ脱原発を掲げるだけなら、子どもでもできる。
再生エネルギーのこの先の在り方を軸にして、コスト、環境など総合的に勘案し、国民の理解を
得られる政策を提言できるか・・・。

先日、党のエネルギー問題を研究する会合で、意見を聞いたことがあるという藻谷浩介氏を、地元
選出の民進党議員が講師に招いたセミナーがあり参加しました。
その講演の軸の一つが、エネルギーの「地消地産」。
それもいいですが、より視点は、グローバルに、総合的に、複眼的に据えるべきです。
無論、藻谷氏のことですからそれは承知で、貿易赤字の最たるものは、中東からの原油輸入にある、
というところからの提言だったのですが・・・。

今日のこの文の最後は、民進党の頼りなさで締めようかと思っていました。
しかし、このブログを書き進めるため、日経電子版をチラ見していたら、なんと今日の記事に、
「「30年原発ゼロ」見えぬ道筋 民進内でも議論広がる」 と題したのがあったのです。
どういう風の吹き回しか、風のいたずらか・・・。
「ああ言えば、こう言う」ではなく、「渡りに船」で、次回紹介し、考えてみることにします。

8

 

 

WordPressテーマ「Chill (tcd016)」

ピックアップ記事

  1. 養殖鯖で、日本遺産「鯖街道」が復活するか:若狭湾・小浜サバのブランド鯖化に期待
  2. 中日新聞社説「原発ゼロへ再考を」を絶対支持!:「もんじゅ」の知恵は正しく使う! …
  3. 2016年4月電力小売り全面自由化へ、異業種間提携進む(1):電力・ガス大手の事…
  4. 横浜市、間接業務の民間委託化が示す、行政改革の一つのモデル
  5. 「原発」というテクノロジーの意味を考えるべき:『さらば、資本主義』から(2)

関連記事

  1. 入学2
  2. テスラ2
  3. OCCTO
  4. 美少女1

    地方・観光

    自治体が就労を条件に、奨学金肩代わり。条件付き給付型奨学金に進化を!

    最近は、奨学金の返済が困難な若者の問題がクローズアップされ、給付型奨学…

  5. __ 3

    日記・随論

    ASUS、PC用アダプター故障で、ヤフオク落札に助けられる

    先日の体験ですが、仕事のクライアント先に持参し、ミ…

  6. 都心

    マーケティング

    不動産大手が電力小売り子会社作り、自社グループマンション向け販売

    2016/7/18 付日経で、これまでの電力小売り自由化に関するニュー…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

worldbanner2
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で
2018年2月
« 11月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  
  1. 浜岡原発

    エネルギー問題

    浜岡原発停止でも増益の中電:火力発電依存は課題を残す 
  2. 13

    エネルギー問題

    ガソリン車がなくなる日:ボルボ2019年製造中止、フランス2040年販売中止
  3. FCV-1

    再生可能エネルギー

    トヨタ、燃料電池車(FCV)で水素エネルギー利用促進で「水素カウンシル」設立、共…
  4. 地球1

    環境・エネルギー

    低調な電力切替率の原因は、さぼり行政が確信犯:日経<電力自由化の先>から(上)
  5. 学生1

    地方・観光

    地方国立大に「地域」学部設置相次ぐ。地方創生の起点に!
PAGE TOP