5

グローバル情勢

仏英独、EU・移民を巡るポピュリズム。日韓関係を巡るポピュリズム。2017年政治の季節とその行方:『ポピュリズムとは何か』から(21)

5月7日(日) フランス大統領選 決選投票
5月9日(火) 韓国大統領選
6月8日(木) 英国議会総選挙
9月24日(日) ドイツ連邦議会選挙

ヨーロッパを代表する3つの民主主義国家における、今年の選挙。
いずれも、EU問題、移民問題等を巡り、台頭するポピュリズム政党、ポピュリズム政治
の今後の趨勢を決める非常に重要な選挙となります。

韓国も過去の大統領選の経緯や投票動向などを考えれば、ポピュリズム政治を象徴する
代表的な国家と見做してもよいと思われる国であり、これも非常に注目すべきものです。
とりわけ、悪化している日韓問題とも直結する選挙であり、ポピュリズム性がどのよう
な形・結果として現れるか・・・。
そしてそれらの動向・結果が、日本の政治のポピュリズム性にどう影響していくか・・・。

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昨年12月に刊行されたベストセラー
ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』(水島治郎氏著)を参考にして
現代とこれからの政治・社会などを考えるシリーズです

「第1章 ポピュリズムとは何か」
第1回:米国トランプ政治等現状のグローバル社会を照らし合わせながら読む『ポピュリズムとは何か』
第2回:ポピュリズムとその定義の多様性・柔軟性
第3回:米国トランプ・ポピュリズムの異種性と人民種性
第4回:米国トランプ政治は、異種・新種ポピュリズム
第5回:注目を集める日米首脳会談。安倍政治も一種のポピュリズム政治?
第6回:デモクラシーと繋がるポピュリズム。双方が持つ多義性・多様性
第7回:常にラディカルとは限らないポピュリズム。トランプ政治は初めから末期的?

「第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌」
第1回:デモクラシー先進国、西ヨーロッパのポピュリズムを俯瞰する
第2回:気になるドイツのポピュリズム政党をめぐる最近の政情から
第3回:無党派層の増大は、デモクラシーの成熟か、劣化か?
第4回:エリートにも大衆にも属さぬ住民として
第5回:保守・右傾化というポピュリズムの広がりを懸念する
第6回:福祉排外主義にも一分の理。民主主義政治の課題として
第7回:4月に迫った仏大統領選、マリーヌ・ルペン候補の国民戦線の起源
第8回:フランスの国民戦線の根源・本質は誰にも理解可能
第9回:極右政党政権樹立の可能性が現実的になったオーストリアの政情

「第7章 グローバル化するポピュリズム」
第1回:シリア攻撃で確認できたトランプの米国ファーストの正体と義
第2回:忘れられた人々のポピュリズムは現実の政治で継続するか?
第3回:EU離脱英国との交渉で、EU、欧州議会・委員会のポピュリズム勢力はどう行動する?
第4回:4月23日フランス大統領選結果から考えるポピュリズム

今回は、第7章第5回(通算第21回)です。

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 9ドイツのための選択肢
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 次はドイツである。
そもそも西欧先進諸国のなかで、ポピュリズム政党が最も困難な障壁に拒まれてきたのが、ドイツ
だった。ドイツでは、議席獲得に得票率5%以上が必要とされるなど、小党乱立を防ぐ選挙制度が導
入され、新党の参入にハードルがあること、また反民主的政党が禁止され、右派的主張を政党が掲げ
ることに法的な制約があったことなどから、ポピュリズム的な新党が政治の表舞台に出ることに困難
があった。
しかもドイツでは、かつてのナチ台頭への反省から、正面切ったナショナリズムや排外主義的な主
張が忌避される傾向が強く、特に排外的なポピュリズム政党は社会的認知を受けることが難しかった
のである。

そのような状況下で2013年、新党(AfD:Alternative fur Deutshland)「ドイツのための選択肢」
が産声を上げた。
 この党の特徴として、中心メンバーに経済学研究者や中小企業経営者が多かったこと、特にEUへの
批判をベースとした、金融・通貨関係の主張に力点が置かれていたことが挙げられる。ドイツでは、
ギリシャによる粉飾決算の発覚をはじめとするユーロ危機を経て、ユーロやEUに対する不信が高まっ
ていた。ギリシなど金融不安を抱える諸国を救済するために、ドイツが負担を引き受けることに対し
ては、既成政党からも不満が出ていた。そして特にEUが欧州安定メカニズム(ESM)を創設し、ユー
ロ安定のためにユーロ参加国に金融支援を行う制度を導入しようとしたことに対し、ドイツの各界か
ら反発の声が上がったのである。

 このユーロ批判の広がりのなかで、「ドイツのための選択肢」は2013年4月に結成大会を開催し、
ユーロ解体、自国通貨の再導入などを明確に掲げた。初代党首には、ハンブルク大学の経済学者であ
るルッケ(Bernd Lucke)が選出された。それまで彼は、経済学者のネットワークを中心に、ユーロ
救済メカニズムの導入に反対する運動を展開してきたが、政治的な効果を上げるに至らず、自ら政党
を結成したのである。
 選挙をにらんだ急ごしらえの政党ではあったが、2013年の連邦議会選挙では得票率を7.1%に伸ば
し、7議席を獲得する。州議会選挙でも次々議席獲得を果たしており、2016年半ばの時点ですでに
16州のうち8州で議席を保持するに至っている。特にドイツ東部の州では、早くも2014年で州議会選
挙で得票率が10%を超える州が相次ぎ、その急速な浸透が目立っている。

 「ドイツのための選択肢」を支持したのはどのような人びとであろうか。野田昌吾は、既成政党へ
の有権者の幅広い不満をすくい上げることができたことが、その躍進を支えたと見る。実際同党への
投票者の67%は、既成政党への失望から 投票した人々だった。特に中道・保守系の有権者層におい
ては、キリスト教民主同盟(CDU)、自由民主党(FDP)などの既成政党に飽き足らない人々が、そ
の投票に走ったようである。実際、初代党首のルッケもCDUの青年部で活動し、しかし、その後、姿
勢の一貫しないCDUに失望したという体験を経ており、その意味では、既成政党への有権者の失望を
代表する人物でもあった。

 また旧東ドイツ地域においても、「ドイツのための選択肢」は多くの票を得た、依然として経済的
に遅れている東側では、もともと西側に軸を置く既成政党主導に政治に対する違和感があったが、東
側への投資よりもギリシャ支援を優先するドイツ政府のEU政策には特に反発が強かったことから、
「ドイツのための選択肢」の強い反ユーロ姿勢が共感を集めたのである。

2

※次回は、<反移民への傾斜> です。

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ギリシャの金融危機を発端とした、ドイツ国内でのユーロ、EUを巡る対立的な動きの発生
については、まだ記憶に残るところですね。
第二次世界大戦において、日本同様に敗戦国となったドイツ。
その悲劇的な歴史と、東西ドイツの統一という歴史上例を見ない壮大な出来事を経験して
きたドイツならではの政治経済社会が形成された今日。
それ故にポピュリズムに対する一種のアレルギー、拒絶反応、あるいは、自戒・自警の念、
種々入り混じってのプロセスを経てきたと言えましょうか。
それが、EU、ユーロを主導する国家として、国内から反対の声が上がり、反EU、反ユーロ
を掲げる国のひとつになってきたという矛盾、厳しさ、困難さ。
強い国ゆえの悩みであり、内に抱える悩みでもあります。

ここで気になるのはやはり、5月7日のフランス大統領選の第2回目の決選投票。

ドイツ自体については、9月24日の連邦議会選挙までまだ少し間があります。
しかし、EU離脱通告を終えた後のその交渉で予想され困難に対すべく、国内の合意形成・
一体化を狙って決定した5月のイギリス議会解散と選挙が、急遽6月に日程化。

フランス、英国の選挙結果がどう出て、それが、ドイツの9月の選挙にどう影響するか・・・。

3

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外国人労働者云々というレベルにとどまり、移民問題に真摯に向き合うことなく、グロー
バル化した世界・社会に身を置いてきた日本。
経済的な視点からEU問題の動向を注視するだけの日本。
ヨーロッパ動向よりも、むしろ韓国の動向が、日本の保守ポピュリズムに大きく影響する
ことは間違いなく、微妙なバランスとアンバランスが交差しながら、時間が経過し、事が
推移していきます。

2

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【『ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』構成】
第1章 ポピュリズムとは何か
第2章 解放の論理 ー 南北アメリカにおける誕生と発展
第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌
第4章 リベラルゆえの「反イスラム」 - 環境・福祉先進国の葛藤
第5章 国民投票のパラドクス ー スイスは「理想の国」か
第6章 イギリスのEU離脱 - 「置き去りにされた」人々の逆転劇
第7章 グローバル化するポピュリズム

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【水島治郎氏・プロフィール】
◆1967年東京都生まれ、東京大学教養学部卒業、99年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了
 博士(法学)。甲南大学助教授、千葉大学法経学部助教授などを経て、現在千葉大学法経学部教授。
 専攻はオランダ政治史、ヨーロッパ政治史、比較政治
◆著書:『戦後オランダの政治構造―ネオ・コーポラティズムと所得政策』(東京大学出版会・2001年)
反転する福祉国家――オランダモデルの光と影』(岩波書店・2012年、第15回損保ジャパン記念財団賞)
保守の比較政治学――欧州・日本の保守政党とポピュリズム』(編、岩波書店・2016年)

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昨年12月、日経に3回にわたって掲載された「広がるポピュリズム」というテーマでの3人の学者
の小論を本シリーズのプロローグとして1月に紹介しました。
◆第1回:ポピュリズムの多様性・多義性から引き出される主体性・自立性への期待?:日経「広がるポピュリズム」から(上)
◆第2回:リベラリズム・反リベラリズム、2つの原理の揺れと民主主義の幅:日経「広がるポピュリズム」から(中)
◆第3回:歴史は繰り返す。トランプ現象にも前例:日経「広がるポピュリズムから」(下)
お時間がありましたら、チェックしてみてください。

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