IT農業例4

日記・随論

失敗例も多い企業・農業法人による植物工場経営:これからの農業・再考シリーズ、再開へ

米国トランプ大統領のTPP排除政策により、日本の農業をめぐる報道の頻度が一気にしぼん
だ感があります。
そんな中、先日久し振りに、2017/3/19付日経で、着目しておきたい記事を見かけました。

-----------------------------------------
 農業で稼ぐ企業 ようやく 天候不順でもレタス1袋200円 八百屋買収、販路を拡大
------------------------------------------

衰退の危機にある農業の救世主とみられている企業参入と植物工場。
 だが実際は赤字の例が少なくなく、撤退することも多い
 そうしたなか、利益を出して成長する企業が現れ始めた。
 カギを握るのは、消費者の需要をつかんで生産するマーケティングの発想だ。

^^^^^^^^^^^^^^^^^

1日の出荷量2万1000株、スプレッドのフリルレタス植物工場

 首都圏のイトーヨーカドーにそのレタスはあった。
 しゃきしゃきした食感が特徴の「フリルレタス」。
 ちょっとおしゃれなレタスという感じだが、際立った強みを持つ。
 価格の安定だ。
 昨年10~11月に天候不順で一般のレタスが約400円に高騰した時、1袋200円をほぼ変えずに
済み、販売が倍増したのだ。

 このレタスをつくったのはベンチャー企業のスプレッド(京都市、稲田信二社長)。
 植物工場で生産した。
 1日の出荷量は2万1000株と、1工場当たりで世界最大級だ。
 2006年の設立以来販路をひろげ、13年度に黒字化を達成した。

 参入が多い植物工場だが経営は苦しい。
 日本施設園芸協会の15年度の調べでは、発光ダイオード(LED)などを使う植物工場の約56%
が赤字で、約24%は収支がとんとん
 天候に左右されず効率的なイメージがあるが、電気代など経費がかさむ
 15年6月には、注目を集めていた植物工場ベンチャーが破綻した。

 成功のカギは逆算の発想にある。
 稲田氏は野菜の市場間売買を手がける会社も経営しており、野菜の流通やスーパーの事情に詳しい。
店頭でいくらで売れるのかを考え、投資額や栽培の青写真を描いた」と語る。

 まず200円程度の価格を想定し、温度や肥料の管理で試行錯誤を重ねて日量1万8000株の損益分岐
点を突破。いったん黒字化すれば安定生産の強みをフルに発揮する
 年内にも完成する第2工場は日量3万株で、値段を160円程度に下げられると見込む

IT農業例3

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

失敗トマト栽培施設を再生したエア・ウォーター

 参入後、農業のバリューチェーンを築く動きもある。
 産業ガス大手のエア・ウォーターだ。
 09年に買収した北海道千歳市のトマト栽培施設は昨年度に続き、今年度も黒字の見通し。
 14年には近くの農場も買い取り、ニンジンなどを大規模に生産。
 さらにカボチャなどの収穫を各地で請け負うなど、農業ビジネスの裾野を広げている。

 同社にも販路を意識した流通の発想がある。
 青果物の加工・卸会社、冷凍野菜の製造会社、ジュースの製造会社、八百屋チェーンなどを次々に買収
 必要な青果物を確保するために農場を広げるとともに、様々な販路を用意して農業・食品事業を拡大し
ている。

 農業の企業参入もかけ声倒れで実態は厳しい
 すでに2千以上の法人が参入したが、平均面積はふつうの農家と同程度
 エア・ウォーターのトマト施設はオムロンが20年近く前につくり、採算が合わずに撤退したものだ。
 べつの会社が買収したが失敗し、今回は「三度目の正直」だった。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

 自民党の小泉進次郎農林部会長の登場で農政が脚光を浴びているが、農業の再生には民間の努力も不可欠だ。
 ところが多くの企業は本業の技術や経営ノウハウを応用すれば農業でもうまくいくと思って参入しがち。
 実際は投資が過剰で既存の農家より効率が悪かったり、売り先探しに苦労したりする例が多い

 落とし穴は「遅れた農業を変革する」という発想に潜む。
 本業同様、消費者の目線から出発し、生産性を高める地道な努力が欠かせない。

IT農業例
※スプレッドの京都府亀岡市の植物工場

(吉田忠則編集委員・執筆)

--------------------------------------

1日の出荷量は2万1000株」というのはすごいですね。
農産品製造業は、マーケティングも大事。
バリューチェーンの発想も不可欠。
平均面積が普通の農家と変わらないようでは、法人化と参入の意味があまりないでしょう。
しかし、失敗事例が出れば出るほど、その失敗は活かせるはず。
ムダにはならないでしょう。
むしろ早いうちに問題が発生し、原因が分かった方がいい・・・。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

ところで、実は以前、TPPをにらんで、
GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』(窪田新之助氏著・2015/12/17刊)
を紹介し、日本農業のこれからの可能性・期待について考えるシリーズを投稿していました。

そのシリーズも、2016/5/26投稿の
高齢者の離農と若い世代の就農で、新しい時代の農業へ:『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』から(13)
を最後に、10カ月近く中断。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
第1章 農業を殺した「戦犯」たち
第2章 世界5位を誇ったコメの実力
第3章 大進化するコメ農業の可能性
第4章 輸出産業となった日本農業
第5章 ロボットと農業参入者のシナジー
第6章 農業の「多面的機能」で世界に
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
という構成の第1章をもうすぐ終える、という状況のままで止まっています。

そして先日、同書の続編といえる、同じ筆者による
日本発「ロボットAI農業」の凄い未来 2020年に激変する国土・GDP・生活』(2017/2/21刊)
が発売されました。

希望的観測が先行しがちなこうした図書ですが、冒頭の記事のような実態も理解した上で
見ていくべく、4月からその紹介シリーズを始めたいと思っています。
なおその前に『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』シリーズの第1章の残りを、
今月中に取り上げて、一旦終わらせたいと思います。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
TPP問題がなくなったことは、一部の農政・農業担当者には歓迎すべきことだったでしょう
が、それで済むわけでは決してありません。
それよりも一層厳しい要求が、トランプ政権から打ち出され、苦境に立たされるリスクが
増す・・・。
その予兆というより、いよいよ現実的な動きが報じられた、2017/3/15付日経夕刊のワシ
ントン発・河浪武史記者による以下の記事
を今日最後に転載しておきたいと思います。

---------------------------------
 農業「日本が第一の標的」 米次期通商代表 市場開放交渉に意欲
---------------------------------
トランプ米大統領が米通商代表部(USTR)代表に指名したライトハイザー氏は3月
14日、米上院委員会の承認公聴会で「農業分野の市場拡大は、日本が第一の標的になる」
と主張した。
環太平洋経済連携協定(TPP)離脱後の政策方針を答えたもので、米国が今後の対日
協議で自由貿易協定(FTA)を求めていく姿勢が鮮明になった。

 ライトハイザー氏は1980年代のレーガン政権下でUSTR次席代表に就き、その後は鉄
鋼業界の顧問弁護士などを歴任してきた。
80年代には対日鉄鋼協議で日本に輸出の自主規制をのませた実績があり、トランプ大統
領が同氏の対外交渉力を高く評価している。

 14日の公聴会でライトハイザー氏は「日本が第一の標的になる」と強い言葉遣いで、農
産物の市場開放に向けた対日交渉に意欲をみせた。
米国はTPPからの離脱を決め、対日貿易では食肉や果物などの関税引き下げが実現でき
なくなった。
ライトハイザー氏は公聴会で、TPP参加国と2国間で通商協議する意向を示したうえで
「TPP交渉を上回る合意を目指す」とも主張した。

 日米は麻生太郎副総理・財務相とペンス米副大統領による日米経済対話を4月に始める予
定で、通商分野も議題となる。
米政権内でもUSTRは伝統的に日本の農産品の高関税を問題視しており、強硬的な交渉
姿勢で知られるライトハイザー氏がUSTR代表に就任すれば、日本側の警戒感が一段と高
まりそうだ。

 (中略)

 上院は多数派の共和党だけでなく、野党・民主党も保護主義的な通商政策を支持しており、
ライトハイザー氏は近く就任が承認される見込みだ。

----------------------------------------

こうした動きに関係なく、日本の農業は、新たな一歩を踏み出すべきであること、しっかり
認識し、新しい農産業を創出していくことになります。

WordPressテーマ「Chill (tcd016)」

ピックアップ記事

  1. 技能実習生に「もっと長く日本にいてもらえる」外国人技能実習制度に!
  2. 兵庫県養父市の農業特区でナカバヤシ等企業初の農地購入:遅過ぎる農業改革の象徴
  3. 無年金64万人救済改正法成立から考える、公平性確保と世代継承のための政治・行政・…
  4. 太陽光発電、未稼働560万世帯分失効。再生エネ政策失敗の建て直し策は?
  5. 高齢者の地方移住促進策「お試し移住」実施248自治体に移住体験施設。若い世代へ浸…

関連記事

  1. 収穫3

    マーケティング

    人口減少地域の農業改革で地方再生・地方創生を

    人口減少、少子高齢化と地方再生、地方創生課題は…

  2. 046
  3. オカザえもん親子

    マーケティング

    ゆるキャラブーム終焉は、ゆるやかに?それとも突然?:地方創生とコンテンツ創りの視点

    数年前から全国に乱立した地方自治体主導の「ゆるキャラ」4月4日…

  4. デコポン
  5. 大農3
  6. コンビニJA

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

worldbanner2
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で
2018年2月
« 11月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  
  1. 010

    地方・観光

    地方創生と党利党略・政局との関係から考えるべき地方政治・行政のあり方:『地方創生…
  2. AustralianO

    ATPツアー

    2017全豪オープンに臨む、男子プロテニス世界ランキング5位錦織圭:今期の課題と…
  3. 7

    政治

    対極としての若者世代デモクラシーとポピュリズムを韓国事情で考える:『シルバー・デ…
  4. win-1-8

    スポーツ

    錦織圭 試合速報:2015ウィンブルドン1回戦、怪我再発も3-2で辛勝。2回戦出…
  5. 5

    グローバル情勢

    歴史は繰り返す。トランプ現象にも前例:日経「広がるポピュリズムから」(下)
PAGE TOP