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グローバル情勢

4月23日フランス大統領選結果から考えるポピュリズム:『ポピュリズムとは何か』から(20)

ポピュリズムの現状を評価する上で、政治・選挙の季節を迎えているヨーロッパ。
その第一の矢であり、砲弾でもあった、英国のEU離脱国民投票。
その影響の度合いを評価することでも注目された、フランスの大統領選挙。
果たして、反EUを掲げる極右、国民戦線を率いるマリーヌ・ルペンはどこまで得票を伸ばすか。
当初より、第1回目の投票で全投票の過半数を得る候補者は出ないと予想されるなか、では、
勝ち残る2人は、誰と誰か・・・。
4月23日行われたその結果は?

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トランプ政治を最新の象徴的事例ともする、グローバル化した「ポピュリズム」を考えてみ
たいと思い、昨年12月に刊行されたベストセラー
ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』(水島治郎氏著)を参考にして
政治と社会などを考えるシリーズです

「第1章 ポピュリズムとは何か」
第1回:米国トランプ政治等現状のグローバル社会を照らし合わせながら読む『ポピュリズムとは何か』
第2回:ポピュリズムとその定義の多様性・柔軟性
第3回:米国トランプ・ポピュリズムの異種性と人民種性
第4回:米国トランプ政治は、異種・新種ポピュリズム
第5回:注目を集める日米首脳会談。安倍政治も一種のポピュリズム政治?
第6回:デモクラシーと繋がるポピュリズム。双方が持つ多義性・多様性
第7回:常にラディカルとは限らないポピュリズム。トランプ政治は初めから末期的?

「第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌」
第1回:デモクラシー先進国、西ヨーロッパのポピュリズムを俯瞰する
第2回:気になるドイツのポピュリズム政党をめぐる最近の政情から
第3回:無党派層の増大は、デモクラシーの成熟か、劣化か?
第4回:エリートにも大衆にも属さぬ住民として
第5回:保守・右傾化というポピュリズムの広がりを懸念する
第6回:福祉排外主義にも一分の理。民主主義政治の課題として
第7回:4月に迫った仏大統領選、マリーヌ・ルペン候補の国民戦線の起源
第8回:フランスの国民戦線の根源・本質は誰にも理解可能
第9回:極右政党政権樹立の可能性が現実的になったオーストリアの政情

「第7章 グローバル化するポピュリズム」
第1回:シリア攻撃で確認できたトランプの米国ファーストの正体と義
第2回:忘れられた人々のポピュリズムは現実の政治で継続するか?
第3回:EU離脱英国との交渉で、EU、欧州議会・委員会のポピュリズム勢力はどう行動する? 

今回は、第7章の第4回(通算第20回)です。

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 7選挙制度とポピュリズム政党
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 なおポピュリズム政党が国政に進出するうえで、選挙制度の与える影響は大きい。
特に、新党が勝ち抜くことの難しい小選挙区制は、ポピュリズム政党に不利に働くことが多い。
北欧やベネルクスのような比例代表制の国々で、ポピュリズム政党が結党後早期にかなりの数
の議席を獲得したのに比べ、小選挙区制をとっているイギリスやフランスでは、今に至るまで、
ポピュリズム政党の議席獲得は極めて難しい状況にある。

 しかし国政レベルで泡沫扱いされた英仏のポピュリズム政党が一挙に複数の議席を獲得し、一
躍注目を浴びたのは、この欧州議会選挙であった。イギリス独立党、フランスの国民戦線のいず
れにおいても、比例代表制をとる欧州議会選挙で議席を得たことが、その後の発展につながった
のである。その意味で欧州議会選挙は、英仏のポピュリズム政党の存続を支えた貴重な機会とも
なった。ヨーロッパレベルで民意をくみとる数少ない経路である欧州議会が、結果としてポピュ
リズム政党に活路を開き、後に彼らがヨーロッパ統合に真っ向から反対する舞台を提供したこと
は、歴史の皮肉とでも言えようか。

 ポピュリズム研究で名高いタガートはすでに2000年のその著作で、EUのような国際組織の存
在が、ポピュリズムにさらなる展開の可能性を与えると指摘していたが、その予想がにわかに現
実を帯びてきたのである。

4

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 8.国民戦線の現代化
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このヨーロッパレベルのポピュリズムの広がりを考えるうえで重要なことは、ヨーロッパ統合を
原加盟国として推進してきた中核国、特にフランスとドイツの両大国において、ポピュリズム政党
をめぐり新たな展開が生じていることである。

 2002年の大統領選挙で決選投票に進出を果たし、地方選挙でも一定の成果を挙げるに至った国民
戦線であるが、それでも越えられない「壁」があった。創設以来党首を務めてきたジャン=マリー
・ルペンは、その右翼活動家としての経歴、反ユダヤ主義的な姿勢もあり、「極右」政治家のイメ
ージを払拭することはできなかった。彼が指導者にとどまる限り、国民戦線が幅広く有権者に受け
入れられ、10%強にとどまる得票率を引き上げることは難しかった。

 その国民戦線に新たな道を開いたのが、2011年に新党首に選ばれた、ジャン=マリー・ルペンの
3女のマリーヌ・ルペンである。
 マリーヌ・ルペンが目指したのは、国民戦線の「現代化」である。フランス政治研究者の畑山敏夫
が指摘するように、彼女は国民戦線の中に残る極右的な遺産を払拭し、党のイメージを改善すること
で、他のヨーロッパのポピュリズム政党のような幅広い支持を集め、政権獲得への道を開こうとした。
 彼女はグローバル化批判やEU批判を前面に出すとともに、ユーロクラット(EU官僚)によって置
き去りにされたフランスの民衆に配慮すべきことを訴える。

 特に彼女が重点を置いたのが、イスラム批判である。彼女はフランス共和主義の掲げてきたライシ
テ原則(世俗主義)に立ち、イスラム移民による『フランスのイスラム化」を問題視するとともに、
「政教分離を認めない」イスラムを批判するという論法をとる。かつての国民戦線は、カトリック伝
統主義の流れを汲み、フランス共和主義やライシテ原則にも否定的な立場をとっていたが、彼女はそ
の立場を逆転させ、フランス国民に広く受け入れられている共和制の原理を受け入れたうえで、イス
ラムを批判する。また彼女は、同性愛者やマイノリティの権利擁護も訴えつつ、同性愛やマイノリテ
ィの存在を認めないイスラムを批判する

 マリーヌ・ルペン自身、離婚経験があり、働きながら子育てをし、現在は事実婚生活を送るなど、
「現代的」なライフスタイルをとる女性である。女性をはじめ、幅広い有権者に一定の親しみを覚え
させることも不可能ではない。こうして彼女のもとで国民戦線は、その極右イメージを薄れさせるこ
とに成功した。欧州議会選挙での躍進は国際的な注目を浴びたが、2015年の地方議会選挙でも各地
で進出を果たしている。

 今や国民戦線は、一歩一歩ハードルを越えて極右の狭い世界を脱し、フランス政治における「3大
政党」の一角を占めるに至ったのである。


ルペン

※次回は、<ドイツのための選択肢> です。
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こうした経緯の下、どうなるか非常に注目され、選挙予想がたびたび報道され、直前には、決選投票
に残る候補2人が、反EUを掲げる、極右のルペンと最左翼のメランションになる可能性まで報じられ
た23日実施の仏大統領選。
その結果は、当初の予想であった、マクロン前経済相とルペンによる5月7日の決選投票に持ち込ま
れることになりました。
この結果に最もほっと胸をなでおろしているのが、ドイツのメルケル首相でしょう。
そして、この二人の対決予想では、マクロン氏の相当レベルでの優勢が伝えられています。

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 英国にしてもフランスにしても、ポピュリズムの核の一つが、「反移民」。
これまでのポピュリスムを巡る報道で、不思議に思うことが一つありました。
それは、イギリスにしてもフランスにしても、どちらも過去の歴史において、「植民地主義」を推し進
め、アフリカやアジアにおいて、覇権国・統治国であったこと。
そして、現地の人と結婚し、家族を形成し、文化や価値観の融合・共有化を図った経験を持った人がいる。
その経験や家族を自国に持ち帰り、現在に至っている。
即ち、異なる人種を受け入れ、融合し、共同体を形成してきたプロセスと歴史を持つことを意味する。
それがここに至って、なぜ反グローバリズム、反移民を標榜することに変化するのか?
この自己矛盾をどう説明するのか、という疑問です。

ポピュリズムの根源や背景が種々語られる中、忌まわしく、重い、ナチス・ドイツに絡む歴史と体験に
縛られつつも、より長い歴史を通じて、覇権国家として地球規模で君臨してきたヨーロッパの中軸国の立
ち位置をよくよく考えてみるべきでは・・・。
しかし、そのこと自体にほとんど意識が向かないこと、今という状態にのみ感情と評価の基準を置くし
かないこと・・・。
これこそが、ポピュリズムのポピュリズムたる所以ではないのか・・・。
いろいろ、ノスタルジックに良き過去、あるいは悪しき過去、を持ちだすことがあっても、それは今の
評価の正当性を主張するためだけのもの。
今を生きる人々には、今の自分こそが価値判断の基準でしかない。
そういう個々の思いを、ひとつに集約するのが、ポピュリズム政党とそのリーダーの手法ではないか・・・。
堂々巡りのようですが、今はそんな感覚で、政治の季節真っ只中の、現代の、今日という日に思いを致す
のです。

6

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【『ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』構成】
第1章 ポピュリズムとは何か
第2章 解放の論理 ー 南北アメリカにおける誕生と発展
第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌
第4章 リベラルゆえの「反イスラム」 - 環境・福祉先進国の葛藤
第5章 国民投票のパラドクス ー スイスは「理想の国」か
第6章 イギリスのEU離脱 - 「置き去りにされた」人々の逆転劇
第7章 グローバル化するポピュリズム

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【水島治郎氏・プロフィール】
◆1967年東京都生まれ、東京大学教養学部卒業、99年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了
 博士(法学)。甲南大学助教授、千葉大学法経学部助教授などを経て、現在千葉大学法経学部教授。
 専攻はオランダ政治史、ヨーロッパ政治史、比較政治
◆著書:『戦後オランダの政治構造―ネオ・コーポラティズムと所得政策』(東京大学出版会・2001年)
反転する福祉国家――オランダモデルの光と影』(岩波書店・2012年、第15回損保ジャパン記念財団賞)
保守の比較政治学――欧州・日本の保守政党とポピュリズム』(編、岩波書店・2016年)

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昨年12月、日経に3回にわたって掲載された「広がるポピュリズム」というテーマでの3人の学者
の小論を本シリーズのプロローグとして1月に紹介しました。
◆第1回:ポピュリズムの多様性・多義性から引き出される主体性・自立性への期待?:日経「広がるポピュリズム」から(上)
◆第2回:リベラリズム・反リベラリズム、2つの原理の揺れと民主主義の幅:日経「広がるポピュリズム」から(中)
◆第3回:歴史は繰り返す。トランプ現象にも前例:日経「広がるポピュリズムから」(下)
お時間がありましたら、チェックしてみてください。

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