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政治

モデルなき日本の長期停滞社会経済における処方責任は?:『「老後不安不況」を吹き飛ばせ!』<第1章>から(6)

今月4月から、新しいシリーズを始めています。
最新刊『「老後不安不況」を吹き飛ばせ! 「失われた25年」の正体と具体的処方箋
大前研一氏著・2017/3/31刊)を参考にして、日本のこれからの社会経済を考えていきます。

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 第1章 【問題提起編】
 「老後・将来不安」こそが、日本経済長期低迷の根本原因だ
   -世界に例のない「低欲望社会」に、二十世紀型の経済政策は通用しない-
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第1回:情緒的・願望型アベノミクスとスローガン型安倍政治の実相
第2回:的も矢も、まともでなかったアベノミクスは、評価基準も緩和・弛緩
第3回:夢と希望に満ちたアベノミクスの現状とこれから。誰も責任を取らない
第4回:円安・円高、どちらにぶれても揺るがぬ経済社会を創り上げる政治を
第5回:肉食系米国人vs草食系日本人?

今回は、第6回です。

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 6ポール・グルーグマンも白旗をあげた日本経済
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  安倍首相は2016年7月の参院選前に、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン教授
をわざわざアメリカから呼び寄せて、自分の経済政策の正しさを裏書きさせようとしていたが、
私にいわせればまったく無意味だ。
いくらノーベル賞経済学者だといっても、高欲望社会の研究しかしてきていないクルーグマ
ン氏に、低欲望社会の日本がわかるはずがないのである。
実際、彼は自分が ”異次元の金融緩和” を提言しておきながら、「想定している以上に量的
緩和の効果が出ない原因は、本質的かつ永続的な日本の需要の弱さに根差している」と、米紙
『ニューヨーク・タイムズ』(2015/10/20付)に敗北宣言ともいえるコラム(「Rethinking
Japan(日本再考)」を寄稿している。
クルーグマン氏の本音は、「あれだけ猛烈な資金供給をしたのに、なぜ物価も上がらず、
消費も伸びないんだ。日本の経済はまったくわけがわからない」といったところだろう。

5

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 7.日本経済の長期停滞は、世界に例のない「突出した先行事例」
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安倍首相は参院で勝利した直後、来日中だったベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会
(FRB)前議長を首相官邸に招き、金融・財政政策について話し合っていたが、これもま
ったく意味がない。
 バーナンキ氏は、そこに雇用が生まれるならヘリコプターからお金を撒いてもいいとい
うのが持論で、そのためヘリコプター・ベンと呼ばれている。
さすがにFRB議長時代は発言にも気を使っていたが、学者のころは「ロッキー山脈」を
平らにするだけでも経済効果がある」というようなとんでもないことを、しばしば口にす
るので有名だった。
ロッキー山脈を平らにするために一大公共事業をおこすとなると、そこには雇用が生ま
れるから、そういう意味では経済効果はたしかにあるといえる。だが、彼のそういった考
え方が日本経済の活性化につながるかというと話は別だ。

私は2016年の夏、趣味のバイクを駆って北海道を2000キロも走り回ったが、すでに至
るところにヘリコプター・マネーの痕跡がみられた。
 稚内からサロマ湖方面に半日走っても信号一つも引っ掛からない海岸沿いの道路があっ
た。人がいないから信号を設置する必要がないのだ。けれども道路はきれいに舗装されて
いてピカピカ。まさにヘリコプター・マネーのおかげである。
 それなのに、地元の経済はまるで活性化していない。安倍首相がバーナンキ氏の言葉を
真に受けてヘリコプター・マネー政策を採れば、こういう結果になるのは目に見えている。
 ヘリコプター・マネーが、余っているお金ならまだいい。しかし、日本でこの手のばら
まきをやるとなると、原資はすべて次世代からの借金にならざるを得ない。
 では、15年後、20年後の人がこの借金を、喜んで払ってくれるのか。税金の担い手は、
いつの時代も勤労世代。だが、日本のデモグラフ(人口動態)をみれば、今後勤労世帯の
人数は確実に減っていく。払おうにも払いようがない状況が訪れるのは明らかなのだ。
 だから、将来に負債を先送りするような政策は、政治家としてもつべき倫理からいって
も、絶対にやってはいけないのである。そういう意味でもヘリコプター・マネーは、まと
もな経済政策とはいえない。

 クルーグマン氏、バーナンキ氏だけではない。おそらく世界中のどの経済学者にきいて
も、日本経済長期停滞への処方箋を明快に答えられる者はいないだろう。
 なぜなら、私が「低欲望社会」と名付けた日本の昨今の状況は、これまでどこの国も経
験したことがない未曾有の状況だからだ。最近になってイタリアやドイツなどのヨーロッ
パの一部の国も似たような状況になってはきているが、日本はずっと以前から低欲望社会
に突入しているから、「突出した先行事例」といっていい。
 それならば、日本の状況を最もよく知る日本の経済学者が現状を徹底的に調べ、その有
効な解決策を提示すればそれこそノーベル経済学賞ものだと思うのだが、不思議と誰もや
らない。アメリカの学者の説を輸入・解説しているだけである。

人口動態201510

※次回、<日本の消費の中心は「おひとりさま」> に続きます。

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財政赤字の次世代への先送りに対して、厳しく批判する大前氏。
結構、富裕者・富裕層の視点からの主張・提言が多く、その点では、今一つ納得力・説得力に
欠けるのですが、その意見には、全面的に賛成です。

ただ、クルーグマンやバーナンキを批判したところで、彼らが政治実務を担当しているわけで
はなく、なんの意味も持ちません。
日本の経済学者もまったく頼りにならない・・・。

問題は、為政者自身と官僚・行政機構にあるわけです・・・。
ただ、そこも自ら変わるべき認識を持たず、政治と行政を変える気もなし・・・。
ならばどうするか・・・。
そこから、言うならばゼロから、政治の在り方を変える議員の選出とその政治課題の適切な
方策の構築、両方を現実化することに取り組むべき。
大前氏や、別にシリーズ化している『シルバー・デモクラシー』の著者、寺島実郎氏などが
旗振り役になり、SNSを活用して社会・世論構造改革に着手する。
まあ、そのためのリーダーグループのチーム組織化から始めるべきではないかと勝手に考え
ているのですが・・・。
もちろん、そこに、30歳代、40歳代、50歳代各世代のリーダーも参画すべきこと、言うま
でもありません。

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シルバー・デモクラシー――戦後世代の覚悟と責任』(寺島実郎氏著・2017/1/20刊)シリーズ。

「第1章 戦後民主主義の総括と新たな地平 -「与えられた民主主義」を超えて」
第1回:2017年3月11日に思う昭和、平成、そして来る次の時代
第2回:与えられた戦後民主主義の理解とその後の懸念、そして今
第3回:70年安保・全共闘世代、団塊の世代の責任とは?
第4回:かち得た民主主義ではなく、与えられた民主主義的国家日本
第5回:思想と現実の統合を構想できなかった全共闘・団塊世代とその後
第6回:団塊の世代責任と体たらく民主党責任は同根?
第7回:課題・問題を抱える民主主義の改善を可能にする仕組み作りの責任
第8回:劣化した代議制民主主義、復活のシナリオ作りを期待したい人たち
第9回:未だ実現されていない普遍的民主主義を追求すべき日本の使命

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本書の第2章を、別ブログサイト<世代通信.net>で同時進行でシリーズ化しています。

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 第2章 【問題解決編① 政府】
 老後不安を払しょくするために、政府は何をすべきか
   -「効果的かつ実現可能な解決策」はこれだ!-
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第1回:個人金融資産の平均値を前提とした議論・提言の無理加減:『「老後不安不況」を吹き飛ばせ!』<第2章>から(1
第2回:老後のお金の不安を取り除くことはできるか?国が行うべきことは?:『「老後不安不況」を吹き飛ばせ!』<第2章>から(2)
第3回:資産運用ができる資産を保有する高齢者はどれくらい居るのか?:『「老後不安不況」を吹き飛ばせ!』<第2章>から(3)
第4回:高齢者保有の不動産活用は、新たな価値を生む資産再形成:『「老後不安不況」を吹き飛ばせ!』<第2章>から(4)

チェックして頂ければと思います。
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ポピュリズムとは何か』『シルバー・デモクラシー』『人口と日本経済』『地方議員の逆襲』。
政治の劣化がもたらす社会の閉塞感が気になり、種々、このブログで、手に取りやすい最近の
新書を紹介しながら、将来につながる何かを、と考えてきています。

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