3世代0

政治

シルバー民主主義の弊害改善は選挙制度改革で:日経「シルバー民主主義を考える」より(3) 

地政学上の変化で支えられるアベノミクスの実相:『シルバー・デモクラシー』から(12)
↑ 連載中のこのブログシリーズとの関連でのミニシリーズです。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
2017/5/3から3日間連続で掲載された、日経の<経済教室>欄で「シルバー民主主義を考える」
と題した小論シリーズを紹介してきました。
第1回:「多数決」の壁を乗り越えることは可能か?:日経「シルバー民主主義を考える」より(1)
第2回:人気取り政治と不人気回避政治が一体化した民主主義の扱い:日経「シルバー民主主義を考える」より(2)

少し間が空いてしまいました。
最終回第3回目、岡本章・岡山大学教授 による以下の講義です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 シルバー民主主義を考える(下):
  選挙制度の大胆改革急げ  まず「世代別選挙区」導入を (2017/5/5)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

現在の日本では「シルバー民主主義」の弊害が指摘されることが多くなっている。
 巨額の政府債務を抱えて財政再建が急務であり、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の
黒字化を当面の目標とするが、その達成は遠のくばかりだ。
 年金、医療などの社会保障給付が拡大する半面、少数派の若年層の意見が政治に反映されにく
くなっている

 また少子高齢化・人口減少が急速に進展する中で、少子化対策を拡充する必要性が認識されて
いるにもかかわらず、日本の家族政策に対する公的支出は国際的にみて低水準のままだ
 さらに高齢層の政治への影響力の増大は、世代間の不公平につながり、若者の政治的無関心を
引き起こしている可能性がある

 政策決定にあたっては、今生きている現在世代のみならず、子どもの世代、さらには今後生ま
れてくる将来世代への影響も考慮する必要がある。

 こうした問題を分析するため、筆者は乃村能成・岡山大准教授と共同で「人口内生化世代重複
シミュレーションモデル」を構築した。
 そして政府の ①育児支援の促進政策と ②公的年金給付の削減政策が、各世代の生涯効用(人
が商品
やサービスを消費することで得られる満足度)に与える影響を定量的に分析した。

世代間格差生涯負担率

(中略)

 分析の結果、①と②はともに経済学的に望ましい政策であることが示された。無限先の将来世
代の効用まで考慮したうえで経済厚生全体のパイが拡大する
ため、世代間での適切な資源配分に
よりすべての世代が改革前と同じか、改革前よりも良い状態
に移行できる。

 問題は、全体にとって望ましい改革ではあるものの高齢者が損をするため、こうした改革案は
政治的に実現されにくいことにある。そこで現行の日本の選挙制度の下でこれらの政策が政治的
に実現可能かどうかについて検討した。

 育児支援の促進政策は、若い世代や将来世代の効用を改善する半面、高齢世代では税負担が増
えるだけで受益がないために効用が悪化する。

 シミュレーションの結果、損得は2014年時点の44歳と45歳の間で分かれる。
 投票にあたって、改革により効用が改善する者は賛成票を、悪化する者は反対票を投じるもの
とする。現行の日本の選挙制度や有権者の各年齢での現実的な投票率の下では、圧倒的な差
(20対45)で育児支援の促進政策は否決される(表参照)。
 公的年金給付の削減政策の政治的な実現可能性についても分析したが、ほぼ同様の結果が得ら
れた。

 以上のように現行の選挙制度や現実的な投票率の下では、全体にとって望ましい政策(育児支
援の促進・年金給付の抑制)が否決され、シルバー民主主義の弊害が如実に表れる結果となった
 その理由として日本での高い高齢者人口比率、若者の低い投票率、および改革により効用が改
善する選挙権年齢以下の若い世代と将来世代が投票に参加できないことが挙げられる。

 こうした問題を解決するには、子どもや孫世代の利益を尊重する高齢者の良識に期待するだけ
でなく、制度として若い世代の声を政治に反映させる仕組みを構築する必要がある

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
 ここでは3つの選挙制度の改革案を取り上げる。

1.「ドメイン投票方式」:
米国の人口学者ポール・ドメイン氏が考案したもので、投票権
を持たない未成年に投票権を与
え、親が子どもの代わりに投票する

2.「世代別選挙区制度」:
井堀利宏・東大名誉教授と土居丈朗・慶大教授により提唱され
たもので、有権者を年齢階層別
にグループ分けし選挙区を構成する。

 例えば30代以下を青年区、40~50代を中年区、60代以上を老年区に。
 各グループから有権者数に比例した定数の議員を選ぶため、青年区の投票率が低くても必ず
若年層を代表する議員を議会に送り出せる。

3.「余命別選挙制度(余命投票方式)」:
竹内幹・一橋大准教授により提唱されたもの
で、余命に応じて投票権に重みをつけ、若い人の
一票を高齢者の一票よりも重くする。

 例えば20歳の有権者の一票を64票とカウントする一方、80歳の一票を10票とカウントする等

 ただし、シルバー民主主義を克服するには、3つの代表的な選挙制度改革案の中から一つを導
入するだけでは不十分で、最もドラスチックな改革である余命投票方式とさらにもう一つ別の選
挙改革を同時に実施する必要があることが示唆される。

 3つの改革案の中で、最も効果が弱いのは世代別選挙区制度だ。
 日本では既に少子高齢化の水準が深刻な状況にあり、そもそも高齢者と若者の人口比率自体が
大変ゆがんだものとなっているからだ。
余命投票方式の効果は大きいが、年齢により一票の価値が異なる。
ドメイン投票方式では未成年
にも選挙権を与える。劇的な変化を伴うため、導入へのハードル
は高い。

 政治的な実現可能性の点から当面はまず世代別選挙区制度の導入から始めるべきだろう。
 この制度の導入を契機として現在の危機的な状況についての理解が深まり、子どもや孫世代の
利益を尊重する機運が高まることも期待される

(世代別選挙区制度に関する取り組み事例は省略)

 シルバー民主主義に伴う低水準の家族政策が子育て環境を悪化させ、さらに少子高齢化・人口
減少の流れに拍車をかけることもその弊害として挙げられる。
 こうした悪循環を断ち切るために、大胆な発想に基づいた選挙制度改革を断行すべき時期に来
ている。もはや時間的猶予はない。今すぐに実施しなければ、たとえ実現できても効果は限られ
たものになる。現在の日本では子どもを産み、親になる可能性のある女性の数自体が急激に減少
しているからだ。

 選挙制度の改革には大きな痛みを伴うが、長期的な視野の下で全体の経済厚生が高まる経済学
的に望ましい改革であることを認識してほしい。
 ともかく改革を実施するのが大事で、もし改革を実施できれば得られる果実は大きい。

 改革により経済成長が促進されるため、たとえ損失を被る高齢者へ損失分の補償をしたとして
も、まだ余りある。若者世代にまん延する閉塞感を取り除き、時間軸の長い施策が実行可能となる。
 そして財政破綻や急激な人口減少を回避することにより、長期的に持続可能な社会を構築し、
未来への展望を切り開くことが可能となるだろう。

 %e9%81%b8%e6%8c%99%ef%bc%92

岡本章氏:1964年生まれ。京都大博士(経済学)。専門は公共経済学、人口経済学

--------------------------------

シルバー民主主義の弊害防止対策。
これはもう、選挙制度改革でやるしかない。
そう思います。

基本的には、やはり、「世代別選挙区制度」で具体化すべきでしょう。
但し、以下を付け加えて提案したいと思います。

1.世代別男女別選挙区制に。男女の有権者数の比率も定員数に反映させる。
2.90歳以上高齢者の選挙権を廃止する。(18歳未満に選挙権がないように)
3.18歳以上選挙権制を、学齢18歳以上にする。
 (選挙実施日現在18歳であれば選挙権を与えるのではなく、4月2日~翌年4月1日生まれ
  の同学年者全員に、4月2日をもって選挙権を付与する。)
4.小選挙区制・比例代表制の抜本的な見直し

まず初めに、比例代表制部分に、世代別男女別選挙区制を適用することが現実策としての
第一歩にしやすいのではと、ふと思いました。

違憲判決に基づく、定数増減是正策では、根本的にシルバー民主主義の弊害も、女性議員
の少なさの問題も一向に改善・解決されることは望めません。

どのように、政治・行政の場で、こうした抜本的な選挙制度改革が、本格的に議論・検討
されるようになるか、するか・・・。
学者・研究者も、実現可能なその方法・戦略を構築・提言する必要があると言えます。

12

 

WordPressテーマ「Chill (tcd016)」

ピックアップ記事

  1. 使用料無料SNSに潜む罠から身を守る:SNSトラブル消費者相談、中高年急増!自身…
  2. 農地と太陽光発電の組合わせで地産地消型営農発電:農業再生の具体策を考える(3)
  3. 広がれ米国のチップ廃止!悪習・悪システムの改善改革を支持!
  4. 全体では減少の漁業就業者、24歳以下は6%増への期待
  5. 競争戦略ミスのトヨタ、EV量産へ戦略転換:エコカーのリーダーシップを取り戻せるか…

関連記事

  1. FCV-1
  2. 4f9eb1353ec80509585196469ba076bf_s

    仮想通貨

    『仮想通貨・暗号通貨入門ナビ』まとめて紹介ー2

    -------------------------------…

  3. 036

    日記・随論

    小池東京都知事、マレー、錦織。「小気味いい感じ」がいい:明日が来る(1)

    1日の終わりに、数行書いて、眠りにつけたら・・・。相次ぐ台風と北海…

  4. 成長戦略

    労働時間規制緩和、ホワイトカラー・エグゼンプションと成長戦略との関係

    成長戦略としての労働時間規制緩和策に疑問6月に政府がまとめ上げる<ア…

  5. 浜岡原発

    エネルギー問題

    浜岡原発停止でも増益の中電:火力発電依存は課題を残す 

    今月のエネルギー問題シリーズ。1.太陽光発電、未稼働560万世帯分…

  6. ベビーカー1

    保育・保活

    『「子育て」という政治』(猪熊弘子さん著)から、世代通信.netで待機児童問題を考えてみました。

    「少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?」というサブタイトルが付…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

worldbanner2
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で
2018年2月
« 11月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  
  1. 4-4

    プロテニス

    錦織圭 試合速報:復帰初戦シティ・オープン3回戦、2-0ストレート勝ちで準々決勝…
  2. 社会インフラ

    未婚40代非正規、常態化社会の生き方確立とモラトリアム社会の精神・構造改革
  3. 031

    日記・随論

    高畑母さんは強し!被害強調のマスコミと業界の不思議:明日が来る(5)
  4. JXSS

    環境・エネルギー

    JX、KDDIと提携。電力小売り小売自由化で、セット割・ポイント・値引き・組合せ…
  5. __ 3

    農業・漁業

    「農家」「農業」とは?新規農業就農者の多くが60歳以上という現実:『GDP4%の…
PAGE TOP