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政治

「多数決」の壁を乗り越えることは可能か?:日経「シルバー民主主義を考える」より(1) 

地政学上の変化で支えられるアベノミクスの実相:『シルバー・デモクラシー』から(12)
↑ 連載中のこのブログシリーズとの関連でのミニシリーズです。

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2017/5/3から3日間連続で、日経の<経済教室>欄で「シルバー民主主義を考える」と題した
小論シリーズが掲載されました。
順にその概要を紹介し、考えてみたいと思います。

第1回目は、島澤諭・中部圏社会経済研究所:経済分析・応用チームリーダーによる以下の講義
です。
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 シルバー民主主義を考える(上):
  「多数決」の壁乗り越えよ 給付・負担、所得・資産基準で
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

公的債務の累増により、孫の世代は祖父母の世代に比べて1億円も損をするといわれるほど、
日本の世代間格差は深刻さを増している。
 インフレや経済成長に頼る安倍政権の経済政策「アベノミクス」だけでは世代間格差は是正
できない。
(以下、中略)

 深刻な世代間格差の原因の一つとして指摘されるのがシルバー民主主義だ。
 今後も少子化、高齢化の進展が見込まれており、現在の年齢別投票率を前提とすれば、投票で
示される民意も高齢化する。
実際の投票者のうち、非高齢者に対する高齢者の割合を民意の高齢化の代理指標としよう。
 高齢者の定義を65歳以上とした場合、2014年時点で非高齢者の60%(1967年は10%)と
数派。こ
れに対し、60歳以上では92%(同17%)と非高齢者とほぼ同程度の影響力、55歳以上
では
129%(同28%)と非高齢者を上回る影響力を持つ。

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政党の忖度で高齢者優遇の仕組みが温存

シルバー民主主義は民意の高齢化により生じる。
 しかし政治的多数派を形成し自らの利益の実現を図るのが民主主義の正当な側面だとすれば、
高齢者にのみ利他心を要求して、道徳的な観点から断罪するのはフェアではない。
 それでもシルバー民主主義が問題とされるのは、政党間の民意獲得競争を通じて、高齢化した
民意が政党への圧力となるからだ。
 高齢者が直接要求しなくとも、政党が票目当てに意向を忖度する。
 この結果、政治全体が、高齢者に受益が大きく偏る現在の財政・社会保障制度の抜本的な改革
に極めて後ろ向きとなり、将来世代や若い世代に負担を先送りし、社会の持続可能性の危機をも
たらす。

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いうならば、シルバー・ポピュリズムが常態化している状態、といえるわけです。

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代表制民主主義では有権者は選挙を通じてわれわれの代表を選ぶ。
 代表に対しては2つの異なる見方がある。
 一つは、われわれの代表である国会議員はいったん選挙で選出されれば、個別の利益を代弁す
るのではなく、広く全国民のための代表として自由に行動できるとする国民代表という見方だ。
 もう一つは、政治家はわれわれから委任された存在にすぎず、民意を無視して行動するのは許
されないとする委任代表という見方だ。
(以下、中略)

 シルバー民主主義が生み出す世代間格差はどうすれば是正できるのか。
 シルバー民主主義そのものを是正するか、シルバー民主主義が存在しても世代間格差を発生さ
せない制度の構築が必要だ。具体的には
(1)民意の高齢化の是正
(2)民意の遮断
(3)
年齢にかかわらず働ける「エイジフリー社会」の実現
が考えられる。

 第1に投票制度改革により有権者に占める若い世代の割合を高め、民意の高齢化を反転させら
れれば、シルバー民主主義の解決に近づく。
有権者年齢に満たない子供の数に応じて親に子供の投票権を行使させる「ドメイン投票制度」
や、一定年齢以下の有権者に平均余命と現在の年齢の差に応じた票数を与える「平均余命投票
制度」が提案されている。18歳選挙権の導入もこの流れの中に位置づけられる。

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もう具体的にその方法・方策を議論・検討・決定すべき段階にあるといってもいい・・・。
学者・研究者は、これぞという方法を提言して欲しいもの・・・。

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 第2に政治が高齢化した民意の圧力に屈して高齢者優遇に傾くのならば、民主主義の外側から
シルバー民主主義に歯止めをかける是正策も考えられる
 高齢化した民意を代表して高齢者優遇の政策を決定したり高齢者に不利となる改革を阻んだり
する政治に対して、政治的に中立な機関を設置し、民意から遮断する。
 具体的には世代間公平性確保の観点から、世代間格差を発生させる政策・制度の是正・改革
勧告を担う独立行政委員会の設置が想定される。

 ただしシルバー民主主義が存在すれば、高齢者の政治的影響力を弱体化させる是正策は不採用
となる。逆にそうした是正策が採用されるのであれば、シルバー民主主義の不存在が証明される。
 シルバー民主主義のジレンマである。

 シルバー民主主義は理論的には、中位投票者モデルでも確率的投票モデルでも説明できる。
 中位投票者モデルでは、相対的に大きな集団が政治的影響力を行使し得るため、少子化、高齢
化の進行する現在の日本では高齢者が政治の主役であり、若者が軽視される。

 一方、確率的投票モデルでは、集団の大きさでなく集団の意見の集約度を重視する。
 高齢者の多くは引退し年金で生活しており、医療・介護への需要が大きいなど背景が共通して
おり、意見の一致が容易だ。
 これに対して若者は仕事、結婚、育児の有無などバラツキが大きく、意見の一致は多くの場合
困難だ。
 つまり高齢者と若者の間での意見の集約度の違いが、相対的な投票率の高さ以外にも政治が
高齢者を重視する理由である。

 従って確率的投票モデルによれば、若者は小異を捨てて一致団結してデモや直接請求をする
ことで、政治に圧力をかけられ、シルバー民主主義を乗り越える一助となる。

 第3の道がエイジフリー社会の実現だ。もともと高齢化社会とは65歳以上の高齢者が全人口
の7%を占める社会、高齢社会とは14%を占める社会を指す。
 高齢化率は現在27%を超えている。
 高齢者の過剰が政治の世界に波及したのがシルバー民主主義である。

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シルバー民主主義のジレンマ、というよりも、民主主義そのもののジレンマ、と言うべき問題
です。民主主義の本質に、そのジレンマが包含されているわけです。
高齢者の過剰と言うならば、他世代の過少・不足をも問題にしなければならないはず・・・。

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諸制度維持へ高齢者の定義見直しも一案

 高齢者が少ない時代につくられた制度を維持するには、全人口の7%を占める年齢以上を高齢
者(15年国勢調査では81歳以上は7%、75歳以上は13%)と定義し直せばよい。
 この場合も民主主義的な手続きが必要になるが、この改革に反対するのは、現在高齢者として
様々な給付を受けているのに、今後は非高齢者とされる世代だけだ。
 結果的には「新高齢者」と65歳未満の結託により改革は採用される。

 ただし平均寿命が延びるたびに新高齢者年齢の再設定をするなど頻繁な制度変更が必要なので、
高齢者年齢の見直しは安定性に懸念が残る。

 そこで実質的に年齢に基づいて給付と負担を分ける現在の諸制度を年齢によらず、政府からの
支援の必要性・緊急性の度合いに応じた制度へ転換する解決策が考えられる。
 年齢ではなく所得や保有資産の多寡で給付と負担を分ける仕組みだ。
 高齢者にも非高齢者にも持てる者と持たざる者がいるので、高齢者と非高齢者の持たざる者同
士の結託が成立し、多数派が形成される。

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高齢者の適用基準=定義を変えたところで、本質的には民主主義自体が変化・変質するわけで
はないことも自明です。
社会福祉制度や税制などで、一部適用年齢基準を変えることで運用方法を変え、不公平性を少
しは是正できるでしょうが、民主主義の構造と本質に変化はありません。
結局、政治家の資質の問題になってくる、どうしても・・・。

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民意の尊重と民意の遮断の調和が課題に

 シルバー民主主義を解決するには、多数決民主主義の壁を乗り越えることが欠かせない。
 まさにそのことが民意の高齢化が進行する日本で、シルバー民主主義の解決を困難にしている。
 日本では民意の高齢化に加えて民意の近視眼化も進行している
 民意におもねるだけでは、長期的な視点に基づいた財政・社会保障制度改革は一層困難となる

 政治がシルバー民主主義に席巻されるいま、民意の尊重と民意の遮断をどのように調和させる
かが問われている。

◆島澤諭(しまさわ・まなぶ):70年生まれ。東大経済卒。
                内閣府、秋田大准教授など経て現職。専門は経済政策

選挙3

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「民意の尊重と民意の遮断の調和」を民主主義の基本運用制度である選挙制度と議会制度で
実現しようと試みることは無理でしょう。
民意を遮断する方式・制度を創造するための手続きとして、議会制度を活用する必要があり、
その議会制度での意思決定を有効に行使できるようにするには、選挙制度のプロセスを経る必
要があるのですから。

民意の形成プロセスにどのように関与し、影響を与えるか・・・。
その活動を選挙制度上に反映させる手順・方策・スケジュールを考える。
そうした視点で、社会的な活動を展開することでしか方法・方策はないのでは・・・。
最も時間を必要とし、リーダーシップという人間力を持つ人的資源を必要とする活動。
最も困難であり、実は最も簡単な方法でもあるのですが・・・。

学者は、そうした方法論に踏み込み、自らもその活動の先棒を担ぐか、仕掛け人、プロデュー
サーになるか・・・。
相手を特定せず「問われている」、と言い放って? 言い捨てて? さよなら、ではなく、
自らを「問う」て、その後のシナリオを考えて欲しいのです、が・・・。
まして官僚経験のある学者・研究者ならば一層のこと・・・。

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※次回、シルバー民主主義を考える(中) に続きます。

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