独仏

グローバル情勢

ポピュリズムは、独仏個々に歴史回帰を進めさせるのか:『ポピュリズムとは何か』から(22)

 

5月7日(日) フランス大統領選 決選投票
5月9日(火) 韓国大統領選
6月8日(木) 英国議会総選挙
9月24日(日) ドイツ連邦議会選挙

5月の2つの大きな選挙の日程が迫って来ました。

6

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昨年12月に刊行されたベストセラー
ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』(水島治郎氏著)を
参考に、
現代とこれからの政治・社会などを考えるシリーズです

「第1章 ポピュリズムとは何か」
第1回:米国トランプ政治等現状のグローバル社会を照らし合わせながら読む『ポピュリズムとは何か』
第2回:ポピュリズムとその定義の多様性・柔軟性
第3回:米国トランプ・ポピュリズムの異種性と人民種性
第4回:米国トランプ政治は、異種・新種ポピュリズム
第5回:注目を集める日米首脳会談。安倍政治も一種のポピュリズム政治?
第6回:デモクラシーと繋がるポピュリズム。双方が持つ多義性・多様性
第7回:常にラディカルとは限らないポピュリズム。トランプ政治は初めから末期的?

「第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌」
第1回:デモクラシー先進国、西ヨーロッパのポピュリズムを俯瞰する
第2回:気になるドイツのポピュリズム政党をめぐる最近の政情から
第3回:無党派層の増大は、デモクラシーの成熟か、劣化か?
第4回:エリートにも大衆にも属さぬ住民として
第5回:保守・右傾化というポピュリズムの広がりを懸念する
第6回:福祉排外主義にも一分の理。民主主義政治の課題として
第7回:4月に迫った仏大統領選、マリーヌ・ルペン候補の国民戦線の起源
第8回:フランスの国民戦線の根源・本質は誰にも理解可能
第9回:極右政党政権樹立の可能性が現実的になったオーストリアの政情

「第7章 グローバル化するポピュリズム」
第1回:シリア攻撃で確認できたトランプの米国ファーストの正体と義
第2回:忘れられた人々のポピュリズムは現実の政治で継続するか?
第3回:EU離脱英国との交渉で、EU、欧州議会・委員会のポピュリズム勢力はどう行動する?
第4回:4月23日フランス大統領選結果から考えるポピュリズム
第5回:仏英独、EU・移民を巡るポピュリズム。日韓関係を巡るポピュリズム。2017年政治の季節とその行方

今回は、第7章第6回(通算第22回)です。

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 10反移民への傾斜
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 ただ、党の裾野が拡大するなかで、ドイツ政治研究者の中谷毅が指摘するように、「ドイツのための
選択肢」そのものの変容も進んでいく。地方で議席獲得が進み、党員も順調に増加するにしたがって、
反外国人・反イスラムをはじめとする排外主義的な主張が次第に党内で強まる。

ルッケ自身も移民には批判的であり、技能を持たない外国人はドイツの社会保障に依存し続けるだけ
だ、という趣旨の発言を行ってきたが、あくまで主眼は反ユーロとEU批判にあった。しかし党の拡大に
つれて、ルッケら経済学者などのインテリを中心とし、リベラルな雰囲気のあった党は、様変わりを余
儀なくされた。特に右翼勢力の強い旧東独地域で党が多数の議席を獲得したことは、党の路線に強い影
響を与えた。

 そして2015年の党首選では、右翼勢力を背景としたペトリ(Frauke Petry)がルッケを破り、ルッ
ケは離党を余儀なくされた。ペトリ自身は化学者で党の創設メンバーでもあったが、地元である旧東独
のザクセン州は特に右翼勢力の強い地域であり、ザクセン州の党の選挙綱領でも「ドイツための選択肢」
は移民やイスラムに強硬な政策を主張していた。
 そしてペトリ党首のもと、「ドイツための選択肢」はユーロ離脱の主張に加え、反移民・反難民の姿
勢を前面に出す。「イスラム教徒はドイツに属さない」う急進的な主張を掲げ、ブルカの着用や礼拝呼
びかけの禁止などを訴えた。
 ペトリはあるインタビューで、このままではイスラム教徒の増大で、ドイツの「イスラム化」が進み、
ドイツの人々が民主主義のもとで暮らしていくことは不可能となると主張している。それゆえ、イスラ
ムの習慣をドイツで実践することは禁止すべきだと訴えるのである。

 このような党内紛争、そして強硬な反移民姿勢への転換が、党にとってマイナスに働くことはなかっ
た。シャルリー・エプド襲撃事件(2015年)をはじめとする、ヨーロッパ各地のイスラム過激派によ
るテロ事件の続発、2015年にピークを迎えた中東地域、特にシリアからの難民の大量流入といった文
脈のなかで、反移民・反イスラムの旗幟を鮮明としたことは、むしろ党に追い風となったからである。
 100万人規模に及ぶ難民が流入したドイツで世論が割れるなか、難民受け入れを積極的に進めたCDU
のメルケル首相をペトリ党首は厳しく批判する。そして2016年には、東部の州議会選挙で「ドイツの
ための選択肢」が相次いで第二党になるなど、同党の強硬な主張は難民問題に揺れるドイツの有権者に
えるものとなった。

 同党は現在、約2万人の党員を擁し、世論調査でもCDUとSPD(社会民主党)の2大政党に迫る支持
率を保っており、ドイツ政治の表舞台に躍り出た感がある。もっともペトリ党首、そしてライバルと
いうべきCDUのメルケル首相は、いずれも東独出身の女性科学者という共通点があり、その意味では
二人共既成の政治にとって「アウトサイダー」的存在であったことは、注目されてよい。

4

※次回は、<厄介な「選択肢」として> です。

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冒頭メモした、中道のマクロン候補と極右のルペン候補による仏大統領選決選投票が、いよいよ
今週末。
ドイツにとっては、そして、EUにとって、マクロン氏の優勢が伝えられはしていますが、何とも
不気味な、落ち着かない日々が続いていることと思われます。
その状況下、2017/5/3付日経に、トランプ大統領の誕生を予測し、グローバリズム問題を厳しく
衝いた論述で著名な、歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏へのインタビュー記事が掲載され
ました。以下、一部省略・加工して紹介します。

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 仏社会「徐々に分裂」 大統領選控え、トッド氏に聞く 新政権下なおテロの危険
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第1回投票で二大政党が敗退し、反欧州連合(EU)勢力が支持を伸ばした仏社会に何が起きてい
るのか・・・。パリで聞いた。

 「二大政党が壊滅的に敗北し、2年前は無名だったマクロン氏が勝ち上がった。極右・国民戦線の
ルペン氏が決選投票の常連になろうとしている。激変のようで実はそう変化はない。
親EUのマクロン氏、中道右派・共和党のフィヨン氏、中道左派・社会党のアモン氏の得票合計は
50%。比率はマーストリヒト条約が署名された1992年から変わっていない」

 「高齢者や中流、上流階層がマクロン、フィヨン両氏を支持し、若者や労働者階層がルペン氏や
急進左派のメランション氏に多く票を投じた。92年以来で仏国民の年齢の中央値は5、6歳上がった。
高齢者は通貨暴落と年金の毀損を恐れて失敗が明確なユーロに固執している。民主主義の高齢化だ。
左派も右派もユーロ堅持を言い続け、みんながだまされている」

 「フランスの経済と社会は機能不全に陥り、憤りや怒りを表したい有権者がルペン票を投じた
国民戦線の移民政策は容認できないが、ユーロ離脱と若干の保護主義を掲げる経済政策は私の観点
ではまともだ。25~30%得票してもおかしくなかった」

 「本当に新しい変化はメランション氏の出現。欧州やユーロの論争を極右に加え左翼勢力が取り
上げたのは良いことだ。良好な教育を受けた人は国民戦線を支持しても何も変わらないと考え
メランション氏に真の変化を求めたのだろう」

 「驚くべき展開がない限りルペン氏の逆転は不可能と皆が言っている。私の友人や、高等教育を受
けた人、大都市に住む人に『マクロニズム』が広がっている。社会党支持者すらマクロン氏支持を普
通と感じている」

 「マクロン氏はホログラムのように実態のない人物と人々が気づくのではないか。彼は卓越した順応
力の持ち主だが、政策は同じようなものの繰り返しだ。オランド大統領の生まれ変わりとも言われる」

 「フランス社会は少しずつ分裂し始めている人々がイデオロギーや宗教でなく、高齢者や労働者
といった階層単位で振る舞う。新大統領の下でも社会は緊張を抱え続けイスラム勢力のテロのような
政治的な暴力のリスクは高まる。力を増す高齢者に若者が対抗するため、暴力でよりよい扱いを実現
しようと考えるなら、おぞましい事態だ」

 「私は決選投票を棄権するつもりだ。国民戦線がひどいという点に異論はないが、マクロン氏も
容認できない。労働者と若者を敵に回せない」

10

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ドイツは今、どのようにフランスの大統領選に注目しているでしょうか。
理想を掲げた国連が十分その機能を果たしていないことと、どうしても一部同様に見てしまうEU。
第二次世界大戦における立場が真逆であった独仏両国が、これまでEUにおける両核をなしてきた
こと自体、ある意味、不自然さも残しているかのように思えた・・・。
それが、反移民・反イスラムというキーワードで共感を抱くポピュリズム勢力の拡大が、社会経済
面での反EUにまで結びつき、それぞれの国レベルでの内部問題に立ち戻り、歴史の回帰・逆回転を
めざすかのような状況に・・・。
このざわざわした感覚は、どのように変化していくのでしょうか・・・。
トランプ大統領のアメリカの現状とは、まったく異質な、落ち着きを失った感覚。
第三者の私たちでさえ感じるのですから、陸続きの欧州各国の、現状の肌感覚は、どういうものか、
非常に気になるところです。
トッド氏の意見は、そのざわざわ感を強め、落ち着き感のなさを一層大きくするものと言えます。
そして、米・独・仏、どちらにも共通なのが、海図、チャートなき政治社会に乗り出しつつあるこ
と言えるでしょうか。

4

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【エマニュエル・トッド:Emmanuel Todd】
仏を代表する左派の論客。国立人口学研究所研究員。家族構成や出生率、死亡率から世界の潮流を読む。
旧ソ連崩壊や、最近はトランプ米大統領の当選を言い当てた。65歳。

当ブログシリーズと同レベルで注目したのですが、紹介する機会を失してしまった、同氏の
グローバリズム以後』は、機会がありましたらご一読をお薦めします。

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【『ポピュリズムとは何か – 民主主義の敵か、改革の希望か』構成】
第1章 ポピュリズムとは何か
第2章 解放の論理 ー 南北アメリカにおける誕生と発展
第3章 抑圧の論理 - ヨーロッパ極右政党の変貌
第4章 リベラルゆえの「反イスラム」 - 環境・福祉先進国の葛藤
第5章 国民投票のパラドクス ー スイスは「理想の国」か
第6章 イギリスのEU離脱 - 「置き去りにされた」人々の逆転劇
第7章 グローバル化するポピュリズム

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【水島治郎氏・プロフィール】
◆1967年東京都生まれ、東京大学教養学部卒業、99年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了
 博士(法学)。甲南大学助教授、千葉大学法経学部助教授などを経て、現在千葉大学法経学部教授。
 専攻はオランダ政治史、ヨーロッパ政治史、比較政治
◆著書:『戦後オランダの政治構造―ネオ・コーポラティズムと所得政策』(東京大学出版会・2001年)
反転する福祉国家――オランダモデルの光と影』(岩波書店・2012年、第15回損保ジャパン記念財団賞)
保守の比較政治学――欧州・日本の保守政党とポピュリズム』(編、岩波書店・2016年)

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昨年12月、日経に3回にわたって掲載された「広がるポピュリズム」というテーマでの3人の学者
の小論を本シリーズのプロローグとして1月に紹介しました。
◆第1回:ポピュリズムの多様性・多義性から引き出される主体性・自立性への期待?:日経「広がるポピュリズム」から(上)
◆第2回:リベラリズム・反リベラリズム、2つの原理の揺れと民主主義の幅:日経「広がるポピュリズム」から(中)
◆第3回:歴史は繰り返す。トランプ現象にも前例:日経「広がるポピュリズムから」(下)
お時間がありましたら、チェックしてみてください。

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