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政治

未だ実現されていない普遍的民主主義を追求すべき日本の使命:『シルバー・デモクラシー』から(9)

シルバー・デモクラシー――戦後世代の覚悟と責任』(寺島実郎氏著・2017/1/20刊)。
筆者とほぼ同世代で前期高齢者のシルバー・デモクラシー世代に属する私が、本書を紹介し
共に考えながら思うところをメモしていくシリーズです。

「第1章 戦後民主主義の総括と新たな地平 -「与えられた民主主義」を超えて」
第1回:2017年3月11日に思う昭和、平成、そして来る次の時代
第2回:与えられた戦後民主主義の理解とその後の懸念、そして今
第3回:70年安保・全共闘世代、団塊の世代の責任とは?
第4回:かち得た民主主義ではなく、与えられた民主主義的国家日本
第5回:思想と現実の統合を構想できなかった全共闘・団塊世代とその後
第6回:団塊の世代責任と体たらく民主党責任は同根?
第7回:課題・問題を抱える民主主義の改善を可能にする仕組み作りの責任
第8回:劣化した代議制民主主義、復活のシナリオ作りを期待したい人たち

今回は、その第9回、第1章の最終回です。
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  戦後民主主義 成熟した国民国家
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戦後70年を経て、戦後民主主義と並走してきた日本人の本音は、普遍的価値としての
「民主主義」など存在するのかという冷ややかな心理である。
代議制民主主義が機能せず、空疎な職業政治家の巣窟となっているという現実、さらに、
「プロレタリア独裁」を正当化する社会主義体制は冷戦の終焉と共に色褪せ、共産党一党
支配の下での中国の「人民共和国」体制にも共感できない中で、我々はどのような民主主
義を目指すべきなのか。

戦後民主主義は確かに与えられた民主主義かもしれないが、今その真価が根付くか否か
の試練の時を迎えている
 安保法制から憲法改正に至る「国権主義的国家再建」と「軍事力優位の国家への回帰」
を試みる勢力という明確な敵に対峙しているからである。
 民主主義への「国民の不断の努力」(憲法12条)が求められるその時なのである。

 戦後日本という過程を生きた者が、後世に何を引き継ぐのかが問われている
 21世紀の日本は、中国と対抗できる軍事力と経済力を持った専制国家ではなく、アジア
の安定軸としての敬愛される成熟した民主国家でなければならない。

 

6

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戦後民主主義と並走してきた日本人の本音」 と筆者が表現する日本人。
どの程度の比率の日本人が、その枠の中に入るでしょうか・・・。

 「空疎な職業政治家の巣窟」 を作ってしまったのも日本人。
そうした職業政治屋を野放しにするどころか、長年擁護してきた体質を、多くの日本人
が未だにもっている。
しかも、その原動力になっているのが、事もあろうに、シルバー・デモクラシー世代で
もある。
言うならば、その行動に、冷や汗を感じてしかるべき世代が、冷ややかな心理を持つこ
となく、大義名分も十分理解認識せずに、空疎な民主主義を放任しているとも言えるので
す。
そうした認識を前提に、これからの社会の再構築を、寺島氏は考えるべきなのです。
彼の正論ゆえに、良識のゆえに、自分と同等のレベルの存在を前提とした議論ではない、
楽観的な試論に終わらぬように、望みたい。

 多くの省庁の種々の委員を務めてきていますが、そこでの業務が、果たして、氏の根源
的な主張を包摂して、何かしらの政策に強く反映されているか。
氏の懸念する日本のあり方に警鐘を鳴らし、各省や内閣府の政策に活かされてきたのか。

 否。
そうではないがゆえに、今回の第1章のまとめに表現された、懸念・危機を伝えざるを
えない・・・。

 大前氏も含め、著名な方々は、つど、自著にて、種々の提言を行ってきています。
いついつには、何々で、何々と主張し、提案してきた。
だがそれらは、聞いてもらえず、実行してくれず、だから、今こういう事態になってい
る。
こんな感じで、また新たな書をものにし、実行しなかった政治や社会に疑問を呈します。

 しかし、そうした書、提言は、政治において、特定の政党や候補者と共に行ったもので
はなく、具体的・現実的に政治・行政の当事者に参画して、取り組むことを約束したもの
でも当然なかった・・・。

 問題は、やはり、現実の政治を変えるためのツールとして、実際に活用できる方法・方
策を合わせもったものであったか、にあると考えます。
自ら政治に関わるか、特定の政治政党や政治家と組み、政策を掲げ、選挙活動に結びつ
け、望ましい民主主義の道筋を描き、実現する、直接もしくは間接的当事者になるか否か。

 危機感を持ち、執筆で力を発揮する種々の論者は、残念ながら、政治の世界のマーケテ
ィング、あるいは政治家を育成するマーケティングは不得意。
あるいは、
そういう発想を持っていないか、いなかったか・・・。
最近、そう考えることが多いのであります。

1
※次回からは、第2章・第3章をとばし、第4章に行きます。
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【『シルバー・デモクラシー――戦後世代の覚悟と責任』構成】
はじめに - 戦後日本のタイムカプセルを開くような考察の試みとして
第1章 戦後民主主義の総括と新たな地平 - 「与えられた民主主義」を超えて
第2章 戦後世代としての原点回帰 - 1980年という時点での自画像
第3章 それからの団塊の世代を見つめて - 21世紀に入っての2つの論稿
第4章 2016年参議院選挙におけるシルバー・デモクラシーの現実
      - なぜ高齢者はアベノミクスを支持するのか
第5章 2016年の米国大統領選挙の深層 - 民主主義は資本主義を制御できるのか
第6章 シルバー・デモクラシーの地平 - 結論はまだ見えない、参加型高齢社会への構想力 おわりに 

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【寺島実郎氏プロフィール】
◆1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、
三井物産入社。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産常務執行役員、
三井物産戦略研究所会長等を経て、現在は(一財)日本総合研究所会長、
多摩大学学長。
◆国交省・社会資本整備審議会計画推進部委員、経産省・
資源エネルギー庁
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員、農水省・「食と農の景勝地」
審査委員会委員長を務める。
◆著書:『脳力のレッスンⅠ~Ⅳ』『中東・エネルギー・地政学』『世界を知る力』他

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